47.ライナス(次兄)視点
僕はライナス。コールド侯爵家の次男、現在17歳だ。
僕には可愛い可愛い妹がいる。妹は生まれたときから天使だ。僕も自分で言うのはなんだが母上にそっくりで可愛い顔立ちをしている。
だが、妹は別格だった。可愛いが将来美人になりそうな気配しかない顔立ちにコールド侯爵家にしか無い色彩。もう天使であり、妖精である。
そんな可愛い妹は、少し変わったところもあるが、優しい。誰にでもだ。貴族だろうが平民だろうが気にしない。平等だ。
そして、甘え上手でありあざとくもある。僕にそっくりだ!可愛い!
目に入れても痛くない妹が、危機である。
「ティア、今日襲われたんだって?」
「返り討ちにしてやりましたわ!」
嬉しそうに言っている。
「どうして何度も襲われていること言わなかったの?」
「特に実害がなかったもの」
「襲われてるじゃないか」
「怪我一つしてないのよ?」
「そういう問題じゃなくて。わかってるだろ?」
真面目に話す。
「皆心配するじゃない。行動にも制限が出そうでしょ?」
心配はする。当たり前だ。行動制限もありえるな。
「私ね。貴族社会もういいかなって思ってるの」
もういいとは?
「どういうこと?」
「息が詰まるの。レイの髪や暗い髪の人を咎めることも馬鹿らしくて堪らないし。庇えば偽善で王太子殿下の婚約者を狙ってるしたたかな令嬢。それが私」
「それもどうして相談してくれなかったの?」
「相談してもどうもならないから。お兄様や王子たちが庇えば私は余計に悪女よ?カイルお兄様に婚約者ができればと思ったけど、婚約者作る気無いんでしょ?じゃあもう無理じゃない」
ティアがにっこり笑って言う。
「私ね。領地にいる方が楽しいんだー。誰にも気を遣わず楽しいことが好きなだけできて、幸せなの。だからもういいかなって」
だからもういいって何だ?
「王子たちと仲良くなった時点でこうなることは分かってた。貴族令嬢ってめんどくさいよね。別に結婚したいとも思ってないし、領地に篭ろうかなって思ってる」
まだ14歳だぞ?結婚なんてわからないじゃないか。
「私このことで、傷物でしょ?だからね、領地で篭ってデビュタントだけ出たらまた領地に篭もろうかなって。お祖父様から領地経営学んでおくからお兄様たちは王都で騎士のお仕事しててよ」
「何でそんな風に言うの?!傷物なんて言うな!ティアは何も悪いことしてないじゃないか!傷一つない!ティアは自慢の妹だよ」
「ありがとう。でも事実だもの。うちは恋愛至上主義でしょ?なら変なところに嫁がなくていいのだけは助かったかな?」
と悲しそうに笑った。
「領地でスノウとのびのびするよ。たぶんレイもたまに来てくれるだろうから退屈しないよきっと」
全くティアを説得できない。いつからだ?こんなに色々考えてたなんて。
「これからは何でも相談してほしい」
「でもお兄様たち過保護だからなぁ」
とティアは笑った。
どうやったら力になってやれるんだろう?




