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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第227話 君ら強すぎない?

 序盤優勢であった俺が逆転され、一転してピンチになったその時。

 俺を助けてくれたのは勇姫先生と椎名さんであった。


 そのことに非常に感謝なのだが、勇姫先生達は女子で二人に対し、相手は男で大勢。

 ぶっちゃけ状況的に分析すれば、未だ形勢は不利と言える。

 それどころか、男達の一部は二人を見て邪なパワーでやる気漲ってるようだし。


「急に出しゃばってきて何の用だ? もしかして、そのデブの友達か何か?

 おいおい、まさかテメェなんかにこんなもったいねぇ女どもがいたとはなァ!」


「だがまぁ、ここに現れた以上コイツらが悪い。

 あーあ、デブ男ォ、テメェのせいでこいつらはこれから死ぬより酷い目に遭うんだぜ?」


 飯田と加々見がそんなことを言う。

 二人の言葉、そして周囲の態度や表情も相まって完全に賊である。

 なんというかただの逆恨みした不良というか、それよりももっと酷いタイプというか。


 ともかく、助けてくれたのは嬉しいが、この場は危険だ。

 特に女子である二人は捕まったら最後どんな目に遭わされるかわかったもんじゃない。


 先程まで隼人のことすらロクに知らなかった連中が、隼人をボコるという明確な目的すらなかった連中が、二人が来たことで目的を得てしまった。

 これは不味い。非常に不味い。体力がある内に早く離れてもらわなければ!


「二人とも、俺のことはいいから早くここから離れて!」


 その言葉に、勇姫先生が肩越しに反応した。


「ハァ? 誰があんたなんかのために助けに来るってんのよ。

 アタシは隼人君がピンチだったから来ただけ。言うなれば、ついでよ。つ・い・で」


「全く勇姫も素直じゃないな~。普通に心配だから来たって言えばいいのに」


「春香、うっさい! ともかく、アタシがあんたの指示を聞く義理はない。

 あんたは隼人君の様子だけ確かめていればいいわ。ここはアタシ達がやるから」


 ......ということらしい。どうやら聞く耳は持ってくれないようだ。

 となれば、もう俺にはどうにもすることもできない。

 戦える体力も無いし、下手に邪魔して二人につけいる隙も与えたくないし。


 いくら二人が前に柊さんのピンチを救ったとはいえ、助けられた人の思い出って大抵美化されてそうなものだから、一体どこまで信じたらいいか.......。

 けど、今の俺は信じることしかできないのか。歯がゆいな。


「......わかった。気を付けて」


「任せて。私がちゃんと守るから」


 椎名さんが俺に向かってサムズアップする。 

 その時、二人に向かって益岡が飛び出した。


「ごちゃごちゃとうるせねぇな! 大人しく捕まっとけ!」


 益岡が勇姫先生に向かって右手を伸ばす。

 しかし、その手は勇姫先生の前で止まった。


 勇姫先生が止めたわけじゃなく、隣にいた椎名さんが益岡の手首を掴んで止めたのだ。

 そして、椎名さんは益岡の方を向いて、ドスの聞いた声で言った。


「私の友達に汚い手で触れようとすんじゃねぇよ」


 瞬間、俺は目がおかしくなったかと思った。

 なぜなら、気が付けば益岡の体がぐるんと回転しながら宙に浮かんでいるのだ。

 まるで益岡の立っていた位置だけ重力が軽くなったかのように。


 そして、益岡の体は背中から地面に叩きつけられる。

 いや、椎名さんが何かしたかというよりは、自重で背中から着地したみたいな感じか。

 ともかくまぁ、なんというかめっちゃ痛そう......もちろん、同情する気はないが。


 そんな益岡の光景には、他の連中も唖然としていた。

 俺と同じで目の前で見たのに疑っているようだ。

 それから数秒後、最初に動き出したのはリーダーの飯田だ。


「チッ、テメェらも妙な技使いやがるのか」


 飯田は掴みによる手ではなく、拳でもって椎名さんに攻撃を仕掛ける。

 しかし、またもや気が付けば、椎名さんの横で飯田が空中で一回転していた。

 もはやドラマや映画の殺陣シーンでしか見ない飛び方してる。

 あの動きって実在するんだ......。


「クソ、このアマ! 全員で囲め!」


 加々見の声で全員が反応し、一斉に襲い掛かる。しかし、結果は変わらなかった。

 五倍ぐらいの数がいる男達は、たった女子二人にポンポンと投げ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 それこそ、千切っては投げ千切っては投げみたいな感じだ。


 そんな光景を見た俺は、少し前に母さんが再放送で見ていた「ごく〇ん」というドラマを思い出した。


 それは不良高校に勤めることになった女教師が、不良達を構成していくという話なのだが。

 その時、他校の不良と生徒が争っていた際にその教師が仲裁に入り、襲い掛かる他校の不良達を拳を使わず投げだけで成敗していたのだ。


 そう、それはまさに目の前で起きている光景も同じ。

 もっとも、その時はその女教師一人であったが......あれはフィクションって考えれば、やはり勇姫先生と椎名さんがやってることには舌を巻く。


「なんというか......大丈夫そうだな」


 もはや心配すること自体がおこがましいと言うか。

 むしろ、この二人を相手にすることになった飯田達が可哀そうというべきか。

 ともかく、ピンチになりようがなかった。


 もはや叩きつけられまくって立てれてる人の方が少ないし。

 勇姫先生が安全に動けるように、椎名さんが寝転がった男達が邪魔しないように的確に潰してるし。


「そうだ! 隼人を......」


 あまりの凄い光景に見惚れてしまっていた俺は、急いで隼人に近づく。

 胸が前後に動いている。呼吸はある。気を失っているだけか。


「顔に傷が全くないな......もしかして、コイツ顔だけは必死に守ってたか?」


 そう思いながら腕をまくってみれば、所々に青あざがある。

 恐らく顔を両腕で覆って必死に守っていたのだろう。

 それこそ、その他の部分を犠牲にしても。

 まぁ、顔が一番人に見られやすいしな。


「隼人......おい、隼人!」


 肩を揺さぶっても目覚める気配なし。まだ眠りは深そうか。

 にしても......なんだろう、コイツ、こんな筋肉あったっけ?

 隼人のイメージは細マッチョ的な感じだったが、俺が思っていたよりもよほど筋肉がある。


 触れてみた肩なんか「ちっちゃい重機乗せてんのかい!」って言いたくなるぐらいだ。

 まぁ、若干誇張した部分も否めないが......そう考えると、心なしか隼人デカくね?


 いや、もともとアイツはデカいんだが、普段よりもっとデカいというか.......肩幅が広いからか?


―――プオオオオン!


「っ!」


 その時、小さくパトカーのサイレンのような音が聞こえた気がした。

 顔を上げ、周囲に耳をそば立ててみれば、その音がだんだん大きくなっていく。

 けど、なんか一定周波というか、音が動いてる感じがしないけど気のせいか?


 そんなことを思っていると、どうやらその音は飯田達にも聞こえていたようで。

 飯田達は何を思ったか知らないが、慌てて立ち上がると蜘蛛の子散らすように逃げて行った。


 その流れで勇姫先生と椎名さんを見てみれば、多少早く呼吸をしていたが、外傷は見当たらない。


 つまり、たった二人で不良達をやっつけてしまったのだ。

 あのうさん臭い柊さんの話がまさか誇張無しだったとは......世の中何があるかわからんもんだな。


「うっ......」


「隼人! 気が付いたか!? 俺だ、拓海だ!」


「うぅ......たく、み.......?」


 隼人がゆっくりと目を覚まし、顔を上げた。

 さっきまで隼人にしちゃなんだと思っていたが、声は隼人そのものだ。

 ともかく、これで無事になったということか? ハァ~~、疲れた.......。


 隼人が起きたところで、俺も安堵して腰が抜けた。

 まさかこんなことになろうとはなぁ。

 やり直ししても十分ハードな出来事だったぜ......。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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