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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第141話 嬉しいが気まずい時間

 俺が東大寺さんに最低な発言をしてから、早くも休日となった。

 今日は水族館に行く日である。

 予めゲンキングからは大地が来ることを確認しているので、後は東大寺さん次第だ。

 ちなみに、大地には東大寺さんが来ることは伝えていない。


「よう、拓海。相変わらず早いな。」


 いつもの集合場所である駅前噴水で待っていると大地が声をかけてやってきた。

 やはりイケメンというのは季節問わずイケメンなんだな。


「待たせるよりかはいいと思ってね。言うて、大地も集合時間前じゃん」


「まあな。前の俺は若干時間にルーズだったが、最近はそこら辺の意識改革もしてる」


 それが誰のための影響かなんてのは考えるまでもないだろう。

 大地と少しの間話していると、今度はゲンキングがやって来る。


「おっはー、待たせちゃったかな?」


「いや、そんなことないぞ」


「こっちが勝手に早く来て話してただけだから」


 いつものメンバーが揃った。

 といっても、意外にもこのメンツで行動したことは少ない。

 大抵はもうちょい大人数だからな。

 なんかまとまって行動してる気がする。


「にしても、まさか元気が商店街のクジ引きで水族館のチケットを当てると思わなかっただぞ」


 ということになっている。もちろん、俺とゲンキングの自腹だ。

 きっと今頃内なるゲンキングは少なくない出費(ダメージ)に吐血してるだろう。


「ま、まあね! わたしの幸運にかかればこんなもんよ!」


「ハハハ、かもな。んじゃ、揃ったことだし出発――」


「あ、ちょい待ち! 飲み物を買うの忘れてた。少しだけ待ってて」


「あ、わたしも!」


 俺は建前を述べて大地から離脱すると、意図を読み取ったゲンキングが話に乗った。

 大地から「あんまりちんたらしすぎんなよ~」という忠告を背に受けながら、俺達は近くの自販機に移動した。


「ねぇ、拓ちゃん。昨日レイソで言ってたことってホント?」


「あぁ、ホントだ。嫌われるつもりで言った。流石に大地のことは言わなかったけどな」


 ゲンキングに伝えたことは当然俺が東大寺さんと話した時のことだ。

 協力者であるゲンキングが事情を知らなければ、いくらアドリブが効く彼女でも判断に困るだろう。

 まぁ、現在進行形で俺に対して非常に困惑した目を向けてきてるんですけどね。


「薊君のことを言わなかったって......ここに来たらそんなの言ってるようなもんじゃん!

 っていうか、そもそも拓ちゃんだから来そうな感じだったのに、こんなのわたしだったらまず気まずいしわけわからないしで来ないよ!!」


「だろうな」


「だろうなって......それってわたしが課金を我慢してまでのこの出費の意味は一体なんなのさ」


「それについては全額俺が負担するつもりだ」


「いや、そういう問題じゃなくて......ハァ」


 流石にゲンキングにも呆れられてしまったか。

 しかし、俺は東大寺さんに正直でありたかったし、大地の応援だってしたかった。

 その結果がこれだ。これが俺が示す嫌われる覚悟。

 俺自身だって東大寺さんがここに来ると思ってない。


「とりあえず、長居しすぎるとバレるから戻るか」


「まぁ、そうだね......ん?」


 俺が自販機から買ったジュースの蓋を開け、妙に乾燥した喉を潤す。

 買うつもりは無かったが、なんだか無性に甘いものを取りたくなった。

 あんまり味がしない。慣れないことをして気が滅入っているのかも。

 それに少しだけストレスのはけ口を食に向けてしまっている。


「ねぇねぇ、拓ちゃん......ねぇってば」


「どうしたんだよ、ゲンキング――」


「見て、あっち」


 肩を揺さぶってくるゲンキングの方を見て、さらに指さす方向へ視線を向ける。

 すると、そこには大地の背中しか映っていない。

 いや、よく見れば大地の両足の間から別の人物の足が見える。え、まさか......?


 二人で急いで戻ってみれば、案の定そこにいたのは東大寺さんだ。

 しっかりとお出かけ用コーデと言った感じで、オシャレな服で大人びた感じに着飾っている。

 え、なんでここに東大寺さんが......!?


「おいおい、拓海! まさか東大寺さんも誘ってたなんてな!

 誘ってるなら言ってくれてもよかっただろ! 突然のサプライズにビックリしたぜ!」


 テンションを舞い上げた大地は俺に肩を組んではしゃいでいる。

 そりゃ、東大寺さんのことが好きな大地からすればこんな展開はサプライズだろうけど。

 サプライズという意味ではこっちもなんだぞ!?


「なにキョトンとした顔をしてるの? 早川君。そっちが誘ってくれたじゃん」


「そ、れはそうなんだけど......」


 俺だって間違いなく思う最低な発言をしたんだぞ!?

 それを踏まえてここに来るなんて......どんだけのメンタル強者だよ!

 そりゃ、来てくれた方が良いとは思ってたけど、あんな気持ちを踏みにじるような仕方をしておいて来るとは普通思わないじゃん!


「拓ちゃん、これは一体どういうこと!?」


「い、いや、俺にも何が何だかサッパリ」


「ま、まぁ、来たってことはとりあえず作戦は続行な感じだよね」


「そう、なるな.......」


 ゲンキングで小声で話していれば、何やら東大寺さんから妙な視線を感じる。

 その意味することがわからない。つーか、マジで東大寺さんはなんで来た!?


「そんじゃ、とりあえず行こうぜ! 早く行かないと遊ぶ時間がなくなっちまう」


「そ、それもそうだな。行こうか」


 一人状況を知らない大地がテンション高めに声を掛ければ、その声に合わせて俺達は動き出す。

 先行する大地に、ゲンキング、俺と続いて行けば、最後尾の東大寺さんがスッと俺に近づいてきた。


「早川君が何ば考えとーかわからん。やけん、早川君ん考えに乗って上げる」


 俺の耳元でサッと言葉をかけると、すぐさまゲンキングへと話しかけに行った。

 突然声をかけられたことにキョドっている彼女の姿を見ながら、俺は東大寺さんから聞かされた言葉に動揺していた。


 いや、これは仕方ないことだと思ってもらいたい。

 なぜなら、東大寺さんは自ら俺がこれからしようとしていることに合わせてくれるというわけだ。

 つまりは、俺が大地を相手にするように仕向ければ、彼女は親友の相手をしてくれるということになる。


 しかし、東大寺さんが好意を寄せているのはたぶん俺だ。

 いや、そもそもこの前提が間違っていたのか?

 東大寺さんのあの愚直さは親しくなった相手なら誰だってそうということ?


 もしかして、俺は東大寺さんという人物を見誤っていたのか?

 自分の考えと行動が直結してる感情ジェットコースターという人物が東大寺さんだと思っていた。

 だが、今の彼女はなんだか妙に大人しい感じがする。


 これは少し自分の東大寺さんに対する考えを見直す必要があるのかもしれない。

 もちろん、今のが単なる意趣返しという感じもある。

 だが、あの喜怒哀楽が激しい彼女が数日でメンタルリセットして来れるのだろうか。


「おい、拓海! なにボーッと突っ立ってんだよ」


「拓ちゃん行くよ!」


「......」


 おっと思考に没頭しすぎて足が止まってしまっていた。

 だけど、今のも声をかけてくれた大地とゲンキングに対して、東大寺さんは流し目で俺の様子を確認したぐらいだ。


 これはなんというか“普通”じゃないというのはなんとなくわかる。

 だけど、あまりにも突然すぎて今は冷静に判断できそうにない。

 とりあえず、俺は俺の取るべき行動をして様子を見ることにしよう。


「おう、今行く!」


 俺は足早に皆の所へ移動した。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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