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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第136話 俺もだいぶクラスに馴染んできたみたい

『で、あのメールは何だったの?』


「俺、ゲンキングの恋のキューピッドになったかもしれない」


『はい?』


 東大寺さんが暴走したその日の夜。

 俺が送った「緊急会議!」という内容に反応したゲンキングが電話してきた。

 俺は鉄アレイを上げたり下げたりしながら、今日の放課後での話をした。

 全てを話し終えると、電話越しから重たいため息が聞こえてくる。


『......ハァ、なるほど。最初の言葉はそういう意味だったのね。

 前から琴波ちゃんは猪突猛進タイプと思ってたけど、まさかここまでとは。

 たぶん、自分にとっても都合のいい展開だからってことかな』


「都合のいい展開?」


『ううん、なんでもない。気にしないで』


 そんなことを言われると気になるんですが。

 まぁ、なんとなく考えられそうなことはあるけど、言われた通り気にしないことにしよう。


『にしても、まーた面倒なことになったな~。

 薊君も何も全く関われないってわけじゃないだろうに』


「そうだろうけど、予選が近くなれば任せっきりになることが多くなるだろう?

 たぶんだけど、大地もそうなることがわかってて無責任なことは言いたくなかったんだろうよ」


『気持ちはわかるけど......う~ん、このままじゃより一層距離感が近づくからな~』


 確かに、東大寺さんはゲンキングが薊君に好意があるという前提で動いている。

 二人は俺がよくつるむメンバーでもあって、互いの適切な距離感も理解している。

 一見すれば、その二人の自然な感じが付き合ってるんじゃないかという印象を与えるかもしれない。


 少なくとも、思春期真っ盛りの今の時期は些細な何かでそのような噂が出てもおかしくない。

 恋愛関係の話っていうのは良くも悪くも人気の話題(ジャンル)だしな。


「これからどうするか。何かいつの間にか担当が逆になってる気がするけど」


『それは拓ちゃんの落ち度でしょ。今更そんなこと言っても仕方ないじゃん』


 それは全くごもっともな意見です。はい、完全に想定を誤ってました。


『確かに、変な展開になっちゃったけど、まだ完全に確定したわけじゃないんでしょ?』


「そうだね。本人も疑ってる感じだし」


『だったら、目の前で違うってことを証明してやればいいんだよ。

 薊君だって状況を伝えたのなら協力してくれるだろうし』


 まぁ、それぞれ個々に伝えたとはいえ、俺もゲンキングも大地本人に依頼されたわけだし。

 適当に理由をつけて今は協力してことに当たってるって感じにすればいいか。


「ってことは、これから学校生活で“友達ですよ~”ってアピールするのか?」


『長期的に見ればそれでいいかもしれないけど、突発的暴走ガールの琴波ちゃんの場合じゃ何かあってからじゃ遅いと思う。

 まぁ、その突き進んだ果てに見える未来を想像するなら、このまま突っ走っても琴波ちゃんの望みが叶うとは思わないけど。

 でも、あのセコンドが何を考えてるかがなぁ......』


 すっごいゲンキングの言ってる意味がわからない。

 彼女は今の現状で一体どこまで見えてるのだろうか。

 是非とも俺にもビジョンを共有して欲しい所だ。


『だけど、傷つく前に諦めがつくならそっちの方がいいかもしれない。

 もちろん、こっちの勝手な都合であることはわかってるんだけどね......うん』


「つまり......?」


『手っ取り早く行動しよう。今だったらまだ薊君の方も時間取れるかもしれないし』


 それから、俺はゲンキングから作戦内容を聞いた。


―――翌日


 もはや習慣となった朝の教室掃除。

 今では宿題をやり忘れたとかで朝早く学校に来たクラスメイトが手伝ってくれて、掃除もあっという間に終わってしまう。


 そして、俺が掃除を手伝ってくれた対価として勉強を教えてると、朝早くからゲンキングがやってきた。


「拓ちゃん、ちょっといい?」


「あ、うん」


 ゲンキングに呼び出され、まばらに生徒がクラスに向かって歩く廊下にて話しかけられた。


「拓ちゃん、とりあえずわたしの方から薊君に事情を話して、それから予定日を聞き出してみるからその後に行動してよ。

 琴波ちゃん、自分にとって衝撃的な内容を先に聞くとその後話聞いてなかったりするから」


「それはなんとなく承知してる。うん、気をつけとく」


 まさかいつもの登校時間より三十分も早く登校して忠告してくるなんて。

 ゲンキングにとってもそれだけ東大寺さんは行動が読めないってことか。


 それから、俺とゲンキングはいつも通り互いに接触せずに日常を過ごす。

 今更ながら、このことに玲子さんや周りの皆が気にしないんだな。

 まぁ、隼人みたいな推理力高めの人達ばっかだから察しがついてたりするのかな。


―――6限目


 放課後近くになってもゲンキングからの連絡は来ず。

 連絡を待ち続けれいれば気づけばこんな時間になってしまった。

 今日は授業が6限目まである日だ。

 しかし、その時間は授業ではなく、HRのような時間。

 つまりは、クラスが自主的に活動する時間ってことだ。


 そんな時間に決めるのは文化祭に向けての出し物。

 この学校では飲食店やらなんやら色々許可が出ているが、それが出来るのは早い者勝ち。

 もし文化祭実行委員会に受理される前に他クラスで被ってしまえば抽選になる。


 せっかくの文化祭ならやりたい出し物をやるのが道理だろう。

 だからこそ、早めにこの時間を作り、クラスでの意見を集めることにした。

 幸い、このクラスは協力的だ。

 それに仮に希望の出し物じゃなくてもやるとなったらやってくれるはず。


「んじゃ、これからは勇者が仕切ってくれるから。勇者、皆を先導してやれよ」


 教卓の前に立った鮫山先生が相変わらず勝手な呼び名で言ってくる。

 俺は先生が横のパイプ椅子に移動していくのと入れ替わりに教卓に立つ。


「その呼び名で人にバトンタッチするの良くないと思いますよ」


 先生のいい加減な言葉を注意すれば、先生は少しへそ曲げて言い返してきた。


「いいじゃん、なんかもう勝手に知れ渡ってるし」


「それ、先生が思っている内容とは違うと思いますよ。現にもう勇者じゃありませんし」


 瞬間、板書係の東大寺さんが持っていたチョークをパキッと折り、折れた一部を拾っていく。

 その音にハッと失言したことに気付いた俺はそっと前を向いた。

 やっべぇ、普段の先生との会話のノリで完全にいらんこと言った。


 恐る恐る正面に顔を向けると、まず最初に隼人による人の不幸を笑うニヤケ面が目に入った。

 その他のクラスメイトは一部の男子がガッツポーズしていて、大半の人達はキョトンとした顔をしていた。


「そっか、勇者の伝説は終わっちまったか」

「案外早いもんだったな。いやまぁ、よくやったというべきか」

「前に見たことあるけど、気難しそうなタイプだったもんね」

「フラれてもまぁ仕方ないっていうか」

「そっかフリーか.......」

「今日、あたしらとカラオケ行くかー? 慰めてあげるよー」


 一人の男子の言葉を皮切りにクラスメイトがガヤガヤと騒ぎ始めた。

 なんというかもっとこう色々酷いことを言われることを覚悟してた。

 だが、意外にも慰めるような声が多かった。


 言葉はどれも自然な感じだ。

 バックにいる隼人の威圧にビビってる感じでもなさそう。

 「カラオケ」ってワードが出た瞬間、一部ピリついたけど。

 ともかく、それだけで俺の今のクラスでの立ち位置が分かった気がした。


「えーごほん、俺は勇者ではなくなりましたが、学級委員ではあります。

 ってことで、これからは委員長と呼んでください」


「え、それは別に変えんでもよくね」

「勇者であったことは事実だし」

「つーか、むしろそっちで定着してるっていうか」

「いいじゃんいいじゃん。そのままでいこーよ」


「アイデンティティを見失うなー!」


「はい、先生は黙っててください」


「あたしだけ当たり強いな。

 そうか、もうあたしを対等に見て養う覚悟が出来たってわけか」


「え、今度はそっちの勇者?」

「マジか、守備範囲広いな」

「まぁ、先生は見た目以外に目を背ければ......まぁ」

「早川君、悩んでるなら相談するよ」

「先生、結婚できないからって生徒に迫るのは良くないと思います」


「先生、泣くぞ。泣くからな! いいのか!? 大人の泣き姿は見るに堪えないぞ!」


「自分で言って泣きそうにならないでください。

 無駄に脱線したので、とっとと話を決めちゃうよ」


「「「「「はーい」」」」」


 とりあえず、流れを戻した俺は本来の仕事に戻った。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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