表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

257/321

第257話 敵視してる分遠慮がない

「なるほどなるほど......判決、拓ちゃんギルティ!」


「え、悪いの俺なの?」


 混沌とした空気の中、ゲンキングが戻って来たおかげで空気は戻る。

 しかし、そうなるとゲンキング一人が空気に取り残されることになるので、先の状況を説明したら俺に有罪判決が下った。


 解せぬ。あの状況で俺はただの被害者なのに。

 いや、本気かどうかはわからんが、告白で被害を受けたというのは良くないな。


 なんせ、博多弁告白シチュというのは、ヲタクであれば大好物なのだから。

 とはいえ、やはり有罪判決には納得いかぬ。控訴するぞ!


「異議あり!! 裁判長! 冷静に公平に考えて、俺は一切何もしていません!」


「本当に......?」


 ゲンキングが疑り深そうに俺の顔を覗き込む。

 巫女服美少女にそういう目を向けられるのはある種の眼福だ。

 それはさておき、それで俺が責められるのは違う気がする。


「俺が説明したことは全て事実だ」


「確かに、被告人の言ったことは間違っていないのかもしれない。

 だがしかし、被告人は大きく前提を間違っている」


「そ、それはどういう......?」


「被告人は乙女の気持ちを考えていない!」


「っ!?」


 裁判長が異議あり返しをするように人差し指を突き付ける。

 その言葉に、俺は思わず納得したように言い返せなかった。


 た、確かに.......考えてみれば、俺の立場は非常に特殊だ。

 俺が女子達の好意に気付いていない状態でそういう展開になったなら未だしも、俺は好意をハッキリと認識している。


 その状態で俺がそのうちの一人とイチャイチャしていれば、他の女子は良い顔をしないだろう。


 つまり、俺は自分の立場を忘れずに、一歩引いた状態で接しなければいけなかったんだ。

 そう考えれば、今のゲンキングの有罪判決も彼女の嫉妬から来るものだとわかる。


 俺を見るその顔も「羨ましいことすんな」とでも言ってるように感じる。

 もっとも、裁判長が嫉妬心で判決するのは、公平性としてどうかと思うが。


 さりとて、裁判長の決定が絶対。俺に言い返す言葉は無い。

 しかしそれでも......少し、ほんの少しだけでも良いから言い訳させてくれ!


「被告人、遺言は?」


「......ヲタクとしては非常に満足しました」


「えへへ、拓海君に喜んでもらえた」


 俺がヲタク心を漏らすと、琴波さんは頬を手で押さえて喜んだ。

 まるで今にもこぼれ落ちそうな頬を両手で押さえるかのように。

 瞬間、ゲンキングの闇オーラが全開になる。


「よし、刑を執行しよう。レイちゃんは何が良いと思う?」


「それじゃ、体を二人で半分にするっていうのは?」


「いいね、それ。わけちゃおっか」


 おいおい、二人とも~?

 ナチュラルに人を切断しようとしてませんか?

 縦にしろ、横にしろワシ死ぬんじゃが?

 そんな二人による殺人計画に対し、ニヤけていた琴波さんがハッと我に戻って反応した。


「ちょっと待って! 二人とも! 拓海君を二等分にするのは良くないよ!」


「琴波さん......」


「うちも自分の分が欲しい! だから、三等分が良いと思う!」


「琴波さん.....?」


 頼もしい味方だと思った人が、素晴らしい笑顔と声量でもって裏切って来た。

 そんな彼女の態度に、一瞬俺も裏切られたことがわからなかったね。

 するとそんな彼女に対し、闇落ちゲンキングと玲子さんはユニゾンさせて――


「「強欲な魔女め!!」」


「ひぇっ!」


 その言葉に、琴波さんはビクッと反応し、口をアワアワさせた。

 先程まで大型犬だったような彼女の雰囲気は、一気に尻尾を股に挟んで怯える小型犬に。

 そして知らず知らず踏んだ地雷に怯え、一人小さく縮こまった。


 おっと~、どうしよう。頼みの綱が一瞬にして消えてしまったぞ。

 というか、勝手に出張ってきては自滅していったぞ。

 そりゃ今の二人にいつものテンションで行ったらそうなるて。


 そんなことを思っていれば、二人は揃って目の前で密談を始める。

 わぁ、とっても楽しそう。俺ここから離れてもいいかな?

 現状ここにいると命が危なさそう。


「あの......」


 その時、しばらく前から蚊帳の外にされていた美玻璃ちゃんが、俺の服の裾をちょいっと引っ張った。

 その方向を向けば、彼女は心底困った表情をしながら――、


「ハーレム男気取って目の前でイチャイチャするの止めてもらえます?」


「今の光景を見ててまだ俺のことそう見えてた? 完全に殺人予告されてたよ」


 とはいえ、端から見れば完全に否定できないというのがなんとも。

 それに、俺もああは言われたけど、今ではすっかりあのぐらいの圧はちょどい良いというか。


 うん......しばらく前から思ってたが、俺も感覚がバグってきたな。

 どう考えても普通じゃない状況が普通になると、人間ってこうなるのか。


「......先輩、少しいいですか」


 すると、美玻璃ちゃんは少し何かを考えると、急にそう言ってきた。

 そして立ち上がると、向かった場所は入り口......というか、外か。

 二人で話したいってことか?


 俺はそう考えると、三人の姿をチラッと見て後をついて行った。

 外に出ると途端に寒さを感じる。

 先程までのストーブがあった部屋がもう恋しい。


 しかし、それ以上に寒そうなのは美玻璃ちゃんの方である。

 彼女は上着を着ずにそのまま出たせいか、手をこすっては息で手を温めている。


 俺は着ていたダウンジャケットを脱ぎ、そっと美玻璃ちゃんの肩にかけてあげた。

 すると、彼女はビクッとして途端に俺の顔を睨む。


「なんですか、好感度稼ぎですか。だとしたら、残念ながら1ミリも上がりません」


「いや、別にそんなつもりじゃ......強いて言うなら、ただのお節介だよ。

 目の前で寒そうにしてたら、こっちまで見てて寒くなるしね。

 それに、あいにく俺は太ってるから寒さには並みより強いからね」


「あ、そうですか.......」


 サムズアップして言えば、物凄く塩対応された。

 しかし、ダウンジャケットを返す気はなさそうで、両手でギュッと握っていた。


「あ、カイロもあるけどいる?」


「あなたの懐に入れたものなんて触りたくありません。

 上着がせいぜいの妥協ラインです」


 う~ん、トゲトゲしい。これは難敵だな。

 まぁ、そもそも姉の好きな人って感じだしな。

 シスコン妹からすれば、仲良くしたいとは思わないのも当然か。


 となると、これ以上踏み込むのはかえってマイナス評価になりかねないな。

 変に敵視を受ける前にさっさと本題に入るとするか。


「それで、俺を一人呼び出したのは、何か聞きたいことがあったからなんだろ?」


「そうですね、本当はお姉ちゃんがいかに凄くて魅力的で、美人で、優しくて、気立てが良くて、グラマラスで......」


「ん?」


「ナイスボディで、常に良いニオイがして、おっぱいもフワフワで、枕に顔を埋めてるとこを見ても怒らないで、なんなら写真のお姉ちゃんの顔を切り取って、それを別の人物の顔に貼り付けても冷たい眼差しをするだけで.......」


「おーい、どうした? 急におかしな方向に舵を切り出したと思ったら、求めても無い性癖の開示始めてるぞ」


「そんなお姉ちゃんがずっと先輩にしか見せない顔をすることに、先輩が死ぬまで文句を言おうと思ってましたが」


「今度は急に殺意がマシマシじゃん」


「それよりも確認しておかなければいけないことができました」


 美玻璃ちゃんはチラッと休憩所の方を見ると、すぐに俺に視線を戻した。

 そして率直に、俺の抱えている核心を突いてくる。


「先輩は誰が好きなんですか?」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


良かったらブックマーク、評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ