57.帰都
レイと話をしながら帰ってるとあっという間だ。久しぶりの王都である。
「「「「「「ティア、おかえり!」」」」」」
「ただいま!」
皆とハグする。
「ティア、久しぶりだな!また綺麗になったな!」
お父様は仕事が抜けられなくて、会うのは久しぶりだ。イケオジに拍車がかかっている。
「ありがとう。お父様も元気そうでよかった!」
「ティアはどんどん女性らしくなってきてるわね」
お母様は嬉しそうだ。
「これはデビュタントが大変だな!」
「僕たち警備があるから父上頼むよ!!」
「騎士でなかったらティアのエスコートできたのにな」
お兄様たちだ。
「私に任せておけ!」
「僕もいるから大丈夫だよ」
「レイス殿下がいるからまあ大丈夫かな?」
「でも出会いが無くなるよ?」
「男たちが群がるよりはマシだろ?」
とコソコソ話をしている。全部聞こえてるんだけど。
「お兄様たち心配しなくても、みんなお美しいから私目立たないから大丈夫よ」
「これだ。ティアはわかってない」
「そうだ!天使のように可愛く妖精のように愛らしく、女神のように美しいんだよ?」
ライ兄さまは兄の中で一番のシスコンだ。
何か増えてるし、本当にこの世界の人は美しいんだから大丈夫よ。
「そうだ!男たちは叩きのめしてしまえ!」
アレク兄さまは脳筋だ。ダメでしょ。何もしてないのに叩きのめしたら。
「大丈夫!傷物なんだから。誰も相手にしないよ」
「「「傷物じゃない!」」」
そんなに怒らなくても…
はぁ。仕方ない。
「そんなにティアのこと信用できない?」
うるうる。
「うっ。信用とかそういう問題じゃなくて…」
「そ、そうだよ。心配だなってだけで…」
「可愛いから…」
「お父様とレイがいるから大丈夫!」
「もう!貴方たちいい加減にしなさい!いくらティアが可愛くてももう子供じゃないのよ!」
兄達がしょんぼりした。さすが母である。
「さあ、ティアお茶でもしながらこれからについて話すわよ。レイス殿下送っていただきありがとうございました」
「レイありがとう。またね」
「それでティア、デビュタントのあとはどうするんだ?王都にいるだろう?」
「領地へ戻る予定です。前にライ兄さまにも話したけど、お祖父様に領地経営を学ぼうと思ってるの」
「どうして?噂なんてもう誰もしてないぞ。ちゃんと王家が対処した」
「お父様、噂を消しても人の心は変わらないわ?私が静かにしてたから噂も消えたのでしょう」
「どうしてそんなに社交界に出たくないんだ?ティアなら社交界の華になれるぞ」
「そうよ。ティアはこれからもっと美しくなるわ」
「お父様、お母様、私は社交界へ出てもレイと変わらず仲良くするつもりです。そしてカイル兄さまは誰とも婚約していない。昔と何か変わった?私は大きくなった。状況はもっと悪くなったわ。
〝偏見を無くしたい偽善者でしたたかな女で王太子も第二王子もたぶらかす悪女"
また私はこう言われるわ。私はまたずっと我慢してたらいいの?」
はっきり言った。
私は我慢したくない。平和に生きるためだ。
「お父様とお母様が心配してくれてるのはわかってる。可愛い娘がそう言われてるのがかわいそう。そう思ってるのもわかってる。けど私そんなに悲観してないよ?社交界が全てじゃないでしょ?私領地でやりたいことを思うようにやって、誰にも煩わされずに自由に過ごしたいの。貴族には向いてないんだと思う。皆に迷惑かけてごめんね?」
お父様もお母様も泣いている。
静かに部屋を出る。
『泣いてたね』
「私親不孝なのかな?」
『そんなことないと思うよ。ティアの人生だもん』




