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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第二章

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32話 行動開始


 研究者の言葉を合図として、シャドウウルフと呼ばれた魔獣は飛びかかって来る瞬間を、ロウは見ていた(・・・・)。

 だが、それは既に想定していた動きだ。

 

 ……魔力の反応がある魔獣が相手なら、防御くらいは出来ます……!!


 己の魔眼は魔力の動きを感知する。

 実際に狼の身体が動くよりも、少しだけ早く、体内を駆け巡る魔力を見る事が出来るのだ。それ故に、こちらに来る寸前の、前足への力の入り具合も分かる。

 どういう経路で飛びかかって来るかも分かった。故に、


「――【魔法防楯】!」


 ロウは咄嗟に、ポケットに入れていた灰色の符を取り出し、目の前に投げつけた。

 瞬間、符は周辺の空気を吸い上げたかのように一気に膨らみ、ロウの目の前に灰色の壁を作り出した。

 

 ……商人として仕入れた、自己防衛用のマジックアイテムです。 

 

 それを、自身の前――狼が来るであろう進路に置いた。すると、

 

「――ガアッ……!!


 ロウの読み通りの進路で狼は飛びかかって来た。その爪で、こちらの身を引き裂こうと。

 しかし当然、狼の爪は魔法防楯にぶち当たり、止まる。


「今です!」 

「押忍!!」

 

 その静止の隙を狙って、抱えていた食料の箱から武装を取り出した、一人の兵士が突撃する。

 その動きは素早く、手にした剣でシャドウウルフを斬りにいく。だが、

 

「ゴアア……!!!」


 狼は、魔法防楯に片腕の爪をひっかけながらも、残った腕を兵士に振るった。


「ぐ……!」


 兵士は剣で受け止めたが、しかし、狼の膂力のせいで、押し返される。


 ……なんてパワーですか……! 

 

 けれど、まだ一人の兵士が止められただけだ。

 その後ろからもう一人が、剣を狼に突き刺しにいく。もう振るう腕は残っていない。それ故、兵士の剣は、間違いなく、シャドウウルフに向かった。だが、

  

 ――キン!

 

 という金属音と共に弾かれた。

 

「っ……かてえぞ……!」

「どいてろ! 俺っちが潰す!」


 剣が弾かれた二人。その横から、伸縮式のハンマーを手にした男が、その腕を振り下ろした。

 その一撃は、黒い狼の頭を完全にとらえ、

 

「グオ……」


 勢いのままに砕いた。

 そして頭部を失った黒い影の狼は、粒子となって消え去っていく。


「ふう……大丈夫か、皆」

「ああ……。あの狼、魔力で出来てるからか、すげえ硬かったぜ」

「パワーもやばかったですよ。最初にロウ様が、盾で止めてくれなかったら、どうなっていたか……って、研究者はどこに?!」


 兵士たちは周辺をきょろきょろと見回す。

 狼に集中したせいで、研究者の姿を見逃したのだろう。だが、


「皆さん、あっちです。奥に走っていくのを見ていましたよ」


 ロウは見ていた。

 戦闘の最中、盾を張った後、周囲を見る事に徹していたのだ。

 

 ……戦闘が苦手な自分には、防御以外に周囲を観察すること位しか出来ないですからね。

 

 しかし、そのお陰で、下手人の行き先は見失わなかった。

 

「あの奥にある大扉の部屋に入っていきましたから、恐らくそこにいるでしょう」


 ロウが指差した先には、大広間に入った時と同じくらい大きな扉があった。

 それを見て、兵士たちは顔を見合わせる。

 

「どうする? 一旦、報告に戻るか?」

「その方が安全かもしれないわね……ロウさんは、どうかしら?」

「僕も一時撤退に賛成ではありますね。逃がしてくれるなら、ですが」


 兵士たちはそう言った後、一人の兵士が代表して、出入り口の扉を開けようとした

 しかし、ガチャガチャと扉の取っ手がなるだけで、一切開くそぶりが見えなかった。


「どうしました?」

「開かないみたいです。どうやら出入り口の扉が、魔法で閉められています」


 その言葉に兵士たちは眉をひそめたあと、部屋を見回し始めた。


「窓は……この部屋には無いし、確か廊下や玄関にも無かったな」

「そうだな。壁にも破壊耐性の魔法が掛かってやがるし。壊して出るには時間がいるぞ、こりゃあ」

「なるほど。解除魔法は……どなたか出来ますか?」


 皆、首を横に振った。

 当然だろう。兵士たちは肉弾戦や、魔法による戦闘もこなせるだろうが、それ以外は専門ではないのだから。


「脱出のために出入り口を探してもいいですが、研究者に逃げられるか、最悪、背後からまた、狼をけしかけられるかもしれないのが厄介ですね……」


 隠し扉の存在といい、この邸宅はどこがどう繋がっているのか、分かったモノではない。

 引くにせよ、進みにせよ、リスクはどっちが高いか分からない。ならば、


「ここまで来たら……追って捕らえる方が安全かもしれませんね……!」

「……そうですね。……賛成します」


 ロウの言葉に兵士たちも頷く。


 ……ええ、こうなっては仕方がない、です。

 

 どうせ逃げられないなら腹をくくって進むだけだ。

 そんな事を思いながら、ロウは研究者が逃げた奥の部屋へと向かっていく。

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