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100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます  作者: あまうい白一
第一章

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第19話 最強預言者とその現役弟子、少しだけ力を振るう


 目の前に出現した魔獣を見て、ドミニクは数歩、後退りをしていた。


「ホーンドモールが……二十匹近くもいやがる……だと……」


 数匹程度なら自分達でも確実に倒せる。そんな相手ではあった。けれど、


「こりゃあ、やべえな……。アイゼンさんはこの数いるって聞いてたか?」

「いや、上級精霊はここまでいるって言ってなかったが……瘴気で活性化して、増えたかな。新しい奴ら、若干小さいし」


 確かに、見た感じ、地中から現れたホーンドモールは少しだけ小さい。

 瘴気によって生殖能力が活性化することも無い事ではない。繁殖期のペースが早まることだってある。

 そして子供たちが急成長を遂げる事もあり得る事だ。だから、新たに生まれた可能性は確かに高い。

  

 ……だが、幾ら生まれたばかりとはいえ、奴らの強さは大して変わらんぞ……。

 

 幼年体だろうが成体だろうが、ホーンドモールに関しては同じくらいの力強さを誇る。

 

 つまりは難度Cの相手が二十近くになった事実は変わらないのだ。

 自分達だけでは対処するのは、中々キツイものがある。

 

 ……全部の討滅は出来なくはないが、危険だ。最も安全に遂行するためには……

 

 一瞬で判断したドミニクは、隣にいるアイゼンに声を掛ける。


「オーティスさん。正直、これだけの数とやり合うのは得策じゃない。一番奥の、ボス格だけ狙いたいんだが……」

 

 集団の奥に、瘴気を発生させている、他の連中と比べて一回りか二回りほど大きいホーンドモールがいる。あれを倒せば、とりあえず瘴気の拡散は止まり、周りにいるホーンドモールの凶暴化も止まる。そう思って提案した。 


「うん? 瘴気の発生源だけを潰せるなら、俺もそれが良いとは思う」


 アイゼンはこちらの提案に頷いてくれた。ただ、


「――でも、まあ、ちと無理そうだ」


 こちらが奥の一匹を狙う算段を付け切る前に。自分達の前に立ち塞がっていたホーンドモールの集団が、迫って来た。


「随分と元気だな。竜巻が無くなった途端に現れる辺り、精霊じゃなくて俺たちなら食い殺せるって思っている感じだし。恰好の餌にでも見えてるのかね」


 頭の角を揺らしながら緩やかに接近してくるホールドモールの集団を見ながら、アイゼンがそんな声を飛ばしてくる。


「ですね。先ほどの上級精霊さんは脅威に感じていたみたいですけど、私たちはそんな脅威に見えてないのか躊躇いがないです」

「あ、ああ。敵意と殺気をビリビリ感じるし……。とにかく、気を抜かねえでやるしかない。こんな奴らでも、難度Cなんだからな……!」


 ドミニクはそう言いながら、掌に下級精霊の光球を構える。


 見た目は大きなモグラだが、その実態は難度高めの魔獣だ。

 

 ……気は抜けねえ。

 

 十数年前に、百英雄の一人によってこの難度という尺度は作られた。それ故に見た目に騙されずに、こうして警戒出来る。


 昔は尺度がなくて、見た目での判断、知識での判断が多かったから魔獣に対して油断する人、初見殺しをされる人がそれなりにいたそうだが、今の自分達には情報の積み重ねがある。

 

 そのことを有り難いと思いながら、警戒を強めていると、

 

「来るぞ、ドミニク。リンネ」

 

 アイゼンが声を零した。瞬間、

 

「ギ……!」

 

 ホーンドモールの速度が上がった。

 アイゼンの宣言通り、奥にいる数体以外の皆が、こちらに向かって一気に突撃してくる。

 

 ……オーティスさん……魔獣の動きの前兆を読み取ったのか……!?


 一体どうやって、と疑問が湧くが、今はそれよりも迎撃を考えるべきだ。

 瞬時に思考を切り替えたドミニクは、


「――【精霊術・広囲精霊光弾】!」

 

 掌から、拳大の青い光弾を幾つも打ち出した。

 攻撃系の精霊術の基礎となる魔法だ。

 

 そのまま光弾は突き進み、

 

「ギ……!」


 一番先頭にいたホーンドモールにぶち当たる。そして、命中した一匹はそのまま動きを止めて倒れた。が、


「くそ……他の奴らは避けやがった!」


 先頭の一匹を見て判断したのか、ホーンドモールは散らばり、光弾を回避した。そして木々の合間を縫うようにして、こちらに近寄って来る。高速で、だ。


「はええな、おい……!」


 そのまま、あっという間にドミニクの目の前まで走り寄り、


「――シャアッ!」 


 一気に跳びかかった。頭に生えたその角で、貫こうとしてくる。


「ぐ……!」


 迎撃は無理だ。自分の動きでは間に合わない。 

 ドミニクは攻撃を止め、両手を使って防御しようとした。


 両腕は角に貫かれるだろうが、致命傷は避けられる。


 ……相当、キツイだろうがな……!

 

 と、直ぐに来るであろう痛みを覚悟した瞬間、

 

「――っと、危ないな」


 アイゼンの杖が、風切り音と共に、ホーンドモールを叩き潰した。

 

「無事か」

「ああ……! ありがとうよ、オーティスさん」


 先ほどと同じく、彼に助けられたようだ。

 

 手伝うとこちらから言ったのに。

 助けられてばかりですまない、と思い、言おうとしたが、そんな暇はなかった。

 

 アイゼンの背後からにもホーンドモールが一匹迫って来ているのだから。

 

「オーティスさん。後ろ――」


 だからドミニクは、敵の居場所を叫ぼうとした。が、それよりも早く、


「――先生の身の回りについてはお任せを」

 

 リンネが双短剣で切り払った。



 俺は背後でホーンドモールが四分割に斬られる様を、横目で確認していた。そしてリンネが双短剣の血を払って鞘に納める姿もだ。


「ああ、有り難うリンネ」

「お気になさらず。先生も気づかれていた事ですし。先生一人でも対処できたことですしね」

「それでもやってくれたんだ。礼は言うさ」


 魔獣が来ているのは気づいていたが、リンネがカバーに入ってくれたこと自体は有り難いことなのだ。

 だからそう伝えると、リンネは嬉しそうに笑った。


「ふふ、先生のそういう真面目なところは、なんとも好きですねえ……」


 そして笑みを浮かべながら、近づいてきたホーンドモールを叩っ切る。

 そんな姿を見てか、ドミニクはあんぐりと口を開けていて、


「り、リンネちゃんも、近接戦闘が出来るのか……?!」

「はい、先生から教わっているので」


 リンネは笑みでドミニクに告げた後、


「というわけで、近場の注意はお任せください。まあ、その必要はないかも知れませんが」


 双短剣に両手を触れさせながら言ってくる。それを見て、ホーンドモールの動きがやや鈍った。

 どうやら、接近するのをためらっているらしい。リンネと自分とで、先頭の五、六匹を倒したからか、警戒もしている。

 奥にいる瘴気を放つボス格も何やら前足に力を入れていて、地面に潜って逃げられるような雰囲気を出しているし。


「そうだな。……逃げられる前に、一気にやってしまおうか」


 迫って来るなら一匹一匹、近接で仕留めればいいと思っていた。けれど、寄って来ないのであれば、

 

 ……殲滅するための魔法を使うだけだ。


 俺は杖を肩に乗せ、


「大気に言葉を預ける。全て纏まり刃となれ――【抉りの大鎌】(ガスティサイス)」

 

 言葉を預けるとともに、横薙ぎに振るった。

 刹那。

 

「――!」

 

 振るった杖の軌跡の延長線上に極厚の風の刃が放たれ、前方を地面ごと、一線に薙ぎ払った。

 

 地面上にいたホーンドモールも無論、薙ぎ払われる。更に風の刃は、最後尾にいた瘴気を振りまくホーンドモールまで届いており、

 

「……!?」

 

 ホーンドモールらは全員、体を半分断ち割られ、抉られ、揃って絶命した。

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