第243話 クリスマス会の夜#4
「ちょっと、もう少し離れなさいよ」
「そんなこと言われても.......くっ」
「琴波、もう少し体勢低くして」
「そげんことできん......!」
現在、俺の目の前では、玲子さん、ゲンキング、永久先輩、琴波さの女性陣が苦悶の表情を見せていた。
そして、そんな表情......いや、もっと言えば、体勢もだが、彼女達を見ていいのか。
あんな絡みついた彼女達を見ていいのか。わからない。
わからないが、少なくとも目が離せないことは確かだった。
何が行われているか。
それを一言で言うならば、ツイスタゲームである。
そして、それが行われることになったのは数分前に遡る。
―――数分前
ジジ抜きによって衣装に着替えさせられた俺達は、最初にいたリビングへと戻ってきていた。
その際、女性陣はまだ帰ってきておらず、適当にだべっていると彼女達が来た。
「隼人様、お待たせしました」
ドアを開け、そう言ったメイドは自ら身を引くと、代わりに玲子さん達が入って来た。
すると、どうやら玲子さん達もババ抜きの結果でクリスマス衣装が変わるようであり、四人の姿はそれぞれ違った。
まず一位で勝ち上がったのは、恐らく琴波さんだろう。
彼女の衣装は俺と同じクリスマスツリーをモチーフにした感じだろうが、俺のような学芸会の木みたいな感じではなく、どちらかというと服に近い感じであった。
上下に黒いインナーを着て、その上に短ランほどの短さの緑色の服と、ロングスカート。
その服とスカートにはそれぞれ飾りや綿があしらってあり、ザ・クリスマス感を出している。
二位の玲子さんは、一言で言えばミニスカサンタだ。
それこそ、SNSでポストされているような絵にありそうな衣装というべきか。
へそ出しとか恥ずかしくはないのだろうか......と思うのは俺が男だからだろうか。
ともかく、思わず目が吸われるような綺麗な腹筋をしている。
同じへそ出しの大地は変態に見えるのに......なんだか不思議な感覚だ。
あとは、玲子さんが恥ずかしがってないというのも印象にあるかもしれない。
三位はたぶん先輩であろう。彼女の衣装はトナカイだ。
ただし、先の二人が服であったのとは違い、彼女は着ぐるみである。
全身を覆うような感じであり、頭にも顔が出るような被り物をしている。
さらに、鼻には赤色のボールをつけて。
なんというか......とてもちんまいトナカイである。
先輩の身長も相まって、子供がクリスマス会にはしゃいで着たみたいになってる。
そのせいか先輩の目もだいぶ死んでるし。なるほど、これが三位か。
そして四位がゲンキングなのだが......これはなんというか酷い。
いや、似合っているとは思うのだが、場違いとも言えるというか。
ゲンキングの服のモチーフは、雪ウサギだという。
もう勘のいい人は察することが出来るだろう。
雪ウサギ→白ウサギ。それを言い換えれば――そう、白バニーだ。
ゲンキングは今、白バニーの格好をしている。
元が陰キャのゲンキングにはさぞ辛かろう。顔も真っ赤だし。
しかし、不思議と目は引き寄せられてしまう。
どうして男はバニーという衣装にこうも弱いのだろうか。
まぁ、もしかしなくても”単純”だからかもしれないが。
だって、どう足搔いたって目に留まるし。
加えて、そこからさらに酷いのが、四位以下の扱いというか。
今回女性陣で呼ばれたのは、玲子さん、ゲンキング、先輩、琴波さんの四人だけではなく、勇姫先生、柊さん、椎名さんというギャル三人組もいるのだが、その三人の衣装がこう......ね?
まず、五位の柊さんは白キツネだ。そう、"白"である。
言うなれば、やってることはゲンキングの二番煎じであり、なんならつけ耳をうさ耳からキツネ耳に替え、尻尾もキツネらしく長くしただけの中身バニーである。
そして、六位は勇姫先生であるが、もはや見た目は白ビキニである。
極端に露出し、着用しているビキニな部分に、申し訳程度に白い綿がつけられている。
モチーフは雪なのだと。いや、もうそこ雪だるまでいいだろ。
なんか一周回って変態みたいになってるじゃんか!
......と思ったが、それと同じぐらいの変態が最後にいた。
それが椎名さんであり、彼女は全身に肌色の全身タイツに赤い紐が巻いてある。
そう、たまにポストで見る「プレゼントは私」の衣装である。
全身タイツのおかげで恥部の露出がないとはいえ、やってることは基本変わらない。
そのせいか......うん、変態だ。変態が目の前にいる。
加えて、女子のイケメンであるあの椎名さんが珍しく恥ずかしがってるせいで、なんだか見てはいけないものを見てる気分である。
「よし、全員集まったな」
俺達が女性陣の衣装に見惚れていると、一人通常運転の隼人は一回手を叩いて注目を集めた。
その声と音に全員が視線を向けると、隼人は遠くにいるメイドを人差し指をクイッと動かして呼び出しながら、これから行われるゲームについて説明した。
「さて、このままプレゼント交換と行くのも悪くねぇが、とある四人はちょいと訳ありでな。
今からどうしても勝負がしてぇというもんで、俺がそれを特別に開きたいと思う」
すると、隼人の近くにメイドがやってくる。
そのメイドは両手に丸めた壁紙のようなものを渡した。
「これからその四人にはとあるゲームをしてもらう。
んで、その四人のうちの勝者一人には、拓海との一日デート券が送られる」
「え?」
その言葉に、俺は思わず驚きの声を漏らすと同時に、すぐさまその四人を特定した。
にしても、この言い方......隼人が無理やり開催したものではない?
最低でもあの四人が同意したということか。
なんだか嬉しいようなもどかしいような変な感じだ。
とはいえ、隼人が主宰とはなんとも嫌な予感しかしない。
そう思っていれば、案の定隼人はニヤニヤした顔で壁紙のようなものを広げた。
「これから、その四人に行ってもらうのはツイスターゲームだ。
ま、ルールは言わずもがな理解していると思うが、指定された色に四肢をつけ、それで体勢を維持できなければ負けというシンプルなゲーム。
どうだ? 俺としちゃ随分とぬるいゲームを用意してやったが」
ぬるいというが、ゲーム性自体はシンプルだが、問題はそこじゃないだろう。
これから、玲子さん、ゲンキング、先輩、琴波さんの四人には芸人張りに体を張ってもらうということであり、問題は体勢の維持ではなく、それに伴って生じる羞恥心の方だろう。
「そうね、ぬるいわ」
「や、やってやるよ!」
「ワタシに挑むことを後悔させてあげるわ」
「ま、負けないから!」
しかし、そんな俺の感想とは裏腹に、その四人は覚悟を決めたようにやる気であった。
なんだったら、それぞれ意気込みまで見せているほどに。
ただし、俺からはなんだか少し怖く感じたが。
―――現在
そしてただいま、俺の目の前では白熱した戦いが繰り広げられている。
その四人のなんと表現したのがいいだろうか。
四つん這い玲子さんの下に琴波さんが腕を伸ばしており、そんな彼女の足元では先輩が逆四つん這いとも言える体勢で頑張って指定された色に足を伸ばしており、ゲンキングはあの服装で開脚するような体勢になりながら玲子さんの体の下に足を滑り込ませている。
まぁ、つまり四人とも密集形態でギュウギュウということだ。
そして、その四人から時折出てくる煽り合い。
何を言い合っているかは彼女達の名誉のため割愛させていただく。
その光景は、なんだか見てはいけないものを見ているような気分でもあり、富裕層の遊びをしているような気分でもあった。
加えて、その四人は互いに意地でもって頑張っているので、割と長期戦となって続いた。
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
良かったらブックマーク、評価お願いします。




