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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第127話 せめて安全ベルトはつけさせて

 集合場所に集まってから早30分が経過。

 待ち合わせ場所から目的地のショッピングモールまでの距離は10分もない。

 されど、未だ俺達は目的に辿り着けず。


 現在、俺と東大寺さんは近くの喫茶店にやってきている。

 目の前にはぐすんと涙を拭っている東大寺さん。

 俺が二言三言の会話をしたら突然泣き出してしまったのだ。

 一体どうしてこうなったのか......。

 あの時、俺は一体どういう返答をしてやれば良かったのか。


 正直、これまでで一番ヤベー人を相手にしてる気がする。

 だって、この子出会ってからほぼ情緒のふり幅がゼロか百なんだもの!

 玲子さんだって時折情緒がおかしいと感じる時はあるよ?

 でも、それでもまだまだこっちが受け止められるレベルだった。

 だけど、この子の場合はそれが比じゃない!


 なんか急に大型犬みたいなテンションで声をかけてくることもあれば、気が付けば一瞬にして絶望がしてるし。

 さっきだって、服褒めた時は嬉しそうにしてたのに努力の結果を褒めたら泣き出したし。


 感情が暴走ジェットコースター過ぎる。

 富〇急の高飛車も真っ青のハチャメチャぶりだよ。

 揺さぶられ過ぎて情報の処理が追い付かない。


「お、落ち着いた......?」


「う、うん、ごめんね、急に泣き出したりして」


「あ、うん......いや、気にしてないよ」


 無理です。めっちゃ気にしてます。

 そりゃ目の前で泣かれたら気になるでしょ。

 しかも、自分の発言が原因かと思ったらさ。


「えーっと、その、何か気に障ることでも言った?

 だとしたら、謝らせて欲しいんだけど」


「ううん、そんなことないよ。嬉しかっただけだから」


 あれ嬉し泣きだったの!? なんか感動系の映画見た後みたいになってたけど。

 な、何がそこまで東大寺さんん心を突き動かしたんだ......。


 原因をハッキリしたい気分に駆られたが、それでまた急に感情ジェットコースターが発進されてもな。

 安全ベルトなしで振り回されてる気分になるから怖いんだよな。


「落ち着いたのなら良かったよ」


「うん、でも、うちが突然泣き出したことで早川君に迷惑かけちゃったよね。

 ごめんね、突然泣き出したりしちゃって......」


 待て待て、その謝る過程で既に泣きそうになってないか?

 今度は迷惑かけたことで泣くつもり?

 落ち着け。頼むから落ち着いてくれ。


「大丈夫、気にしてないよ。それよりも俺が東大寺さんを傷つけてないことに安心したよ」


「そんなことないよ! うちが早川君の言葉で傷つくことなんてない!

 それにその言葉もまぁ悪くはないのかな、なんて.......」


 おっと、最後の言葉は聞かなかったことにしよう。

 一瞬、東大寺さんが癖の扉から顔を覗かせたような気がしたが気のせいだ。

 友達の、それも男相手にそんな唐突な暴露はしないはず。

 とはいえ、このまま先ほどの話の流れをするのは不味いな。

 とりあえず、東大寺さんの情緒をフラットに戻すために話題を変えよう。


「そういえば、俺、ここ最近気合入れてダイエット頑張ってるんだけど、痩せられてるかな?」


 秘儀、自分語り! これは俺が知っている数少ない話術の一つだ。

 やり直し前に数々のギャルゲーをやってきた俺にはわかる。

 このムーブが一番()()であることを。

 女性にとって会話のベースは相手との「共感」にあるとどこかで聞いた。

 それはつまり、両者ともに共通の感情が持てる話題であることがベスト。


 しかし、俺が出したのは自分の頑張りをアピールする害悪ムーブ。

 自分語りをすることで会話の主導権を一方的にこちらが握り、東大寺さんには強制的に聞き役に徹させる。


 それによって、俺は自分大好きなナルシスト野郎という印象を植え付けられる。

 女性にとっては「自分のことばっか話してんなコイツ」という感じになり、東大寺さんの感情ジェットコースターも点検のため休止するだろう。


 最初の頃は東大寺さんの好感度調査とか息巻いてたがもはやそれどころじゃねぇ。

 俺が東大寺さんの感情(こうかんど)を見てたらそれに俺が振り回される!


「え? うん、痩せれてると思う......」


「だよね! 実は入学してからこの体形をずっとどうにかしようと思ってたんだよね!

 まぁ、夏休みは己の怠慢で少しリバウンドしちゃったみたいなんだけど。

 でも、夏休みにするはずだった努力を今してるからそろそろ効果出てると思うんだよね!」


 さぁ、どうだ! 全然会話が成立しないこの会話はさぞ辛かろう!

 さすれば、東大寺さんの感情メーターもフラットに――


「ふふっ、そっか~。やっぱり早川君は努力家だね~」


 東大寺さんは両手で頬杖を突きながら、めっちゃニコニコしながら聞いてた。

 その微笑みはさながら小学生の子供が自慢する出来事を嬉しそうに聞く母親の如く。


 あ、あれ? 俺が思っていた反応じゃない......。

 こんな会話をすれば永久先輩なんて今頃、めっちゃつまらなそうな顔で頬杖突きながら、ジュースに刺したストローに口をつけててもおかしくないのに!?


 その後しばらくの間、俺はダイエットに関する雑学を交えつつ、終始自分頑張ってるアピールをしていた。


 だが、結果は焼け石に水、釈迦に説法、のれんに腕押し。

 ずっとニコニコしながら嬉しそうに相槌するだけだった。

 あっれ~? これは俺が仕入れた情報がおかしいのか?

 それとも東大寺さんが特殊個体であるだけなのか?


「なんかごめん、ずっと自分のことばっかり話してて」


 さすがにこれ以上は俺の良心の呵責に耐えられない。

 俺の身勝手な都合で東大寺さんには迷惑をかけてしまったな。

 まぁ、彼女の表情からはそんな感情を微塵も感じないけど。


「つまらなかったよな。東大寺さんには縁遠い会話だと思うし」


「そんなことないよ。うちにとってもタメになる話ばっかりだったし。

 うちもお気に入りのスカート履こうとしたら、ちょっとお肉が乗っちゃって急遽違う服装に......」


 自分のお腹周りを見ていた東大寺さんが急にガッとこっちを向いた。

 だから、俺はすぐにサッと目を逸らした。

 チラッと横目で東大寺さんの様子を確認してみたら、彼女は恥ずかしさで若干泣きそうになってた。

 ちょ、ちょいちょいちょい? 自爆は話が違くないですか!?!?


「ごめんね、聞いてもないのに変なこと言って......」


「いやいやいや、そんなことないよ! 俺が言うのもなんだけど、ちょっとぐらいあった方がむしろ健康的でいいんじゃないかな!?」


 なんか適当に言葉を出し過ぎてる気がする!

 というか、お腹周りの肉を気にしてる女の子に“大丈夫”って言うのって大丈夫なんだっけ?


「ホント?」


 あ、この感じは大丈夫そう。いっけー! 乗れ乗れ乗れ!


「うん、大丈夫! それ痩せたいんだったら先人の俺がいくらでも教えてあげるから!」


「え、それって......これからも早川君と二人になるーってこと?」


 東大寺さんは小さく呟き声でそう言うと、口元をニヤニヤさせ始めた。

 そして、急に立ち上がる。


「よっしゃー! そう分かりゃあ今日は全力で楽しむ! 早うショッピングモールに行こ!」


「え、あ、ちょっと!?」


 そして、俺は東大寺さんに手を引かれて喫茶店を出ていった。


*****


―――喫茶店 洗面所


 唯華は一人鏡の前で自分の顔とにらめっこしていた。

 そして、彼女は()()()()聞いてしまった話題に対して、気にするように目線を動かす。


 彼女の目線は自分のお腹に向き、右手で服の上から自分のお腹を摘まんだ。

 しかし、不摂生な食事と少食が相まって摘まめたのは皮だけ。


「......もう少し食事に気を遣ってみようかな」


 そんなことを気にする彼女もまた思春期。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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