49.カイル視点
私はこの国の王太子だ。現在18歳で、婚約者はいない。
私には可愛い弟がいるが、私とはあまり似ておらず小さい頃は塞ぎがちな子だった。
髪色が暗めだというだけで、使用人達から嫌味を言われていたらしい。誰も気付けず、3歳になったころ学友であるコールド兄弟の妹が気付いたのだという。
気付いただけでなく弟の心まで救ってくれたおかげで、弟はどんどん明るくなっていった。
そんなコールド兄弟の妹はコールド兄弟曰く、天使のように可愛く妖精のように愛らしいのだとか。弟までも妖精だと言っていた。
ある日城内でその妹と私の可愛い弟が、悶え苦しむほど可愛い服を着ていると噂になっていた。コールド兄弟も居ても立っても居られず、見に行くとありえないほど可愛いものを見た。
まだ3歳なのに立派に挨拶をしてくれる。不思議な格好で。
弟と2人並ぶと可愛すぎる。
天使のように可愛いと話半分で聞いていたら、本当に可愛かった!うちの弟には敵わないと思っていたが、同じぐらい可愛い!
それから、私達6人は兄妹のように育っていくことになる。
特にレイとティアの仲の良さは私から見ても普通ではない。
レイがティアに懐くのはわかるが、ティアの甘え属性が遺憾なく発揮されているのだろう。コールド兄弟に接するように、歳が同じなだけそれ以上かもしれない接し方は14歳になるまで変わらなかった。
ティアは基本的に怒らないのだが、レイのことに関してだけはすぐに怒るのだ。それがお茶会で増えると、ティアが悪く言われるようになるのは必然だった。
しかし、私にまで結び付けられるとは思いもしなかった。
コールド兄弟が急いで帰っていった。どうしたのかと思っていたら、父に呼び出された。
「カイル、婚約者を選ぶ気は無いのか?」
無い。全く。生涯の伴侶だ。まだよく考えたい。
「ティアが婚約するまでは私も婚約しませんといつも言っているでしょう?」
「では、ティアと婚約する気は無いか?」
「ありえません」
「そうだろうなぁ。ティアもそう言っていたしなぁ」
「何です?わざわざ呼び出して」
「ティアが襲われた。それにレイの学友もやめた、テビュタントまでお前とは会わない」
「待って!待ってください!何?ティアが襲われた?無事なんですか?」
「無事だ。傷一つついておらん。それどころか捕らえたのもティアだ」
「捕らえたのもティア?どうやって」
「レイもだが武術を習っていたらしい。騎士になれるほどの腕らしいぞ」
「それで、何で襲われたんです?」
「お前だ。お前が婚約せぬから、仲の良いティアに婚約者の座を取られると思った令嬢が指示してティアを襲わせた」
「どうしてそこで私が出てくるんです?レイのほうが仲がいいでしょう!」
「お茶会でレイを庇いすぎて、レイをだしにしてお前の婚約者の座に納まる予定の強かな令嬢だと噂されておるらしい」
「そんなの、嘘に決まってるではないですか!」
「ティアはあの容姿で子息達の視線も集めておるだろう。それに優しい、王子たちと仲がよい。やっかみの素質ばかりだ」
「もう何度も襲われているらしい。今まではレイがティアに言われて黙っておった」
「はあ?なぜ黙る必要が?襲われたら助けを求めるでしょう普通」
「助けを求めたら行動を制限される。武術をやめさせられる。やめさせられたら身が守れない。だから黙っていたそうだ」
「学友をやめるのはなぜです?」
「レイに自分が必要な時はもうすぎた。自分が王宮に通っている限り噂は増長するし、襲われるのもエスカレートするかもしれないからだと」
「それで私と会わないとは?」
「もちろん噂になっていることもあるが、ティアは王室主催の公式行事も参加しない」
「は?」
「療養中ということにしてほしいそうだ」
「それは…」
「貴族令嬢としての人生は終わったようなものだと言うことだ」
私のせいじゃないか。私達王子に関わったからだ。
「レイは納得してるのか?」
「兄上は会えないけど、僕は会えるからいいんだ!」
「何で!」
「僕が会いに行くから」
「ずるいぞ」
「ティアはそんなに深刻に考えてないと思うよ。貴族の生活は息が詰まるって苦しそうだったから、離れられて喜んでるよたぶん」
「私の婚約者にするべきかな?」
「やめなよ!ティアがかわいそうじゃない!もう自由にしてあげようよ!それに、兄上ティアの眼中に無いし」
くそ!わかってるよ!私とが1番距離が遠いからな!
はぁ。令嬢達の粛清しないとなー。うるさい令嬢が少しは減るかなー。
王太子殿下はちゃんと腹黒です。




