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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第238話 クリスマス会前の余談

 母さんと過ごしたクリスマスイブの翌日。

 12月25日日曜日.....文字通りのクリスマスの日がやって来た。

 そんな日の午前中、俺は駅前のショッピングモールに来ていた。


 目的はクリスマス会で行われるプレゼント交換用のプレゼントを探すためだ。

 それ自体はずっと以前に、成美さんから「用意しといてね」と伝えられてあった。


 がしかし、期末テストや母さんに告白に費やす覚悟の時間やらですっかり忘れてた。

 なので、急遽買い物に来ているのが現在。


 朝起きた時になんか忘れてると思って思い出して良かった。

 まぁ、幸い開催自体は夕方だって話だからいいけど。


「にしても、ザ・クリスマスって感じだなぁ......」


 ショッピングモールに入ってすぐに視界いっぱいに広がったのは、大きめなエントランスに設置された巨大なクリスマスツリー。

 その大きさは天辺にある星が二階辺りにまで届いている。


 そして、そのツリーの下ではなんかの催しが開催中らしく、親と一緒に来た子供達がクリスマスツリーに一つだけ飾りをつけていた。

 なんだか七夕で見るような光景だが、何か祈ってたりするのだろうか。


 そんな光景を眺めつつ、エスカレーターで二階へ。

 すると、そこの廊下にはカップルや夫婦といった男女二人組がたくさん往来していた。

 まぁ時期が時期で、日が日なので仕方ないのだが、やはり肩身が狭い気持ちになるな。


「さっさと買い物しちゃってどこかの喫茶店で時間潰そ」


 俺はそそくさと移動すると、とりあえず目に入った百均に立ち寄った。

 そこで両サイドにある品が置かれた棚を流し見しながら、物色を開始。

 しかし、なんかあんまりピンと来るものはなかった。


「う~ん、さすがに百均じゃこんなもんか......?」


「だーれだ」


「うひっ!?」


 俺が腕を組みながら悩んでいると、背後から声が聞こえてきた。

 ただし、その掛け声で目が暗闇に包まれることは無く、代わりに俺の贅肉が摘ままれた。


 そんなことされれば、俺の体は当然ビクッとして背筋が伸びるわけで。

 バッと離れてサッと振り返れば、そこには小さな悪魔がいた。


「あら、思ったよりも機敏な反応するじゃない。

 でも、普通あの手の掛け声されたら、誰か当てようとするのが礼儀じゃない?」


「そんな礼儀知りませんよ。つーか、やるだったら普通手で目を隠しません?

 なんで背後から人の肉摘みくるんですか」


 俺の背後にいたのはもちろん永久先輩である。

 にしても、まさか先輩とこんな所でバッタリ出くわすなんて。

 いや、別に会うのはいんだけど.......いいや、やっぱ今じゃないな。

 とはいえ、会ってしまったのは仕方ない。

 ここは一つハッキリと――


「先輩、俺はプレゼントを買う予定なので。それでは」


「待ちなさい」


「ぐぇ」


 俺が颯爽と立ち去ろうとすれば、先輩に襟掴まれた。

 ゲホッゲホッ......今思いっきり喉閉まったんだが。え、一体何用で?


「な、なんですか?」


「あなた、逃げようとしていない?」


「してませんよ。それにどうせ夕方には会うんですから」


「なら、一緒にいたって構わないじゃない」


「あいにく、その論は成立しません。

 なぜなら、俺はプレゼントを買うのを今の今まで忘れていたから!

 というわけで、先輩もプレゼント交換するってのに、プレゼントの中身知ってちゃ楽しみがなくなるでしょ?」


「それはそうね。でも、逆に知っておくことでキープという手もあるわ」


「姑息」


 俺がボソッと言葉に出すと、たちまち足にローキックが飛んできた。

 ふっ、先輩言葉よりも先に手を出しましたね?

 ということは、どうやらこの言い合いは俺の勝ちのようで。


 本当なら俺は先輩に勝ち誇った顔の一つでも見せてやりたいところだが、ここで下手に行動すれば先輩からの怒涛な逆襲を来そうなのでやめておこう。

 だから、いい加減ローキックやめてくれませんか。痛い、痛いっす先輩。


「拓海君、何か踏ん切りがついたの?」


 先輩がローキックを止めた途端、突然そんなことを聞いてきた。

 あまりにもさっきの態度との違いに、一回数秒のNowLoadingを挟んでしまう。


「......え?」


 そして、ようやく出てきた疑問の言葉に、先輩は近くの棚にあるオシャレなデザインのコップを見ながら言った。


「なんとなく顔がスッキリしてるもの。

 前にも似たようなことがあったけど、今はあの時以上というか」


「そんな顔に出てます、俺?」


「さあね。でも、強いて言えば、拓海君をしっかりと見ている人にはわかるんじゃないかしら?

 例えば、ワタシのような頭がよくてあざと可愛くてユーモアのある美少女とか」


「自己評価たっか」


「肉削ぐわよ」


「それはよろしくお願いします」


 そう言うと、先輩は躊躇いなく俺の肉を摘み、手首を捻り始めた。

 痛たたたた!? ちょ、それ削いでない! ねじ切ろうとしてる!

 っていうか、さっきのは言葉の綾だから! 許してごめんなさい!

 そんな言葉にならない声が先輩に伝わったのか、数秒経って放してくれた。


「あ、あぁ......に、肉......俺の肉がぁ......」


「ワタシをコケにした罰ね。むしろ、これぐらいで済んだことを感謝しなさい」


「本気で千切れるかと思った......」


「大丈夫よ、仮に千切れたとしてもその肉は美味しく食べてあげるわ。

 ほら、好きな人の肉はきっと美味しいわよ」


「......最近、チェーン〇ーマン読みました?」


「前に拓海君がスマホで読んでたのがワタシも気になったから、キリのいいとこまで読んだだけよ」


「いや、普通にガッツリ読んでる」


 俺はつねられたお腹の部分を擦る。よし、少しは痛みが和らいだ。

 そして、先輩に向き合うと、改めて聞いた。


「で、先輩はいつまで俺に構い続けるつもりですか?」


「そりゃもちろん、いつまでもよ。けどまぁ、それ以上はさすがに拓海君の家で行うべきよね」


「一体人の家で何をしようとしてるんですか?」


「それよりも、プレゼントで悩んでいるならアドバイスをしてあげるわ。

 先に断っておくけど、ワタシが思うプレゼント基準を提示してあげるだけで、選ぶのは好きにしなさい」


 先輩が先程とは違ってキリッとした目つきで言ってきた。

 この目つきは先輩の気持ちが切り替わった時の目つきである。

 人をいじる時の目はもっと邪気が籠ってるしな。


 とはいえ、俺もプレゼントの選考基準は悩んでいたので助かる。

 男子同士でプレゼントするなら、多少ネタ枠を送ってもいいかもしれない。

 しかし、女子を含めたプレゼント交換となると......さすがにその手は使えない。


 加えて、女子に対して何を送ったら無難か。

 もっと言えば、何なら引かれないかが全くわからない。

 ともなれば、せっかく先輩がいることだし、聞く自体はありか。


「わかりました。ありがとうございます」


「素直に聞き入れる姿勢はあなたの美徳だと思うわ。

 それじゃ、早速出発よ。安心しなさい、ワタシの趣味は9割で留めておくから」


「ほぼ全部先輩の好みじゃないすか」


 そして、俺は先輩と色々な店を回りながら、先輩からのアドバイスを聞いた。

 曰く、「異性にもあげられるものとすれば、お菓子が一番無難」とのこと。

 また曰く、「少し難易度を上げるとすれば、コップや食器になる」とのこと。


 つまり、奇をてらったものは選ばなくていいとのことだ。

 お中元の品を送る時と同じように、消耗品か普段使いしやすいのが一番無難。


 そんなアドバイスを受けつつ、俺は一つのプレゼントを選択した。

 そして、それを購入すると、俺は先輩のとこへ戻っていく。


「お待たせしました、先輩。ちゃんと選んできました」


「どんなの選んできたのかしら?」


「それは言えないですよ。あ、それとこれ。お礼代わりに」


 俺が先輩に渡したのは、先輩のアドバイスを受けている最中、時折先輩の視線を吸い寄せていた熊のぬいぐるみである。


 プ〇さんでもなければ、く〇もんでもなぬいぐるみ......どことなくブタっぽくも見えるんだが気のせいだろうか。正直、可愛いと思える要素が無い。


「これは......」


 しかし、そのプレゼントを贈った瞬間、先輩の顔が真っ赤になった。耳まで真っ赤だ。

 先輩はそのぬいぐるみを受け取ると、小さい子供が大事そうに抱えるようにギュッと抱きしめた。

 そして、その状態で俺を睨む。


「......あなたのこういう不意打ち嫌い」


「ハハッ、そりゃどうも」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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