表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/321

第206話 はてさて今度はどんな試練か

「何かがおかしい.......」


 そう思い始めてから今日に至るまで日に日にその気持ちが大きくなっていく。

 というのも、ラブレターを受け取ったあの日から妙に女子に話しかけられる回数が増えたのだ。


 それは俺の気のせいだと思いたがったが、ついに大地からも言われれば疑いたくもなる。


「これ以上のモテ期は許さないぞ」


「俺にいつモテ期がやってきたと?」


「その言葉を否定させねぇぞ」


「.......それはそうだな」


 大地から冷ややかな視線が送られる。

 とはいえ、この目はまだ冗談めいたものだ。

 本物はもっと冷たい。なぜわかるって? 玲子さん、ゲンキング、東大寺さんからの視線さ。


 不可抗力とはいえ、女子と話す日々が増えたせいですっかり空気が冷え込んでいる。

 心なしか教室の気温が下がったとさえ感じるほどだ。


「で、どうすんの? 正直、お前がどうにかしないと空気変わらん気がするんだが」


「東大寺さんに話しかけるとかならわかるけど、玲子さんやゲンキングなら話せるだろ?」


「話せても解決できるかどうかは別だろ。それに俺に久川を説得しろと?

 無茶いうな。俺はアイツの事実上の犬だぞ!」


「そんなことを自信満々に言われてもなぁ......つーか、いつの間に犬になったのよ」


「俺の.......心の中でさ」


 なんか勝手に敗北を認めて耽っている男がいるが無視しよう。

 それよりもだ、確かにこのままの空気じゃいけない気がする。

 どうにかしてご機嫌を取らなければ。

 そう思ったのも束の間、俺は女王様に捕まってしまった。


「あなた、最近調子に乗ってるそうね?」


「.......乗ってないです」


「文化祭以降すっかり悪徳領主そのものね。いい加減演技はやめなさい」


「......してないです」


「素でそれってこと?......その肉削ぐわよ?」


「それは是非お願いします」


 放課後、基本俺と先輩しか使わない空き教室で俺は正座していた。

 目の前にはパイプ椅子に足を組んで座る先輩がいる。

 そう、もはや見慣れたいつもの光景である。


 もっと言ってしまえば、怒っている先輩も見慣れてしまったが。

 下手に刺激すると厄介なので黙っておこう。


「今、厄介な女って思わなかった?」


「......思ってないです」


「まぁいいわ。どれだけ厄介な女と思われようとも手にすればこっちのものだから。

 それよりも、自分がどうして家でもないこの場所で正座させられてるかわかってる?」


「それは.......正直、わかり――」


「そう、どこぞの馬の骨に現を抜かしているからよ。

 色んな女子から話しかけられてさぞかしいい気分でしょうね。

 それで? 関わってきた女子の誰がタイプだった? 答えなさい」


「.......」


 相変わらず答えずらい詰問の仕方をしてくる。

 この人、これまでの関りでどうすれば俺が苦しむか熟知してやがる。

 そして、この人こんな俺を見てニヤニヤしてやがる。

 最近Sっ気が強くなってきてない?


「せ......」


「ん?」


「.......先輩が一番好みです」


「とてもわかりやすいお世辞をありがとう。

 つまり、あなたは生粋の幼児体形好きってことね。このペド野郎」


「せめてロリコンって言って.....」


 つーか、今の言葉って間接的に自分の幼児体形を認めてることになるけどいいのか?

 気になるけど、そこをツッコんだら完全にやぶ蛇になるからよしておこう。


「で、今の状況に何か申し開きはあるかしら?」


「正直な話、俺は今の状況をおかしく感じています。

 確かに、男としては悪くない気――」


「じーーーっ」


「......ごほん、頼られるのは人として気分がいいですが、些か唐突に増えすぎなようにも思います」


「つまり?」


「誰かが意図的にこの状況を作り出しているではと」


 この考えはこの状況に疑いを持ち始めてから頭の片隅に抱えていたものだ。

 だって、普通に考えておかしい。


 例え文化祭の影響が残っていたとしても、俺があの時演じた役はキモデブ悪徳領主だ。

 クラスの皆からも気持ち悪いと好評だった。


 嫌悪したものは例え演技であろうとも印象は残るもの。

 そんな俺に対して、異様なほどの話しかけよう、加えて他クラスの女子まで関わってくる始末。


 強いてクラス内の女子だけならここまでの疑いを持たなかったかもしれない。

 だけど、他クラスにまで伝わっているのならさすがに疑う。


「そうね。それであなたは誰を疑ってるの?」


「そりゃもちろん、隼人――」


「それは違うわ」


 バンッと勢いよく扉が開かれ現れたのは玲子さんだった。

 あまりにも自然な話の入りように思わず固まってしまった。

 もしかして入るタイミング伺ってた?


「盗み聞きとは卑しい女ね」


「あなたは相変わらず女王様気どりのようね。

 拓海君に正座させて主導権を握ってるつもり? だとしたら、浅はかだわ」


「あら、随分と達者な口ね。上から目線は身長までにしてくれる? 態度まで許した覚えはないわ」


 相変わらずの出会って5秒でレスバトル。いや、もはや5秒も経過してないか。

 ちなみに、二人にとってはもはや挨拶に等しいものらしい。これ二人が言ってた話。

 慣れ合うのは気持ち悪いとのことだそうだ。俺にはわからん世界だ。


「で、あなたは何の用で来たの?」


「拓海君がそろそろあなたに捕まってそうだと思ってね。

 ほら、あなたってコンプレックスの塊みたいな人だから、どこぞの女子に嫉妬していて、だけどそれを拓海君に悟られるのは癪だから、あくまで説教という形で二人っきりの時間を作ろうとしている......辺りかしら?」


 スラスラと玲子さんの口から言葉が漏れ出ていく。

 「それはさすがに......」と思った俺であったが、永久先輩の方を見てみれば顔を熟れたリンゴのようにして目をそらして狼狽えていた。


 どうやらめちゃくちゃ図星だったらしい。

 そこまで顔を赤くされちゃこっちも意識しちまうって。


「.....こほん、あなたの言い分はわかったわ。話を戻しましょう。

 個人的にはあなたの先の回答には賛成だけど、理由を聞かせてもらっていいかしら?」


「そうね、一言で言えば回りくどい」


 回りくどい? それって隼人が女子を動かしているとしたらの話だよな?


「確かに、最初こそはあの男がまた何かを企ててると思ったわ。

 だけど、その場合あくまで対象は拓海君であり、()()()()()()

 それにあの男は文化祭でクラスの女子を動かした実績はあれど、それはあくまでクラス内でのあの男の評価が拓海君によって変えられたから得られた行動に過ぎない」


「つまり、拓海君の影響が及んでいない他クラスにまで金城君の評価が変わってるのはおかしいと。

 言うのは簡単でしょうけど、それを言う根拠はもっているのでしょうね?」


「ちゃんと唯華に協力してもらって調べたわ。

 そこで得られたあの男の評価は、変わらず大富豪という立場を嵩にかけたプライドの高い男ということのみ。

 もちろん、文化祭の影響でそればかりではない意見も増えただろうけど、そういう意見が多い感じだったわ」


 そうなのか。まぁ、それでもクラス内での隼人の見方が変わっただけいいことか。

 

「けれど、そういう意見が多いってことは、脅して従わせた可能性もあるんじゃない?」


「いや、それはないよ」


 キッパリと否定した俺の言葉に永久先輩が視線を向ける。

 その目には厳しいものがあった。


「......その根拠は?」


「アイツは......隼人は変わると俺と約束した。

 確かに、文化祭でクラス内の女子を利用したことは事実だ。

 だけど、他クラスの女子を脅してまでするような男じゃない。俺はアイツの友達だから」


 その言葉に永久先輩は何か言いたげだったが、大きく息を吐いただけで言わなかった。

 そして、目を閉じながら返答する。


「......わかったわ。その言葉を信じましょう。

 けれど、最初に今の現状を疑ったのはあなたよ。

 それについてはどう説明するつもり?」


「確かに隼人を疑ったけど......思うにアイツはあくまで黒幕。実行犯は別にいる」


「つまり......?」


「勇姫先生......いや、愛名波勇姫が関わってると思う」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


良かったらブックマーク、評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ