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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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137/321

第137話 予定通りではある......一応

「―――と、これ以外に意見はある?」


 ただ今、クラスの皆で文化祭の出し物について話し合っていた。

 そこで出た内容は――


 ・お化け屋敷

 ・変装喫茶

 ・クラス演劇

 ・謎解き脱出ゲーム

 ・創作物展示


 最後のが変わり種ではあるが、概ねド定番を突くような内容だった。

 もちろん、他にも色々意見は出たが、被ったり似たりした意見を統合した結果が先の五つの候補だ。


 ちなみに、この中で俺が狙っているのは「クラス演劇」である。

 その理由はもちろん今作戦行動中の大地青春キューピッド作戦の効果が一番期待できるからだ。


 もともと大地は文化祭実行委員という立場で、同じく委員となった東大寺さんと組ませることで仲を深めさせるのが目的だった。


 しかし、それが叶わなくなった今、別のやり方で距離を詰めなければいけない。

 ゲンキングとの作戦もあるが、それはあくまで彼女と大地の関係性の解消が目的だ。


 故に、如何にして大地と東大寺さんの距離を近づけるかという課題に対し、クラス演劇というのは非常に効果的だと思う。

 なぜなら、その演劇には必ず役割が与えられるからだ。


 どこかの本で読んだのだが、人間は役割を与えられるとその役割に精神や思考が近づいていくという。


 例えば、演目が「ロミオとジュリエット」として、その主役を大地と東大寺さんが演じることになったのならば、二人の関係性は演劇という性質も合わさってググッと近づくだろう。


 もちろん、他者と関わるという意味なら、お化け屋敷や変装喫茶でもいいだろう。

 だが、それだとどうにもビジネスフレンド的な形で止まってしまう気がする。

 それに二人だけに関わる特別感というのもあまりない。


 というわけで、個人的にクラス演劇をしたい。

 のだが、それはあくまで俺個人の都合であって、仮にやるとなれば出し物としての難しさが出てくる。


 例えば、衣装問題。これは作るのか、もしくは誰かから借りるのか。

 演劇である以上、セリフを覚える必要があり、それに合わせて動きを合わせる全体練習が必要だ。


 舞台に凝るなら小物や舞台装置だって必要になるだろう。

 そもそもの話、演目は何にするかという話し合いもあったか。

 そして何より、出し物が最短で決まったとして練習期間は1か月ちょっと。


 漫画やアニメではあっという間に過ぎ去る空白の時間。

 だいたいそういう系のフィクションは登場人物のスペックが高すぎるので、短い期間でも最高のパフォーマンスを見せるものだ。


 しかし、現実はそう簡単にことが及ぶものではない。

 人間のモチベーションなんてたかが知れてるし、全員が協力的である可能性もない。

 そんな中で全員が一丸となって作り上げないといけないクラス演劇が選ばれるはずがない――


「......えーっ、多数決の結果、このクラスではクラス演劇をすることになりました」


 あっれぇぇーーーー!?!? おっかしぃっぞぉーーーー!?!?

 どうしてこうなった!? いや、好都合なんだけど、あまりにも道理に沿わない。


「東大寺さん」


「ひゃっ!」


 小声で話しかけたら普通にビックリされた。

 耳を抑えながら真っ赤な顔でこっちを見る。ごめんて。


「おいおい、目の前で堂々とイチャつくとは、さすが勇者メンタルだな」


 隼人から強烈に嫌なヤジが飛ぶ。

 チラッと見てみれば、めっちゃ邪悪な笑みしてた。

 アイツ、俺と大地の関係を知っててあえて言ってきたな。

 相変わらず性悪な奴め。


 幸い、大地が気にしてる様子ではなかった。

 ただし、苦笑いだったが。

 すまん、大地よ。さっさと用件を済ませるから。


「さっき、多数決で俺が挙手している人の数を数えていた時、隼人はスマホを弄っていたか?」


「してなかったと思うけど......どうしてそんなことを聞くの?」


「まぁ、ちょっとした疑いを晴らしたいだけさ」


 俺はてっきり隼人がクラスのグループラインとかを通じて意志統率をしたのかと思ったが......どうやら違うようだ。

 たまにアイツ、俺にとんでもない試練を課すことがあるから、今回の結果はそれだと思ったんだが。


「大丈夫よ、拓海君。舞台は必ず()が成功させるから」


 不意に立ち上がった玲子さんが自信たっぷりにそんなことを言う。

 大女優だった玲子さんがいれば百人力だと思うが、なぜそれを今言う?

 いや、やる気になってくれてるのは非常に助かるんだけどね。


「ありがとう。玲子さんがいれば百人力だと思うよ。

 だけど、まだ演目も役割も何もかも話し合ってないから――」


「台本ならあるわ。ツインテールおチビさんに書かせたから」


「なぜもうある?」


 それにツインテールおチビさんって。

 玲子さんの知り合いでチビと言える相手なんて永久先輩しかいないじゃん。

 え、永久先輩も噛んでるの?


 つーか、これまでの流れを振り返って見ると、玲子さんが主導で動いていたように感じるけど。

 いや、いくら時々奇行をする玲子さんとはいえ、クラスメイトの目がある中でこんな堂々と動くタイプではない。必ず裏がいる。


 俺はすぐさま黒幕になりそうな一人に目を向けた。

 すると、隼人がこっちに向かってあっかんべーとバカにしたような態度を取っていた。

 こ、こいつ......まさかこの結果を見越して、否、この結果になるように周りを動かしたのか!?


「勇者よ、ここからはお前が選択を決める番だ」


 偉そうに頬杖をついて隼人がそんなことを言ってくる。

 つまり、今回の隼人は「テメェの望み通りの展開にしてやったんだから、後は地力で望みを叶えてみろ」と言いたいんだな。

 いいぜ、それが試練ならやってやるよ。


「一応、これに反対意見が無かったのなら、俺はこのまま話を進める。

 だけど、発言主が玲子さんでも遠慮せずに何かあるなら言ってくれ」


 まぁ、本人がいない場所なら未だしも、いる場所で言わせるのは酷だと思うが。

 いくら玲子さんがやる気でも皆がそうでないのなら、これから生まれる文化祭準備期間というのが苦痛の時間になってしまうからな。


 全体を見渡したところ特に何か不満を抱えつつも声を閉じている人はいなかった。

 どっちかっていうと無関心って感じが一部いたけど、まぁ働いてくれるならそれでいい。


―――自宅


 俺がいつも通り鉛よりも重量感のある肉体を上げ下げしていると、スマホの方にピロンと着信があった。


 休憩がてらに通知内容を確認する。

 どうやら送ってきた相手はゲンキングのようだ。

 内容は大地の予定に関すること。


「返答に時間がかかったのは大地が部活の予定を確かめてたからか。

 で、今週末の日曜日なら都合が空いてると......ふむ」


 となると、俺とゲンキングはどうせ空いてるだろうし、後は東大寺さんの方か。

 しっかし、東大寺さんに俺から予定を聞くってなんか勘違いされそうじゃないか?


「ついでに東大寺さんの方も聞いてくれっと」


『既に話はしてある。で、薊君の方にも伝えてあるから、二人は偶然を装って来て』


 これまた用意周到なことで。それだけ必死にゲンキングはあらぬ誤解を解きたいのか。

 大地なら十分優良......とか思ったけど、根が陰キャで面倒ごとを嫌がるゲンキングとしては、大地の矢印が東大寺さんに向いているって状況をかき回したくないよな。


「とりあえず、これでこっちの方は片付きそうだよな。後は......」


 俺はそっと目線をベッドの上に移す。

 そこには演目の台本の雛型となる冊子が置かれていた。

 俺は短い手を伸ばし、それにそっと手を伸ばし掴む。

 まだタイトルのついていない台本に目を通した。

 どうやら内容の校正を俺にして欲しいらしい。


「.......うっわなにこれ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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