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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第185話 一度あることは二度ある

 同じクラスの一人であり、クラスの中でも数少ないギャルこと愛名波勇姫に呼び出された俺は、言い得ぬ不安を抱えたまま放課後を迎えようとしていた。


 一難去ってまた一難。悩みが解決されたかと思えば、再び別から悩みが舞い込んでくる。

 こんなことが前にもあったような気がしなくもない。どうして俺なのか。


 呼び出される理由も見当つかない。

 愛名波さんとはたぶん二度目が始まってから一度も話していない。

 つまり、お互い顔と名前は知っていても完全初めましてなのだ。

 そんな相手に一体何を頼もうというのか。


 一旦落ち着いて考えてみよう。

 そもそもギャルの行動原理なんてわからない。そこから前提とする。

 愛名波さんが俺に呼び掛けたということは、俺もしくは俺の周囲に関する話だろう。

 でなければ、このように話しかけたりしない。


 そして、わざわざ俺を呼び掛けて頼みに来る行動力、さらに頼む際の圧倒的な塩対応。

 それを鑑みるに目的は俺というより俺の周囲にあると考えるのが妥当だろう。

 さらにギャルの行動力を活かさず、わざわざ俺を経由するあたり.......もしかして目的は――


「拓ちゃん、帰らないの?」


 突然声をかけてきたゲンキングにビクッとする。

 深く考えすぎるのは禁物だな。話しかけられたらビックリする。


「え? あ、あぁ、少し用事があってね。何か用?」


「いやさ、また久々にゲーセンの格ゲーがやりたくなってさ。

 だから、また前みたいに拓ちゃんをボッコボコにしたくて」


「サンドバック前提に誘うか普通。斬新すぎるだろ。

 だけど、さっき言ったみたいに用事があるからまた今度」


「長くなりそう? そうじゃないなら、待ってて――」


「唯華?」


 机に前のめりになって聞いてくるゲンキングの肩に冷たい手が置かれる。

 瞬間、彼女はまるでマグロの冷凍庫に長時間入った人のように顔を青ざめさせてガタガタと体を震わせ始めた。

 そこに追撃とばかりに氷の女王の冷たい言葉が浴びせられる。


「無理強いをしてはいけないわ、唯華。

 そんなに暇を持て余しているなら私に付き合いなさい」


「れ、レイちゃん.......? あの、その、今日は時間が空いてるようだしゲームの撮り溜めでもしようかなと思ってて――」


「用が無いのよね?」


「.......はい」


「それじゃ、行きましょ」


 そして、ゲンキングは連行された。

 その後ろ姿はニュースで見る逮捕されたような犯人みたいだった。南無阿弥陀仏。

 そんな風に手を合わせていると後ろをチラッと振り向いた玲子さんからウインクが。

 どうやら俺の気を遣って引き離してくれたらしい。ありがたや~~。


「.......さて、俺も覚悟を決めるか」


 俺が席を立ちあがると、後ろからほぼ同タイミングでガタッとした音が聞こえた。

 気のせいかと思い、そのままスルーして廊下に出る。

 それから、屋上までのルートを進んでいくが、その道中妙に背後から視線が飛んでくる。

 チラッと後ろを振り返れば、何かがサッと隠れた。


「......」


 人の姿は見えない。しかし、曲がり角から見覚えのあるピンクのテールが見えている。

 体隠して尻隠さずならぬ体隠してテール隠さず、ってか。

 もしかして、俺が本当に屋上に向かうかどうか確かめてるのか?


 俺は気づかなかったフリをしてそのまま歩みを進めていく。

 すると、背後の視線も相変わらず続いた。

 そして、俺が屋上の階段まで差し掛かったところで、背後を振り向いた。


「もう信じてもいいんじゃないか? 心配しなくても屋上行くって」


 そう声をかけると案の定愛名波さんがひょっこりと現れた。

 ついでに冷めたような声色で返答した。


「ただのクラスメイトなんだから信用無くて当然でしょ?

 先に屋上行って待ちぼうけされても嫌だし。

 けどまぁ、ちゃんと屋上に向かったことは評価してあげる。少しは信じてもいいかもね」


 上から目線の物言いだな。前もこんなんだった気がする。

 殴ってきた野郎どもの方が印象強くてうっすらとしか覚えてないけど。

 俺は「それは良かった」と適当に返答し、屋上に出た。


 外を出れば見慣れた茜色の空が待っていた。

 あと数十分もすればあっという間に暗くなるだろう。

 そんなオレンジ色の日差しを浴びつつ、僕は愛名波さんに話しかけた。


「それで何の用?」


「なに? 自分がチヤホヤされるような立場になって上から目線? ホントムカつく」


 ただ聞いただけなのに純度百パーセントの毒が返ってきた。

 え、嘘、今の言い回しって他の人からそう映るの? 気を付けなければ。


「普通に聞いただけなんだけど、気分悪くしたならごめん。

 それじゃ改めて、何の用か聞かせてくれる?」


「あんたにはアタシの恋路の協力してもらう」


「......」


 今、一瞬凄まじいほどの拒絶反応が出た。

 まさかこんな展開が二度も発生する時が来ようとは......。

 冗談かと思ったが、声も顔つきも冗談ではなさそう。

 とりあえず、東大寺さんみたいな反応じゃないだけマシだ。

 が、なんにせよそういう展開からはもう遠ざかりたい。


「話はわかった。だけど、申しわ――」


「それじゃ、早速スマホ出して。あんたの入れるの癪だけど、連絡取れないのは不便だし。

 それから、アタシからの返事は一番に反応しなさい。

 電話はツーコール以内に出ること。嘘つかないこと――」


「ま、ちょっと待って! なんでもう協力するみたいな流れになってんの!?」


 俺はいつの間にか発生した流れを止めに入る。

 その瞬間、愛名波さんの眉間に一気にしわが寄る。

 一発で機嫌が悪くなったとわかる顔だ。


「は? もしかして、断るつもり? 所詮面白がられて一緒にいるだけの男が何様のつもり?

 いい気になってんなよ、デブ。あんたなんて運だけでその場にいるだけのくせに」


 おぅ、こいつぁ猛毒だったぜ。

 久々の鋭い刃の言葉にメンタルがゴリゴリ削られるのがわかる。

 にしても、今の言い回しまるで優遇されてるモブ女子に嫉妬するカースト上位女子みたいなセリフだな。

 しかし、普通男相手にそれ言うか? 嫉妬心剝き出しすぎるだろ。


「いや、別にいい気になってるつもりは――」


「あんたなんか隼人君の隣に相応しくないわよ! 願わくばさっさと消えてほしいもんよ!」


 あ、違う、ただの厄介ヲタクの類だったわ。って今隼人って言ったか?

 いや、驚いたっていうか......概ね予想通りの内容ではあるんだけど、それでも確信までは持てなかったというか......え、もしかしなくとも隼人狙い?


「ちょちょちょ、ちょっと待って」


「ちょが多くてキモい。ハッキリ言えよ」


 返しがいちいち猛毒すぎてキツい。

 だが、俺がこれまで乗り越え成長してきたメンタルなら大丈夫!......なはず!


「まず確認したいんだけど、愛名波さんの好きな人は金城隼人でいいんだな?」


「は?」


 短く帰ってきた言葉に一瞬違うのかと思ったがそうではなかった。

 愛名波さんは突然の言葉に顔を真っ赤にしてフリーズしただけだった。

 もしやこの人、人に好きな人を明かさぬまま手伝わせようとしてた?


「は? は!? ちょ意味わかんないし、何言ってんのコイツ。

 はー、そうやって決めつけで言ってくるそういうところがキモいんだけど!

 それにそこでなんで隼人君の名前が下に出てくるのがマジでイミフなんだけど!!」


「いや、今さっき自分で隼人の名前出してたし、それに恋路の手伝いって言ってたから」


「......っ!」


 そう言ったらさっきまでの動揺が嘘のように愛名波さんはピタッと止まった。

 そして、すっごく震えた声で涙目で睨みつけた目で言ってくる。


「......そ、そうよ! 好きだけどだからなに?」


 あ、この人、案外中身も可愛いタイプかもしれない。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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