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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第81話 青春体育祭#3

「はぁ、やっぱ一位はきつかったか」


「転んであそこまで挽回出来たのなら十分だと思うけどな」


 競技終わり、空太と一緒に帰ってきた俺は話しながら応援席に戻ってきた。

 そこでは隼人、大地、ゲンキングの姿があり、三人が俺に近寄って来る。


「拓海、隼人から足を引っかけられたって言われたんだが、それってホントなのか?

 言われてみれば確かに不自然だったような気がするんだけどさ」


 開口一番に大地がそんなことを聞いてきた。

 あんな一瞬の出来事を隼人はしっかり見ていたのか。


 とはいえ、俺も確かに不愉快な気分にはなったが、わざわざ口に出して言う必要もあるまい。


「それはたぶんお前達の勘違いだよ。

 単にタイミングよく順位の入れ替わりで俺がコケたからそういう風に見えただけだろ。

 仮にそうだったとして、大地は何するつもりだったんだよ」


「そりゃ、全然スポーツマンシップに乗っ取ってないから抗議しに」


「やめとけ、バカ。こんな一高校の体育祭にそれを掲げてやってる連中の方が少ないだろうよ。

 それに変に揉め事にするようなことでもないだろ。

 俺の方にも大した怪我なんてないしさ」


 俺の言葉に大地は「お前がそういうのなら」と渋々だが納得したような顔をした。

 それよりも、問題はあっちだ。念のため釘を刺しておかなければな。


「隼人もだぞ。たかが一人の悪さで凝り固まった考えをしようとすんじゃねぇぞ。

 ま、起こってもないことをとやかく言うアホじゃないだろ」


「わかってる。だがまぁ、最低限の罰はあってもいいだろとは思ってる」


「変なことはするな。いいな?」


「はいはい、()()しないよ」


 言質は取った。これで無事に何もないだろう......たぶん。

 ゲンキングからは普通に怪我とかのことを気にしていた素振りをされた。


 幸いそこまで速度出てるわけじゃなかったから、地面を滑ることもなかったし擦り傷も何もなかったよ。


 俺は妙に雰囲気が盛り上がっていないことに対して、手を一つ叩きそれを区切りとした。


「よし、これで終わり。気を取り直してやるぞ。

 ま、俺は優勝を目指すから、奢りたいならどうぞご勝手に落ち込んでてくださいな」


 俺がニヤリと煽って見せれば、他の男どもも踏ん切りがついたのか言い返してきた。


「バカ野郎、拓海に奢るわけねぇだろ。奢られんのは俺だ!」


「ハッ、俺に負けた分際で良く言うぜ。勝つのは俺だ」


「俺の存在を忘れてはいけないな。俺は特性スロースターターなんだ。これからギアを上げる」


 大地、隼人、空太がそれぞれ言葉を発していく。

 ゲンキングは状況がよくわかっていない様子だが。

 いいよ、君はそのままでいて。


 それから、大地、隼人、空太の三人は二人三脚だったり、パン喰い競争だったり、と個人競技に参加したり、クラス全体の綱引きやらにも参加した。

 そして、個人競技は俺にも出番が回ってきた。


『さて、続いての競技は借り物競争です!

 スタートラインから10メートル先にある箱に指示書がありますので、それと一緒にゴールしてください!

 ただし、その箱の中には毎年何が入ってるかは、実行委員会の方でも全てを把握していないというパンドラボックス!

 指示が書かれた紙には人によっては無理難題が必ずありますので、それを引いてしまった方は大人しく負けを認めてください!

 ギブアップの方はリタイアという形になり、クラス得点には当然反映されないのでご注意を!』


 司会者が借り物競争について説明してくれた。ルールは先の通りだ。

 もっと言えば、ボックスに手を突っ込んでいる間は指示書を選んでOKだが、一度箱から取り出せば変更は出来ない。


 つまり、箱の中からどれだけ自分に有利な指示書を選ぶのがカギとなる。


 ちなみに、司会者の言う無理難題の指示とは、例えるなら“彼女いない人に恋人と一緒にゴールしろ”的なことである。


 それ以外にも、理科室からメスシリンダーを取ってこいだったり、鮫山先生に禁酒を宣言させろだったり色々過去にあったらしい。


 故に、ここで何を引くかは完全に運......らしいが、どうにも毎年良いものが確定で手に入れられるという方法があるらしい。


『続きまして、第三組目です!

 この組では障害物競争にて意外性を見せてくれた早川選手がいます!

 今回はパンドラボックスから一体何を取り出すのか!

 それを攻略するのかしないのかそれを含めても必見です!』


『今回も面白い行動期待してま~す』


「――セット」


―――バンッ


 借り物競争がスタートした。

 出だしは案の定遅れたが、今回ばかりはそこまで出だしは重要ではない。

 俺は自分のレーンに置かれた箱に素早く手を突っ込む。

 

 これは隼人から聞いたことだが、この借り物競争には毎年仕掛けがほどこされてるらしい。


 というのも、この体育祭ではクラス得点の上位三クラスが、金券もとい図書カードを貰えるらしいのだ。


 そう言うわけで、一番博打になる可能性が高いこの競技で博打にならないための仕掛けを施す。

 それが箱の上側の角に挟んである紙らしい。


 それは自分達クラスが有利になるような指示書が入っているようで、それを手に入れれば俺は一早くゴール出来るのだとか。


 正直、隼人の言葉をそのままに挟んである紙を取ってしまえば、それはちゃんとした勝負なのかと思ってしまう節はあった。


 だが、「どうせそれしてもお前は俺に勝てねぇ」とまで言われりゃ気分も変わる。

 大地と空太には悪いが、今回の俺は勝ちにこだわらせてもらう!


 俺は右手をまさぐり箱の角に指先を寄せる。

 すると、指に紙が触れた。これか!?


 少し紙を摘まんで引っ張ってみれば、角に挟まってる故か簡単には取れない。

 これだな、きっと。この引っ張っても中々取れない感じは絶対にそうだ。

 いっけー! 俺ー!


「どりゃああああ!」


 俺は角にあった紙を引っ張り出した。

 勢い余って箱をぶっとばしそうになったけど。

 どんだけしっかり挟まってたんだ。

 しかし、これだけしっかり挟まっているなら、もはや確信だな。


 俺は期待を胸に早速折りたたんである紙を開いた。

 そこに書かれていたのは―――


「......」


 サーッと血の気が引いていくのを感じた。

 指先が冷たくなり、額から大量の汗をかき始めた。

 な、なんで俺が......これを!?


 あ、あれか? ダミーか?

 同じことを考える奴が他にもいるからってことか!?

 いや、そんなことよりも、俺はこれを......実行するのか!?


『おっとー、他の人達が頭を抱えながらも動く中、早川選手は完全に止まってしまっています!

 これはもしや無理難題の指示が飛んできてしまったってことでしょうかー!

 解説のハナさんはどう思いますか?』


『う~ん、恐らく無理難題で間違いないでしょうね~。

 ただ、その指示書もたまたま早川選手が苦手な指示が来ただけで、他の選手には可能な場合がありますからね~。

 それを考えれば今回は運が悪かったとしか言えないですね~』


『なるほど、確かにそれはあるかもですね。ゲストの久川さんはどう思われますか?』


『私は彼を良く知ってるわ。彼はきっと諦めない。だから、私もその結果を見届けるわ』


『なるほどなるほど、同じクラスですもんね。

 さて、これを踏まえて早川選手はどう動くのか注目です』


 実況がなんか言ってる。

 けど、そっちに集中してる余裕はない。

 俺が悩み始めてからどのくらいたっただろう。

 俺が勝つにはこれ以上悩むことはダメだ。

 つまり、俺はこの指示書をやるかやらないかを決めなければいけない。


「この指示を......やるか、やらないか」


 俺は歯を食いしばった。

 勝つなら本気で。もうどっちにしろ認知されてんだ。

 だったら、一生懸命バカみたいに勝ちにこだわる!


 そう認識した途端、急激に心臓がバクバクと動き始めた。

 気分の乱高下が激しくて気持ち悪くなりそうだ。


 しかし、一度大勢に見られながら恥を晒した人間が、もう一度恥を晒しに行くだけだ。

 もっとも、永久先輩という尊い犠牲が生まれてしまうが。

 そこはもう何でも罰を受けることにしよう。


 俺は実況席に向かって走り始めた。

 そのことに司会者兼実況者がなんか言ってるが、もはやそれ耳に入らない。

 実況席の前に立てば、机に手を突き、手を伸ばした。


「先輩、ちょっと一緒にゴールしましょう!」


「......え?」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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