69.挨拶
「セイクレッド辺境伯家が嫡男メイナードと申します。順序が前後して申し訳ありません」
「コールド侯爵夫人、リアーナですわ。ご丁寧にありがとう存じます。ティアが無理を言ったのでしょう?」
「あまりの早さに驚いたのですが、結果的に良かったと思っています」
「ティアが望んだのだから、私は賛成よ?でもセイクレッド辺境伯夫妻とお会いしていないし、ご挨拶はどうしましょう」
うーんとお母様が悩んでいる。
「お母様、メイ様が帰るとき私が先に行っちゃだめ?」
「あら、それは良いわね!メイナード様どうかしら?」
「ティアも?遠いぞ?いいのか?」
「辺境伯領も見たいの。ダメ?」
「駄目なはずがない。一緒に行こう」
「やったわ!レオおじ様にも会える」
「父上喜ぶぞ!絶対!」
「先触れを出しておこう」
「あとね、メイ様に会ってほしい子がいるの」
「?」
「スノウ!」
『ティア、その人?』
「そうよ。メイナード様。メイ様こちらスノウといいます」
「これは…もしや、精霊様では?」
「メイ様知ってたの?」
「知ってたもなにも、ジェット!」
真っ黒なライオンが現れた!
「まあ!スノウの色違い?可愛い!」
『娘。私の子を育ててくれて感謝する』
「スノウのお母様?」
鬣あるからお父さんかな?
『私達精霊に雌雄はないぞ』
そうなんだ。
もふもふする。この世界のライオンは前世のライオンよりふんわり、もっふりしてる。
可愛い。もっふもふ
『ずるい』
スノウがきたので、両方もっふもふする。癒やされる。
「辺境に行くなら一緒に行くから、メイ様にも紹介しておこうと思ったの。でもそちらの森にもいるのね?」
「そうなんだ。ジェットは森で見つけた。今も森で魔物退治を手伝ってくれてるんだ」
「そうなの?ここにいるけど大丈夫?」
「少しの時間だし大丈夫だ」
『メイに呼ばれたから来たが、すぐ帰れるから大丈夫だろう』
「スノウはコールド領にいたのだけど、コールド領で生んだ?の?」
『ああ。あそこは元々精霊がいた所だから環境がいいんだ』
「そうなの?それで生んですぐ辺境へ?」
『元々辺境にいたからな。生むときだけそちらへ行ったんだ。辺境は危ないからな』
「他にも精霊様はいるの?」
『いる。数は少ないがな』
「でも、辺境にスノウの親がいるなら森でいてもスノウ寂しくないね」
『スノウの親はティア。ティアのそばにいるから森には行かない』
「ということなんだけど、連れていて大丈夫?」
「ああ。うちは辺境の田舎だが屋敷はでかいからな」
「だって。スノウ」
『メイナードと結婚していいよ』
「光栄だ」
「誰にも反対されなかったね」
「あっさりすぎて驚いてるぐらいだ」
「あっ!またお祖父様にも会ってくれる?お祖父様も心配してくれてたの」
「ティア、皆が心配してたんだな」
「私は結婚できなかったらしなくてもいいかなー。って思ってたんだけど、皆は結婚して欲しかったみたいでね。だから急とはいえ大喜び」
「まあそうだろうな。可愛い娘が領地で籠ってるなんてと思うんだろう。それなのにデビュタントでいきなり婚約するんだから」
「だってもう社交界出る気全くなかったんだもの。メイ様と婚約したからもう出なくて済む大義名分ができたわ」
「そのために婚約したようにしか聞こえんが、まあいいか」
「そんなことないわよ?見た目が好みだもの」
一目惚れってやつ?
「っっっ!かわいい!」
ガバリと抱きしめられる。
「言われ慣れてないから、衝撃がすごい」
「これからは慣れるわね。ふふふ」
「ぐぅぅぅ」
唸ってる。かわいい。
まさかのメイナードにも精霊がついていました。黒いもふもふライオン。




