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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第115話 時は乙女戦国時代

―――元気唯華の家


 時は乙女戦国時代。

 たくさんの少女が思春期という時期に異性に恋をする時期。

 多くの少女が戦いに勝ち、敗れの歴史を積み重ねていく。


 そんな少女達の中では時に、同じ異性に対して恋をしてしまうということがある。

 全く知らない少女同士ならいざ知らず、友達同士という場合もある。


 運命のイタズラか、はたまたそういう星の下に生まれたのか。

 とにもかくにも、そうなったならただの友達ではいられない。

 相手は恋敵(ライバル)。仲が拗れることもあるだろう。


 少女達では古き良き男の青春のように拳で決着をつけるわけにもいかない。

 ならば、どうするか。話し合う? ありえない。相手は恋敵なのだ。


 だが、絶対ではない。

 そんな異常事態はどこかでは生まれているものだ。

 そして、今回も同じように摩訶不思議な状況が生まれていた。


 一人の部屋に集まる。三人の少女達。

 一人は大人びた気品と凛とした華がある少女。

 一人は元気はつらつな顔とダウナーな顔という二つの顔を持つ少女。

 一人は大人びた雰囲気とは対照的に幼い可愛らしさを保持する少女。


 玲子、唯華、永久の三人だ。

 この三人がこうして一つの場所に集まるのはこれが初めて。

 乙女戦国時代をまさに生きる大名達の話し合いがいざ始まる。


「さて、早速話をしましょうか」


 最初に口火を切ったのは玲子。

 その言葉におおよそを悟ったような顔をする唯華はそっと手を挙げた。


「ちょい待ち。その前になんでわたしの家なの?」


 その質問に玲子はサラッと答える。


「私の家からも先輩の家からも等しく同じ距離だったからよ。

 それに互いに都合が悪かったし、唯華の反応的に問題なさそうだったから」


「こっちは『マジ!? 初めての女子会じゃん!』って浮かれてたの......明らかに女子会って雰囲気じゃないんだけど」


 唯華が指摘するように今の空気はとてもシーンとしてる。

 今にも姦しい会話が行われる様子もなくまるでお通夜のよう。

 その空気を作り出してるのは主に二人のせいなのだが。


「ふふっ、安心しなさい。これからの話題はちゃんとした女子会定番のネタよ」


 永久が微笑みながら唯華を見る。

 唯華はそんな彼女の態度に目を細めた。


「では、唯華の疑問にも答えたから始めるとするわ。

 それで――わざわざ私と唯華を呼び出した理由を答えてくれるのよね?」


 玲子が目つきを鋭くして永久を見る。

 対して、永久はその圧を意に返さず答えた。


「えぇ、もちろん。単刀直入に言うわ――ワタシは拓海君へ告白したわ」


「え!?」


 永久の口から放たれる開幕一発目の爆弾発言。

 あまりの衝撃に唯華は口を開けたまま固まってしまった。

 本来なら女子同士の恋バナなら盛り上がってしかるべきなのに、未だずっと空気が沈んだままだ。


「あら、思い切ったことを言った自覚があるのだけど、あなたは驚かないのね」


 永久が視線を向ける先にいるのは玲子。

 玲子は永久の言う内容におおよそ検討がついていたのだ。

 先日、拓海と会話した時点で。


「想像できてた展開だもの。それにこれまでの先輩の行動を見ていれば、少なからず拓海君に好意を寄せていることは分かってたわ。

 だけど、先輩って行動できたのね。そこに対する驚きはあるわ」


「それに関してはワタシ自身も驚いてる。

 半分勢い任せとはいえ、あれほどまでに堂々と言えるなんて。

 自覚するとこれ以上に無いほど心がスッキリしたわ」


「そう、それは良かったわね。で? それをわざわざ話す理由は何?」


 玲子がピリッと空気を変えた。

 女優時代に鍛え習得した空気を掌握する術だ。

 しかし、永久は兄の真似仕込みの大人びた態度で耐えていく。


 耐えられなかったのは、先ほどから二人の会話を聞いてる唯華だ。

 彼女は完全にお口チャックを決め込んだ。


「これはお詫びのようなものね。

 今までワタシに関して間接的にだけど協力してくれたことに対して。

 それに、ケジメをつけたかった意味もあるかしら?」


 玲子からの凍てつく視線に永久は堂々と視線を返しながら、静かに笑った。

 その言葉に玲子は首を傾げる。


「ケジメ?」


「えぇ、これまで拓海君と行っていた疑似恋人関係.....これを終わらせるケジメを。

 あなた達のような“本物”と向き合うために、ワタシも気持ちの未練は完全に切り離したかったの」


「ほ、本物って......わたしも入ってるの!?」


 永久からのとんでもない発言に思わずチャックの口が開いてしまった唯華。

 そんな彼女の反応に永久は眉を寄せた。


「あなた、これまでの行動から今更違うとでも言うつもり?

 あなたは久川さんという存在を高く見過ぎて一歩引いたような行動してるけど、その気持ちを超えるような無意識で随分とガッツリ関わってると思うわよ」


「それに関しては同感ね。唯華、ずっと中途半端な態度は止しなさい。

 そもそも私からすれば林間学校の肝試しの発言といい、前の告白紛いのセリフといい、もうとっくにそのような認識よ」


「え、えぇ......」


 唯華は顔を真っ赤にしながら戸惑ってる。

 彼女自身にはそれらの行動に対して、一切そういう認識はないのだ。

 ずっと駄々洩れだったにもかからわず。

 永久は目線を泳がせる唯華を見て、肩を竦めると言った。


「まぁいいわ。勝つ気がない存在を相手にしたって仕方がないし。

 ......それに現状はまだ利用価値があると思うしね」


「甘いわよ。そういうダークホースが掻っ攫う展開は稀にあるの。潰すなら早めの方がいいわ」


「れ、レイちゃん!?」


「待ちなさい。まだ利用価値があると言ったでしょ?

 その考えを行動に移すかどうかはワタシの話を聞いてからにしなさい」


 玲子は唯華に向けた殺気を沈めた。

 唯華はホッと胸をなでおろすと、永久の言葉について尋ねる。


「......白樺先輩は何を考えてるんですか?」


「単純なことよ。ワタシの行動に協力しなさい」


「却下よ」


 玲子の間髪入れずの即答。

 永久は想定してたように答えた。


「それでもいいけど、今のあなたに何が出来るというのかしら?」


「......」


「いいから話を聞きなさい。気づいてると思うけど、拓海君は今ワタシ達三人の好意に気付いてるはずよ。たぶん、これまでの積み重ねでね」


「!?」


 一人だけ反応する唯華。

 彼女は今聞かされる新情報に目を白黒させた。

 そんな彼女を無視して永久は話を続ける。


「だけど、彼は自身の根底の自己肯定感の意識と、他の別な強い気持ちに縛られて行動に移すことは無いと思われる。

 自己肯定感の改善は、恐らく彼のダイエットが上手くいくにつれてどうにかなると思うわ。

 ただ、その他にあると思われる強い気持ちによって、今の状況が変わることはない」


 永久は玲子をチラッと見た。

 玲子の視線が僅かに下を見ている。


「どうやら、久川さんの方は思い当たる節があるようね」


「え、そうなのレイちゃん!?」


「......まぁね」


「ともかく、拓海君の現状がこのような状態である以上、誰が同じように告白した所で無駄でしょう」


「だから協力しようってこと?」


 玲子の言葉に永久は頷く。


「これがどういう結果を生むかわからないけど、どうせ誰かに奪わてるならあなた達の方がいいもの」


「そうね。それに関しては同感だわ」


「ま、まぁ......」


 各々反応に関してはバラバラだったが、三人の回答は出揃った。

 三人とも答えは同じ。ならば、取るべき行動もおのずと決まる。


「それじゃ、これより協力してことに当たりましょ。

 具体的なプランは後で考えて行けばいいわ」


「えぇ、わかったわ」


「う、うん......」


 永久が差し出した手に、玲子が手を重ね、その上に唯華が。

 「えいえいおー」と永久の音頭でそれぞれの手が頭上に移動する。

同時にその時の三人の気持ちを覗き見るなら――


 その時の永久の気持ち――ま、上手く利用して全て掻っ攫うわ。

 その時の玲子の気持ち――さて、どうやって二人を出し抜こうかしら。

 その時の唯華の気持ち――わ、わたし、拓ちゃんのこと好きなの?


 ......と、いった感じだった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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