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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第142話 水族館に到着したはいいんだが

「――へぇ、それじゃ琴ちゃんは水族館に行くのは小学生ぶりなんだ」


「遊園地ぐらいなら何度か行ったことあるんだけどね。

 でも、友達と一緒に行くという意味では初めてって感じになるかな」


「それならわたしも一緒! 薊君は?」


「俺は空太と昔に一緒に行ったことあるな。

 まぁ、親同伴だから、そういう意味では俺も初めてだけど」


 電車に乗ってしばらくの間、目的地の最寄り駅まで俺達は話しながら時間を潰している。

 丁度席も空いていたことだし、東大寺さんとゲンキングに座ってもらって、男陣はつり革に手をかけながら立っている。


 この会話の中、俺は不審に思われない程度に東大寺さんを注意深く観察していた。

 しかし、彼女に目立っておかしな行動をする感じは無しない。


 強いて言えば、テンションのふり幅がまだ小さい気がする。

 だが、何も常にテンション高めというわけじゃないし普通の時はこんな感じだ。

 だから、今のところは“わからない”ってのが俺の気持ちだ。


「で、拓海は何見たい?」


 大地が問いかけてきた。やべ、話を聞いてなかった。

 しかし、推測するに先ほどの会話の流れからすれば水族館ネタであることはわかっている。


「そうだな。俺はクラゲかな」


「クラゲかぁ~。確かに、見た目が可愛いし、種類によっては光ってて奇麗だよね」


「そうだな。それじゃ、見たいものリストに記録しとくか」


「オッケー、メモっとく」


 ゲンキングがスマホのメモ帳で見たいものリストを作成する。

 その中にはイルカショーやペンギンなどメジャーなものから、タツノオトシゴやふれあいコーナーなども記入されていた。

 さて、俺の動揺もさすがに落ち着いてきた頃間だ。

 正直、東大寺さんがどう考えてるか分からないが、俺も俺で動くこととしよう。


 本来、これは大地とゲンキングの関係性の疑いを晴らすものだった。

 だが、俺が東大寺さんに大地の存在を遠回しに伝えているようなものなら、むしろそっち方向に寄せて動いた方が良いだろう。

 それに東大寺さんは俺の考えに乗ってくれてるってんだから。


「そういや、俺と大地とゲンキングは基本的に関わりが多いから距離感を気にすること少ないけど、東大寺さん的には若干アウェーだよな。

 それこそ、大地と東大寺さんなんて同じクラスメイトではあるけど、面と向かって話すのは初めてだったりするんじゃないか?」


 そんな俺の東大寺さんに対する問いかけに大地はピクッと反応する。

 なぜなら、俺は既に大地から東大寺さんと関わりがあることを聞かされているからだ。

 しかし、それをあえて知らない体で質問する。

 つまり、意図的に大地に関する事柄を質問することで、脳裏の大地の印象を強めようって作戦だ。


「いや、前に言ったと思うが、俺は東大寺さんとは体育祭で関わりあるぞ」


 おいコラ、バカ大地! そこで天然を発揮するんじゃない!


「あ、あれ? そうだっけ」


「まぁ、うちの場合は夏休み前と後で印象がだいぶ変わったからね。

 前の芋っぽい感じの方じゃ印象が薄いのは仕方ないと思う」


 ほ、本当に話に合わせてくれた。

 俺が東大寺さんのビフォーアフターについて知っていることを彼女も気づいてるはずなのに。

 これは本当に俺の意図に合わせて考えてくれるということか?


「そ、そんなことねぇよ! 少なくとも俺は印象薄いなんて思わなかったぜ!」


 そうだ大地! ナイスフォロー!

 お前はただ東大寺さん特攻の褒め殺しマシーンになれ。


「そうそう琴ちゃんはめっちゃ可愛くなったよね。もともと素材も良いと思ってたし。

 そこで問題です。東大寺さんの頑張りポイントは一体どこでしょう!」


「えぇ、唯華ちゃん!?」


 そこへさらにゲンキングからの巻き込み型話題拡散攻撃。

 クイズ形式という形を取ることで特定の誰かに褒めるという行動をさせる。

 当然、この場では大地なのだが、その見事なバトンを俺は華麗に親友に渡す。


「う~ん、変わったと言ったら全体的にとしか......大地は何かわかるか?」


 この言葉を先手に取ることで東大寺さんのことが好きな大地は答えることを余儀なくされる。

 それはもはや男の心理を利用したものだ。

 好きな相手を褒められないほど情けない男でいたくないという心理をな。


「そ、そうだな......まず姿勢が良くなった気がする。

 それに相手の目を見て話すようになったし、何よりずっと一生懸命に努力してる」


 ひゅ~♪ さすがイケメン。少し照れながらも言ってのける姿勢最高だぜ!

 むしろ、少し照れて言っているからこそ言葉の本気度が伝わってくる。


 その言葉は流石に東大寺さんにも響いたのか「そこまでゆわんでも」と恥ずかしがっている。

 どうだこれが我が親友の言葉だ。俺なんかよりも絶対に良いだろ。


 とはいえ、この行動を取っている自分を誇らしく思うと共に後ろめたさもある。

 嫌われるための行動をすると覚悟したのにこんな縁の切れ方でいいのかと。


「あ、次の駅で降りるよ」


 車両内アナウンスに気付いたゲンキングの声にハッと意識を取り戻す。

 それから数分後、俺達は無事に水族館へ辿り着いた。


「ほぉ~、休日だからか賑わってるな」


「それじゃ、早速行こうか。ほら、二人とも早く」


「うん! 今行く!」


 ゲンキングに呼びかけられた東大寺さんが足早に移動していく。

 その三人の後ろ姿を捉えながら、俺も駆け足で移動して足並みを揃える。


 水族館に入った俺達は予め話し合っていたリスト通りに見ていくことにした。

 館内のパンフレットを片手に持ち、近くの水槽から見回る。


 久々の水族館に俺も少しだけ目が奪われた。

 魚が水槽という名の海の中で暮らしている姿をまじまじと観察できる貴重な機会だ。

 過去の懐かしさも相まってつい作戦のことは忘れそうになる。


「拓ちゃん」


 小声でゲンキングが話しかけてきた。

 チラッと周囲を見て、少し離れた位置に東大寺さんと大地がいるのを確認すると、水槽を見ながら話し始める。


「とりあえず、プランとしてはクラゲエリアで抜け出すことにしよう」


 抜け出すとは、意図的に大地と東大寺さんを二人きりにさせるということだ。

 もともと疑惑の解消が目的にもかかわらず、すぐに状況を判断してアドリブが出来るのは流石ゲンキングと言える。


「そのタイミングはいつにするんだ?」


「すぐにやってもバレるだけ。だから、昼からのイルカショーを見た後、頃合いを見てクラゲエリアの方へ話題を誘導する。それが合図」


「了解。それまでは悟られずに自然体に」


「オーケー。任せて」


 俺達は短い会話で話を済ませると、二人のいる方へ合流する。

 しかし、そこにいると思っていた東大寺さんの姿はない。

 いるのは一人水槽を眺めている大地だけだ。


「あれ? 琴ちゃんは?」


「お花を摘みにってやつだ」


「まぁ。薊君がそんな上品な言葉を知ってるなんて」


「俺だってそれぐらい知ってるわ!」


 ゲンキングが大地を弄り始めた。

 反応が面白いのかたまにこんな光景を見せる。

 そら東大寺さんに疑われても仕方ないと思うが......まぁ、仲がいいのは良いことだな。


*****


―――女子トイレ内


 本来ならそこは用を足すために使われる場だ。

 だが、時として意図的に一人きりの状況を作りたい場所として使われることもある。


―――プルルルル、プルルルル......ピッ


「もしもし、莉子ちゃん?」


『......どうやら無事に水族館まで辿り着いたようね。それでこれまでの状況を説明して』


 琴波は親友の莉子に駅前での出来事や電車内の会話とこれまでのことを話した。


『なるほど。やはり相手の狙いはそういう感じね』


「そういうって......本当にそういう?」


『十中八九ね。ま、それに関してはこの後の方がより実感を持てると思うわ。

 で、琴波の中で早川君の印象は変わって見えた?』


「ううん、相変わらず無理しとーごと見えた」


『でしょうね。似合わないのよ、ああいうタイプは。

 で、もう一度確認するけど、戦う覚悟が出来たのよね?』


 その言葉に琴波は力強い目で頷いた。


「うん!」


『ハァ、面倒だけどあんたのバカなりのバカ正直は嫌いじゃないわ。

 言われた通り、あんたを戦場の舞台にのし上げて上げる』

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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