第197話 勇姫先生の友人
セミロングの黒に近い青い髪の女子とクリーム色のゆるふわカーブをした女子の二人。
その二人が俺を昼休みに呼び出した張本人である。
そして、この二人は言うなれば勇姫先生の取り巻きである。
「さてと、時間も有限だし私らも食べよっか」
「賛成~」
青髪の女子の名は【椎名春香】。
サバサバとした感じの印象であり、身長は170センチとモデル体型。
その体格とキリッとした目から放たれる眼光は数多の女子を虜にするという。
なんでも噂に聞いた限りでは、他学年の女子に告白されるレベルらしい。
「なぁ、なんでずっと黙ってんだ?」
「正直、何を放したらいいかわからないもんで......後、四股はしてないです」
「否定おそ! ま、そうだろうとは思ってたけど。うん、相変わらず美味っ。
それと別に敬語じゃなくていいよ。私らおなクラのタメじゃん? この際だし仲良くしようぜ」
「わかり......わかった」
「私も同じでいいよ~。それにしても、お弁当可愛いね~。キャラ弁なんて初めて見た~」
次に話しかけてきたのは【柊潤】。
見た目の通りに口調も少し間延びした感じであり、身長が低い代わりに出るところは出てる所謂ロリ体形巨乳というタイプである。
その魅惑のたわわに魅入られた男子は数知れず、同時に屍となった男子も数知れず。
この場合、屍という意味は”告白に断られた男子”という意味ではない。
柊潤という女子は告白を一切断らないそうだが、代わりに付き合っている最中に勇姫先生と椎名さんから陰で審査されているらしい。
それで相手がただの頭に性器がついたサルなら、その二人から漏れなく処刑されるらしい。そういう意味の屍だという。
なので、ルックスだけを見れば漏れなくカーストトップに立っていい逸材だ。
しかし、残念ながら我がクラスは激戦区も激戦区。
見ただけで老若男女を虜にする玲子さんと、男子との距離感が近いゲンキングがいる以上、彼女らがトップに立つことはない。
ちなみに、二人は名前の印象から名前を逆に呼ばれることが多いらしい。
「お母さんが番組の特集の影響で始めたんだ。
無理しなくていいとは言ったけど、本人が至ってやる気だったから様子見。
それに俺のためのお弁当だからあんまり強く言うことも出来なくて」
「へぇ~、可愛いお母さんだね~。にしても、恥ずかしいとか思わない~?
ほら、私下に弟がいるんだけど、お母さんに当たり強くてね~。
私と一緒に買い物してる時でも「近くに寄るな」って。
一緒にいるところを知り合いに見られたくないみたいで~」
「別に言うほどないかな」
その弟さんの気持ちはわからんくもない。
そういう時期ってなんだか知らないけど自立したがる感じというか、大人の自由さに間違った解釈の憧れを抱いて、周りにいることを鬱陶しく感じるんだよな。
俺は精神年齢的にそういうのはとっくに卒業した......というか、死んだことで気持ちが入れ替わったが、もしこの状況が1度目と同じなら似たような行動を取っていたかもしれないな。
「ところで......」
「ん? どした?」
「なんでわざわざ俺を挟んで座ってるんだ?」
先程から妙な窮屈さを感じて仕方がないんだよな。
しかも、拳一個分の距離も無くて非常に腕が動かしずらい。
二人がここまで男子と近くにいるとこなんて見たことないぞ。
そんな俺に対し、椎名さんはニヤリと笑う。
「おいおい、普通男子なら喜ぶような場面だろ。いいのか?
そんなまたとないチャンスをフイにするようなことを言って?」
「全く嬉しくないと言えば噓になるが、あいにく俺はそういうのは苦手なタイプでして」
「なら、離れればいいじゃん」
「それはそれで負けた気がする」
「なにそれ」
「結局は離れがたいってことでしょ~?」
「.......まぁ、そうとも言う」
「なんだただのムッツリか~」
「私らも入れて六股か?」
「人聞きの悪いことを言うな」
うぅ、このギャル特有の距離感の近さは辛いものがあるな。
ゲンキングの場合はどことなく陰の要素を感じてたから大丈夫だったが、この二人は純粋な陽である。
よって、二つも陽の光を浴びれば陰は消滅してしまうもので。
この空気は長く浴びてはいけない。ということで、いい加減本題に入ろう。
この二人が俺を呼び出した理由、それを確かめるために俺はここに来たのだから。
「それで、俺を呼び出した理由は?」
「う~ん、ぶっちゃけ言えばどういう人物か知りたくなった感じ?
ほら、最近勇姫が割と君と関わってるでしょ? だから、気になって」
「誓って勇姫先生との間には何もないぞ」
「そんなのゆうちゃんの態度を見ればわかるって~。それでその名前呼びはなに~?」
「勇姫先生から直々に指定された呼び方。
なんでか知らないけど、やたら構うようになって仕舞には恋愛講座を開くし。
その講師として上下関係をハッキリさせるためのものだと思う」
「あらまぁ~」
「なるほどねー」
まぁ正直、勇姫先生からの積極的な態度にはさすがに心当たりがある。
それは丁度俺が隼人に勇姫先生を引き合わせた辺りからだ。
だから、これも何らかの意図を持った隼人の試練と考えるべきだろう。
とはいえ、そんなことを直接本人に聞いたところではぐらかされるのがオチだ。
だから、勇姫先生からボロを出すのを待つ。
しかし、文化祭の件といい、なんか妙に恋愛と絡めてくるよな。
「二人から見て勇姫先生ってどんな人物なんだ?」
「ん~、そうだなー。一言で言えばプライドが高い。
なまじ自分が周りから可愛いと思われているせいか、行動に自信があるというか」
椎名さんは俺の質問に答えつつ、飯をモグモグ。
そして、ゴクンと飲み込むと話を続けた。
「そのせいで一部の女子からは反感を持たれてるようだけど、それはあの子の裏の努力を知らないから。
私からすればあの子の美に対する意識は賞賛すらするよ。努力も怠らないしね」
すると今度は、柊さんが話始める。
「私は見た目に反して寛容的な人だと思うな~。
ズケズケを言いたいことを言うけど、別に相手の意見を否定する様子はないし。
それに相手が例え嫌いな人であっても、評価できるところはしっかり評価する心の大きさもあるし。
ゆうちゃんはね、とーってもカッコいくて可愛いんだよ」
二人の表情からは嘘を感じられなかった。
まぁ、俺相手に嘘を言ってもどうにもならないだろうが。
しかし、やはり勇姫先生という人物は友達視点からでも出来る人物のようだ。
とはいえ――
「俺が思う勇姫先生は、俺のような一介の男子にとりわけ構う性格でもないよな?」
「そうだね。好きな相手には割と奥手だし。
だからこそ気になったんだよ。そこまで構う君のことを」
「勇姫先生に何か変わったことはなかったか? その、俺と関わってること以外で」
「う~~ん、パっと思いつくほどのものはないけど......あ、でも、ここ最近ちょくちょくスマホを触ってることが多くなったかな。
あの様子的に誰かと連絡してる感じかな~。でもまぁ、ゆうちゃん友達多いし~」
「会話の最中までしてるって感じではなさそう?」
「それは無いかな。スマホを触ってる最中に話しかけたら、それ以降一切触らなくなるし。
前にそのことをそれとなくそのことを聞いたら『スマホ触りながら話聞かれるの嫌だからアタシもやらない』って言うぐらいだし」
自分がされて嫌なことをしない。で、できる女や~。
友人からここまでの高評価を受けるって相当だぞ。
それはそれとして、最近スマホを触ることが多くなったか。
邪推をするなら隼人とのやり取りの線が濃厚になってくるよな。
しかし、つい昨日からはなぜかダイエットの方にシフトチェンジした。
あれか? 正攻法では上手くいかないから、まずは遠回しから始めた感じか?
なんにせよ、もう少し勇姫先生の行動を観察する必要があるな。
「......」
「ん? 口に何かついてるか?」
「全然~。少し考え事をしてただけ~。あ、そうそう、せっかくだしレイソ交換しよう~」
「あ、私ともしようぜ」
そして、レイソ交換をしたぐらいで予鈴が鳴った。
先に教室に戻った二人を見ながら、そっとスマホのレイソの友達登録に目を移す。
中学の頃に登録し今では話さなくなった友達の友達登録を消去したせいか、今ではすっかり女子との連絡先が増えていた。
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
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