53.キース(父)視点
「最近騎士達が楽しそうではないか?士気も上がっておるみたいではないか。どうしたんだ?」
「騎士たちも恋人や婚約者ができて、やる気が上がっているんだ」
「恋人や婚約者…そんなたくさんできたのか?」
「そうだ」
「何で。キースわざと黙っておるだろう」
「うちで大規模な合同お見合いを開催したんだ」
「は?侯爵家でか?何で」
「ティアが考えた。髪色が暗いご令嬢たちから、ご機嫌伺いの手紙が届いていたらしい。それを読むと皆、結婚相手もおらず困っていたらしい。それで、うちの騎士たちは偏見がないだろう?そこに目を付けたんだ。双方、喜んで参加してな、相手ができたやつも多いんだ」
「何で教えてくれなかったんだ。それに文官もいるじゃないか」
「ティアが、文官は夜会に出てるだろう?夜会に出て声もかけられないくせに甘えるな!と言っていたぞ。騎士は警護があるから出会いが無いだろ?」
「ティア厳しいな。それで何で私に言わなかった。城でやればいいじゃないか」
「そんなことしたら、夜会と変わらないし、招かれなかった人から文句が出る。と。うちでプライベートでやる分には文句言えないだろう?」
「なるほどな。ティアは本当に面白いことを考えるな」
「心が痛むよ。自分の結婚を考えずに人の縁組してるんだから」
ティアは天使か女神なのだろうな。人の幸せばかりを考えている。自分の結婚がどうなるかもわからないのに。
「ティアは騎士団の中に好みの者はいないのか?」
「いないみたいだったな。楽しそうに見てるだけだったしな。セドに息子薦められても断ってたぞ」
「昔から見てるのに全く好みがわからんな」
「親でもわからんのだから、わかってたまるか」
「レイならわかるんだろうか」
ヴィクトルがレイス殿下を呼んだ。
「レイ、ティアの男の好みって何か聞いてるか?」
「なに?縁組しようとしてるの?ほっといてあげてよ!」
レイス殿下は怒っている。
「違う!好みが知りたいだけだ」
「知らないよ。聞いたこともない。だけど、侯爵とセイクレッド辺境伯にだけは他の大人と態度が違うよね?侯爵は親だからかもしれないけど」
「それは父親みたいだからだろう?もっと同世代でおらんのか?」
「いないでしょ。僕が一番近くにいるんだから。ティアのことはそっとしておいてあげて!」
「だが結婚が…」
「結婚がすべてとは限らないでしょう?幸せじゃない人もいるじゃない。僕がいるんだから大丈夫」
とレイス殿下が言っている。
でもできればティアには幸せな結婚をしてほしいし、レイス殿下だって結婚して温かな家庭を作ってほしいとも思う。
優しいティアが運命の人に出会えるのを祈るしかない。




