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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第213話 初めての合コン

 始まってしまった合同コンパ。

 現在、男女に分かれて机で向かい合う形で座っている。

 席順としては俺、山田、田山と座っており、俺の正面に勇姫先生と女子二人。


 俺が初対面の女子二人は勇姫先生の知り合いだけあってビジュアルのレベルは高い。

 一人が茶髪ロングで片方の髪を耳にかけたギャル。

 前髪には星形のヘアピンをつけている。目はキリッとしていて明るそうな印象だ。


 もう一人が肩辺りまでの金髪ギャル。

 毛先が外に跳ねていて、目じりが下がっている。いわゆるタレ目というやつだ。

 その目は若干柊さんを彷彿とさせてしまい、なんとなく苦手意識を感じてしまう。


「今日は集まってくれてありがとね~。とりま、最初は自己紹介から始めよっか。

 アタシは明壁(あすかべ)アカリ。アカリでいいよ~」


 茶髪ギャルことアカリさんが慣れた様子で自己紹介を始めていく。

 その次に続いたのは隣に座る金髪ギャルだ。


「うちは多部ミカコだよ。うちもミカコでいいよ。よろしくー」


 なるほど、この方はミカコさんね。

 とりあえず、失礼だけはないように名前は覚えておかないと。

 そして、ミカコさんの自己紹介が終わると勇姫先生も挨拶した。


「アタシは同じクラスだから知ってると思うけど、愛名波勇姫ね。

 アタシも勇姫でいいわ。今日は無礼講で楽しんでいこー!」


 なんというか目が白黒した。

 普段の勇姫先生を知っているからか、ここまで猫被ってる姿が新鮮過ぎて。


 そんな気持ちが透けて見えていたようで勇姫先生から睨まれる。

 すんません、ほんと他意はないんです。はい、もう驚きませんから。


「なぁ、なんで愛名波さんがいるの?」


 隣にいる山田が小声で話しかけてきた。

 コイツ、いやコイツらか、今更になって気づいたのか。


「単なる人数合わせだよ。俺と一緒」


「じゃあ、あの人によってめちゃくちゃにされるってことはないんだな?」


 なるほど、それを危険視してるのか。


「安心しろ。それだったらもうすでに合コン自体無かったことになってるだろ。

 逆に言えば、あるってことは......そういうことだ」


「そうかな......そうかも」


 よし、納得してくれた。

 あんまり小声で話してても印象悪いだろうし、さっさと流そう。

 そして、俺達もサッと自己紹介を始めた。


 俺達の終わると、途端に山田と田山は静かになる。

 出たか、陰キャ特有のコミュ弱が! にしたって早すぎる!

 お前らから漫画とゲームの話題を封じただけでこれか!


「そういや、アタシはぶっちゃけ人数合わせの参加なんだけど、もともと合コンのセッティングし始めたのってそっちだよね? どういう経緯?」


 一瞬、場が静まり返ったかと思われたが、勇姫先生が積極的に話題を出してくれた。

 おぉ、さすが勇姫先生! 頼りになる!

 しかし、こっちにウインクするのはやめてくれ。

 褒めろアピールしないで良いから。


 勇姫先生の話題提供により、アカリさんとミカコさんが成り行きを話し始めた。

 その内容は概ね山田と田山と聞いた内容と同じだ。

 本当にそんな出会いだったとは.......半分ぐらいは盛ってると思ってたぞ。


 しかし、それぐらいで合コンなんてするものなのか。そこは未だ信じられん。

 ともあれ、この話題はこっちにとっても都合のいい話題だ。

 なんたって、それは二人が活躍した話題なんだからな。


「へぇ~、山田ってそんなクレーンゲーム得意だったんだな」


「あ、うん.......」


 俺のボールをキャッチせい!

 なーに目の前でワンバンして転がっていくボールを眺めとんじゃ!


 そこは大見得切手でも「超得意なんだよ。大抵のもは取れる」ぐらい言っておけって!

 くっ、さすがにそこを陰キャに求めるのは酷だったか。


「あ、でも、前に一度俺も取ってもらったことあるな。

 そん時あまりにもあっさり取っちゃったからびっくりしたよ」


 ま、嘘だけど。でも、これで山田のヨイショは多少はした。


「え、俺、お前と一回もゲーセン行ったことないけど」


 マジレスすな! なんで今度は人のボールをバットでフルスイングするんじゃ!

 鋭いセンター返しでこっち大ダメージなんだけど! ?

 緩急のつけ方が0か100しかないんか! ?


「え、ほら、ゲーセンじゃなくて.......確かショッピングモールにあるところだよ」


「え、だから――」


 俺は素早く山田に机の下で蹴りを入れる。

 その行動で山田は今の状況を理解したようにしゃべり始める。


「あ、あぁ~、そういやそうだったな。

 確か、このぐらいのカ〇ビィのクッション取ったよな」


 そう言って山田は両手を広げる。その手と手の間は目測一メートルぐらい。

 さすがに加減を考えろ。盛るなら常識の範囲内にしておけ。


 どこにそんなバカでかいクッションを取るクレーンゲームがあるんや。

  少なくとも俺は知らん。

 

 とはいえ、幸い、アカリさんもミカコさんも「すご~い」と驚いていた。

 正直、その言葉に含まれている意味がどっちかわらかないが、良い方だと信じよう。


「へぇ~、珍しい出会いもあるもんね。

 それでそのプチプチゼリーってどんなの? アタシよく知らないんだけど」


「あ、これのことだよ」


 勇姫先生がミカコさんから例のキャラのストラップを見せてもらっている。

 なんとか間を繋げようとしゃべってくれているのがわかる。


 が、その話の流れは不味い。

 なぜなら、女子だけの間で話が続いてしまうから。

 そうなれば、出来上がるのは男女の隔たり。


 言うなれば、小学校の給食で男女が席を合わせたものの、話が合わず結局女子は女子、男子は男子で話するような状況だ。

 小学生なら男女の機微に疎いだろうからまだいい。

 だが、この年齢でそれはただの地獄!


「あ、それ、確か妹も持ってたな。田山も興味あるっていってなかったっけ?」


「え?」


 俺は架空の妹を作り上げて無理やり話題に介入する。

 この際、俺がどう思われようとも問題ない。

 この合コンは山田と田山のためにあるのだから。

 故に、田山! テメェ―には頑張ってもらう!


「そうなの?」


「あ、え、そ、そうなんだ......その――」


「ほら、お前言ってたじゃん。形が可愛いって。それにイラスト的にも描きやすいって」


「ちょ、早川、なんでそれを――」


 田山が衝撃を受けたような顔でこっちを見て来る。

 なんで絵を描いてるのを知ってるかって?

 お前、授業中に教科書を机に立てて早弁するように絵を描いてたじゃねぇか。


 見つけたのはたまたまで、丁度俺の席から見える位置だったんだよ。

 さすがに何を描いてるか知らないけど。


「え? 絵描いてるの!? 」


 俺の言葉にミカコさんが反応を見せた。


「田山の絵さ、スゲー上手いんだよ。まぁ、俺が下手すぎるのかもしれんばいけど」


「普段何描いてるの?」


「ロボット......もの」


 嘘だ。アレは絶対ゲームキャラの美少女だ。顔に書いてある。


「そうなんだ。実は私も絵を描いてて......ほら、今このペンネームで描いてるんだ。

 良かったら見てみて。っていうか、ツミッターじゃなかったZってやってる?」


 ミカコさんはしゃべりながらZのプロフィールを見せてきた。

 なんというかなんともオープンな方である。


 普通そういうのって恥ずかしくて自分から見せることはないのに......ん?

 フォロワー5万人!? 待て待て、想像以上にとんでもねぇ人来てるって!?


「........」


 た、田山の霊圧が.......消えた!?

 いや、でも、その.......これに関しては仕方ない気がする。

 俺も知らなかったとはいえ、その......なんというかごめん。


「み、ミカコ、あんまそういうの人に見せない方が......」


「裏アカじゃなきゃ大丈夫だよー」


「裏アカあるんだ......じゃなかった。そういう問題じゃないから! プライバシーは大事!」


 勇姫先生がなんとかこの話題に対して収集をつけようとしてくれてる。

 恐らく俺達の空気感から察してくれたのだろう。サンクス。


 俺は腕時計をチラッと見る。これが始まって5分の出来事か。

 まだたったの5分。これはなんというか先が思いやられ――殺気っ!?


「ん? 拓海君どうしたの? 辺りを見渡して。知り合いでもいた?」


「いや、今日、たまたま首を寝違えちゃって......時折首を伸ばしてやらないと痛くて」


「えぇ~、大変そう」


 しょうもない嘘でアカリさんの同情を誘ってしまったのは申し訳ない。

 それにしても、今妙な視線があった気がしたが気のせいか?

読んでくださりありがとうございます。


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