表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はマスクドナイト  作者: yamaki
第二部 VS魔法少女
92/384

6-1. VSチャンネル主系魔法少女


 学校指定の制服を纏う少女は頬杖を突きながら、つまらなそうに教卓前の教師の話を聞いていた。

 帰りのホームルームでの伝達事項など、聞いていても面白く無いのは分かる。

 他の生徒たちも早く教室を出たいのか、少女と同じようにつまらそうな顔をしていた。

 しかしこの少女に限って言えば、最近の学校での態度は一事が万事この調子であった。

 学校での少女は何時も上の空であり、常に何か別のことに頭を悩ませているらしい。


「香ちゃん、今日はこの後…」

「ごめん、今日は約束があるの。 またね…」

「うん、なら仕方ないかな…」


 放課後となり帰り支度をしている少女に、同級生が席までやって来て話しかける。

 それはクラスの中ではそこそこ会話をしている同級生であり、少女を遊びに誘っているらしい。

 しかし少女は申し訳なさそうな顔をしながら、今日は無理だと断りを入れた。


「ねぇ、もしかして噂の年上の彼氏?」

「いいなー、私も彼氏欲しい。 今度、紹介してよー」

「ふふふ…」


 人の目は何処にでもあるらしく、以前に少女がパートナーと一緒に居た所を誰かに見られていたらしい。

 年上の男性と一緒に歩いていただけで、彼氏やら何やらの噂があっという間に広まったのだ。

 パートナーと言っても色恋沙汰は皆無なのだがら、少女はその噂をあえて否定せずに逆に利用していた。

 それは少女が趣味の時間を優先するために、女同士の付き合いを断る都合のいい建前になるのだ。

 実際にその効果は絶大であり、付き合いの悪くなったにも関わらず少女のクラス内での立ち位置を維持できていた。


「じゃあね、みんな。 さて、お兄さんの所に行きますか…」


 同級生たちの考えもそれ程的外れでは無く、少女はこの後で年上男性のパートナーとの約束があるのだ。

 こうして同級生たちを別れた少女、天羽(あまは) (かおり)はNIOHチャンネルのパートナーである千春の元へと向かった。











 喫茶店メモリーのテーブル席で、青年と女子中学生が向かい合って座っていた。

 千春は後輩店員のウィッチから渡されたコーヒーを飲み、天羽はケーキを食べている。

 一度自宅に帰って着替えたらしく、天羽は制服から私服姿へと変わっていた。

 NIOチャンネルのチャンネル主と主演俳優が顔を突き合わせているのだ、彼らの話題は一つしか無いだろう。


「はっはっは、限定商品の宣伝も上手くいったぜ。 限定10個の商品に、その10倍以上の購入希望者が来てたよ」

「はぁ…、本当に大丈夫なの、お兄さん? アカウント停止なんて事になって、折角苦労して築き上げたチャンネルが潰されたら恨むわよ」

「その辺はしっかりリサーチ済みだよ。 大丈夫だって、ようは魔法少女そのものをを全面に押し出したら駄目なんだ。 そこを回避すれば平気さ」


 以前にも触れた通り、ゲームマスター様は魔法少女という存在がお金で汚れるのを好ましく思っていないようだ。

 そのため露骨に金稼ぎに精を出す魔法少女には、世間の荒波から守ってくれているゲームマスターの加護が無くなってしまう。

 しかしこれまたゲームマスターの趣味なのか、魔法少女の力を利用した商売が許されている者も中には居る。

 例えば寂れた地元の街を救うために活動している健気な魔法少女は、ゲームマスター的にはオッケーらしい。

 町興しの資金集めに作られた商品の宣伝は、誰からの横やりも無く今でもマジマジで行われている。

 他にも正式に企業などとコラボして、コラボ先の商品を紹介すると言う形の動画も何故かセーフ扱いだった。


「俺はマスクドナイトNIOHでは無く、喫茶店メモリー通販部門担当の矢城 千春個人として商品を紹介しているんだ!

 動画内ではマスクドナイトは一言たりとも出して無いし、一個人による通販サイトの紹介なら問題ないさ…」

「それを私のNIOHチャンネル内でやっているのは、問題のような気がするけど…。 まあ、お兄さんの通販動画はそこそこ受けているので、出来れば定期的に続けたいのも本音だし…」


 色々と苦労して喫茶店メモリーの通販事業の準備を進めた千春は、販売用のホームページや商品の在庫確保などを行えた。

 寺下が通販事業の立ち上げを前々から考えて、千春に話を振る前に色々と準備をしてくれていたお陰でもある。

 何時でも通信販売を開始出来る状況にはなったが、商売を始めるうえで一つだけ問題が残っていた。

 知名度、良く言えば知る人が知る店である喫茶店メモリーは、世間から殆ど認知されていない。

 その状況で通信販売などを初めても、商品を販売する客は喫茶店メモリーの常連客くらいだろう。

 喫茶店メモリーと通信販売の存在を世間に知らしめる必要があり、千春はその場としてNIOHチャンネルを利用したようだ。






 NIOHチャンネルに命を懸けている天羽と違い、千春に取ってNIOHチャンネルはそこまで重要な物ではなく。

 動画作りは楽しいので時間があった時には積極的に手伝っていたが、千春に取ってそれはあくまで暇つぶしでしか無い。

 実際に魔法少女絡みの事件で忙しかったここ最近は、NIOHチャンネルの方はほぼ天羽に丸投げしている状況であった。

 千春不在の間に天羽は、ストックしていた動画やら彼女の単独企画やら彩雲(あやも)画伯のイラスト紹介やらでチャンネルを維持してきた。

 しかし寺下から喫茶店メモリーの通販事業を任されたことで、千春に取ってのNIOHチャンネルの重要度は格段に上がってしまう。


「しかし予想以上にNIOHチャンネルって有名なんだな。 あそこで宣伝をしたら、日本各地から注文が来るようになったよ」

「当然よ、私のチャンネルはマジマジでも上位の存在なのだから! お兄さんの例の動画を見て、そのまま私のチャンネルに来るパターンも増えてるしね。 これもお兄さんの頑張りのお陰よ、そこは感謝しているわ。

 ただ最近はお兄さんがあんまり動画作りを手伝ってくれなくて、色々と苦労してるんだけど…」

「分かってるよ、これからはまた動画づくりに手伝うよ。 その代わり、通信販売の宣伝動画も定期的にあげさせて貰うからな…」


 情報が溢れかえっている現代社会においては、中々効果的な宣伝を行うことは難しいだろう。

 下手なTVCM何かよりは、NIOHチャンネルのようなネット動画の方が人目を惹きやすい。

 此処で宣伝を行ったことで通販事業は順調滑り出しを見せたため、この売り上げを維持するためにはNIOHチャンネルを守る必要がある。

 千春は自身の商売のために再び天羽とタッグを組み、マスクドナイトNIOHとして動画作りに勤しむことを決めたようだ。

 天羽としてもそろそろマスクドナイトNIOHの復帰が必要と考えていたようで、喜んで千春を迎え入れた。


「よーし、これも店長のためだ、俺は何でもやってやるからな! 次は何のネタをやるかな?」

「やっぱり例の動画から流れてくる視聴者が多いから、解説動画でもやってみない?」

「ええ、解説って言っても、何を解説するんだよ? 戦った感想でも語るのか?」


 NIOHチャンネルの人気を上げることは、チャンネル内に上がっている通信販売の宣伝動画が人目に触れる事を意味する。

 そのために定期的な動画の供給が必須であり、千春は以前のように天羽と次の動画作りについて話し合っていた。











 とりあえず次に作成する動画の内容や今後の大まかなスケジュールが決まった所で、今日の作戦会議は終了した。

 天羽はこのまま帰って自宅で動画作成の準備を行い、店に残って千春は注文された商品の発送の準備である。

 荷物をまとめて椅子から立ち上がろうとしていた天羽に対して千春は、ふと思いついた懸念をそのまま口に出していた。


「…そういえば、お前は学校の方は大丈夫なのか?」

「はぁ、何よ、突然?」

「いや、この前の呪い騒ぎの事もあったし…。 少し気になって…」


 唐突に学校生活のことを訪ねてきた千春に対して、天羽が怪訝な表情を浮かべていた。

 千春はこの前の事件で、学校の中で孤立した少女たちの悲劇を目の当たりにしたのだ。

 一人は自ら死を選び、一人は状況を脱するために多数の被害者を出した大事件を引き起こした。

 天羽は彼女たちと同年代の女子中学生であることに気付いた千春は、何となく彼女のことが心配になったらしい。


「大丈夫よ、私はその辺は要領がいいから…」

「お前、学校に友達とか居るのかよ? 少なくとも俺と組むようになってから、ずっと動画作りしか…」

「そんなこと、お兄さんには関係ないでしょう。 私はこれで帰るね」

「お、おい…」


 千春の知る天羽は常にNIOHチャンネルの事を考えており、学校の友達のことなどは一言も話題に出したことが無かった。

 そもそも千春は天羽と顔を合わせた時にはNIOHチャンネルの話しかせず、彼女のプライベートを全く把握していない。

 二人の関係を言い表すならば、NIOHチャンネルと言う仕事の付き合いしか無いビジネスパートナーが一番相応しいかもしれない。

 そんな状況でいきなり年頃の少女に踏み込んでも、拒絶されてしまうのが落ちであろう。

 天羽も当然のように千春の懸念を聞き流して、そのまま足早と喫茶店メモリーを後にした。



ゼロワン、終わっちゃいましたね…。

何だかんだで楽しませて貰ったので、次のセイバーも期待しておきます。

仮面ライダーのお約束で、また今回も続きは劇場版になったのには吹きましたが…。


それでは6話目開始です、今回は天羽 香と言うキャラクターの深掘り回になる予定です。


では。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ