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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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333/333

第333話 なんだかんだ勝てない相手なのかもしれない

 後日談というか結末。

 大久保との接触後、俺と美玻璃ちゃんは精神的に疲れすぐに帰った。

 それから数日後に隼人から連絡があり、無事処理したとのことだった。

 処理というのは......うーむ、もはや語るまでもあるまい。


 ともかく、これで美玻璃ちゃんは無事にトラウマから解放されたわけだ。

 正直、反則気味の行動をしてる気もしなくもないが、相手が仕掛ける気でいたのだ。

 俺はその自衛をしただけ......そうすることにしよう。


「改めて、頼みを聞いてくれてありがとな。

 本音を言えば、あの話し合いで済ませたかったけど――」


「話を聞く限り、とてもそんな穏便な解決が出来る相手じゃないと思うがな。

 そういう意味では、お前の行動は正解だ。俺も目に賭けてたものが勝手に傷つくのは困る」


 というわけで現在、お礼も兼ねて隼人にクレープを奢った。

 ほどよい春風が吹く中、大きな公園でベンチに座りながらクレープを食べる男子二人。

 なんというか、とても久々な感じの日常を送っている気がする。


「にしても、お前の近くにいると話題に事欠かないな。

 最初こそ弱っちいどこにでもいる石ころだと思っていたが、さすがにあの時の俺は目が曇り過ぎていたらしい」


「言うて俺が行動し始めたらすぐにお前に見抜かれたけどな。

 まぁ、こっちもお前に気に入られようと頑張ってたんだ。

 そういう意味じゃ、ある意味互いに利用しようとしてたわけだし、お互い様だな」


「お前がそのスタンスなら別にそれでもいいけどな。

 むしろ、こっちの方が俺にとってはありがたいし」


 そんなことを言いながらブルベリークレープに噛り付く隼人。

 ただクレープを食べているというだけなのに、どうしてここまで絵になるのか。


 やはりどれだけ俺の心が成長しても「イケメンはズルい」という気持ちは消えないようだ。

 もはやこれは魂にこびりついた俺の性質なのかもしれない。

 ともあれ――、


「これでようやく一段落かぁ~~~」


 隼人より先にクレープの残りを口に押し込み、ベンチから立ち上がる。

 それからその場で大きく伸びをし、全身を包む解放感にホッと息を吐いた。

 すると、俺の背後から未だゆっくり食べ続ける隼人が問いかけてくる。


「一段落、な......それはまだわからないだろ。

 お前が解決したのは、あくまで久川妹が抱える問題だろ?

 だが、そもそもの話はお前が久川妹に絡まれたのが発端のはず。

 そういう意味ではまだ完全に終わったと思うのは早いんじゃないか?」


「そうだった......完全に終わった気でポカやらす気だったわ。

 とはいえ汚い話、先の件でだいぶ許しを貰えないだろうか」


「なら、それは本人に聞くべきだろうな」


「そりゃそうだろう......え?」


 「何を当たり前なことを」と言った視線を隼人にぶつけようと俺は振り返る。

 その途中、視界の端に止まった一人の影に俺の視線が吸われた。

 そして確認してみれば、そこには下校中の美玻璃ちゃんの姿がある。


 下校中に偶然会う事自体はあるかもしれないが、こんなピンポイントに会うだろうか。

 それも隼人との会話中で、美玻璃ちゃん自身も玲子さんのそばについていないで。

 そう、そこが一番おかしい。なぜ彼女が玲子さんから離れているのか。


「まさか......!」


 そう思って視線を隼人に投げれば、こやつは知らぬ存ぜぬの顔でベンチから立ち上がった。

 それから「お前らの会話に俺を巻き込むな」と捨て台詞を吐き、その場から去る。


 どうしてかたったそれだけの言葉なのに、大久保より随分カッコいい立ち去り方だ。

 やっぱりアイツって人間性の魅力からして隼人とは全然違うんだな。

 と、そんな感想は一旦置いといて――、


「美玻璃ちゃん、どうしたの......?」


「あなたに会いに来る用件なんて一つしかないでしょう」


 美玻璃ちゃんに尋ねてみれば、相変わらずのつっけんどんな返し。

 しかし、その返答が逆に安心する辺り、俺もだいぶ毒されてきたかもしれん。

 そんな俺の一方で、美玻璃ちゃんは一度視線を外し、それでも視線を俺に戻すと、


「この度は助けていただき、本当にありがとうございました」


 そう言って、深々と頭を下げた。

 それもとても綺麗なお辞儀で、もはや姿勢から誠意が伝わる。

 とはいえ、俺はもともと依頼された身、真に頑張ったのは「誰かに頼る」ということをした美玻璃ちゃんの方だろう。


「頭をあげてくれ。別に、俺はそこまで大したことはしてないよ。

 それに、最終的な解決は隼人が.....俺の友達がしてくれたしね」


「それでも私のために行動してくれたのは早川先輩です。

 お礼を素直に受け取るのも美徳だと思いますよ。

 変に謙遜されるとこっちが困りますのでやめた方が良いです」


「あれ、感謝にかこつけて俺説教されてない?」


 相変わらずどんな時でも俺に対する強気な姿勢は崩さないようだ。

 となると、「これはこれ、それはそれ」って感じで玲子さんの件はまた別の話かな。

 そんなことを思った瞬間、美玻璃ちゃんが出たのは俺の感想と別の言葉。


「ともかくですね、私が本当に言いたいことは.....その、お姉ちゃんとの関係を認めてあげなくもないということです!」


 上半身をガバッと起こすと、胸を突き出すように腕を組んで言ってみせる美玻璃ちゃん。

 そんな素直になり切れない古のツンデレポーズみたいな言動をし、さらに言葉を続け、


「正直な話、早川先輩のことはあまりよく思ってなかったです。

 私からお姉ちゃんを奪おうとしてる敵でもあり、お姉ちゃんが惚れるに相応しい相手には思えませんでしたから」


「玲子さんに相応しい相手って......さっきいた俺の友達ぐらいか?」


「見た目だけで言えば、アレぐらいでないとお姉ちゃんの美は輝きませんので。

 とはいえ、あの先輩とお姉ちゃんの仲は悪いみたいなので、候補にすら上がりませんでしたが」


 隼人並みの容姿って......それは随分と基準が高いような。

 それだけでかなりの人数に絞られるのではなかろうか。

 少なくとも、その基準では俺は候補にすら上がらんな。


「とはいえ、お姉ちゃんは他の誰でもなく早川先輩に惚れていた。

 だからこそ、私は早川先輩がお姉ちゃんに相応しいかチェックする必要があったのです。

 それでまぁ、その......少なくとも悪い人ではないと思いました!」


 そう大声で言い切る美玻璃ちゃんの頬は朱色に染まっている。

 どうやらその言葉を言うためだけに相当な羞恥心を乗り越えたらしい。

 声が大きくなったのもそれをごまかすためだろう。


「とにかく私が言いたいことは、早川先輩を取り巻く環境の中でお姉ちゃんがその候補にいるという状況を私は受け入れます。

 正直、お姉ちゃんが『候補』だなんて憤慨しそうですが、これは当人達の問題ですので。

 外野の私がとやかく言う事ではありません......またお姉ちゃんに無視されたくないですし」


 最後のがここ一番の本音と見た。

 もうあんな全身が真っ白の灰になったような姿は俺ですら見たくないよ。

 そんな感想をよそに、「最後に改めて聞かせてください」と美玻璃ちゃんは告げると、


「今の段階でお姉ちゃんのことをどう思っていますか?」


「玲子さんのことを......」


 玲子さんのことをどう思うか。決まっている俺の好きな人だ。

 だけど、美玻璃ちゃんが聞きたいことはそういうことではないのだろう。

 言うなれば、この俺を取り巻く環境での結末――それを見越しての問いかけ。

 だからこそ、俺は――


「玲子さんのことは好きだ。だけど、まだ特別視はしていない。

 今回の件で、彼女の妹想いの姿勢は俺を魅了する一つではあったことは確かかな。

 ごめん、こんな上から目線のことしか言えなくて。でも、本音を言うならこれしかない」


「......ま、現状で結果が出てない時点でそう思いましたよ。

 早川先輩のことなら決まった時点で動き出すと思いますし」


「申し訳ない」


「お姉ちゃんが決めることですので、別に私はどうも思いません。

 ですが、お姉ちゃんを選ばなかった場合、楽な生き方出来るとは思わないでくださいね」


「いや、それ実質玲子さんを選べという強迫なんじゃ......」


「当然ですよ、私が幸せになって欲しいのはお姉ちゃんなんですから。

 せいぜい、私の機嫌を損ねないように頑張ってくださいね――拓海お義兄さん♪」


「――っ」


 そうからかい口調で言うと、したり顔の美玻璃ちゃんはスキップしながらご機嫌で帰っていった。

 そんな姿を見ながら、俺はそっとベンチに戻り、


「さすがだなぁ......」


 美玻璃ちゃんの言葉に一杯食わされたような気分になり、青空を見ながらそんなことを呟いた。

読んでくださりありがとうございます(*^_^*)


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