46.キース(父)視点
「何?ティアが襲われただと?」
レイス殿下が騎士を数人連れて行ったという。
何でだ?どうして、ティアが襲われる!
無事でいてくれ!
ティアだ。無事だ!よかった!
ティアが捕えただって?戦える?こうなることがわかってた?
だからこっそり習ってただと?どうして言ってくれなかった?
いや、信じなかったのは私達だ。ティアは3歳のときに言っていたじゃないか。私達がもっとちゃんと聞いてやっていれば!
ヴィクトルの私室へ行く。
今回の件は王太子殿下を慕う令嬢のやっかみであったらしい。どうしてティアが襲われなければならない!
父上に教わっていたのか。父上には感謝しかないな。
学友をやめる?そんなの聞いていない。
ヴィクトルが謝ってきたが、あの時のレイス殿下にはティアが必要だった。ティアがいないと今の心優しいレイス殿下にはなっていないだろう。
話していると、王妃殿下もやってきた。
お茶会でも悪い噂だって?私の可愛いティアが?そんな子であるはずが無いだろう!
そんなの、知らなかった。
デビュタントまで表に出るつもりはない?
療養中ということにしておけ?傷物になるだと?
ティアの今までの苦労や努力はどうなる!
あの子が何をしたっていうんだ!
貴族令嬢としての人生が終わってしまう!!!
何度も襲われている?
どうして相談してくれなかった!ティア!どうして!
何も知らなかった自分に腹が立つ。
どうして私は知ろうとしなかった。父上は武芸を仕込んでくれていた。つまりはティアの説明で納得したんだ。どうして私は信じてやれなかった!後悔しかない。
家族会議だ!
「アロイス、ライとアレクを呼べ!急げ!帰るぞ!」
「父上何があったのです?」
「ティアが襲われた件について色々だ!」
「襲われた?色々?」
急いで帰る。
「あなた達!こんな早くにどうしたの?」
「ティアは?」
「部屋にいるけど、どうしたの?」
「リアーナ、落ち着いて聞くんだ!ティアが襲われた!」
「何ですって?あの子、泣いてもなかったしいつも通りだったわよ?!」
「実はもう何度も襲われているらしい」
「何ですって?」
「どういうことです父上!」
「今までも今日も襲われても叩きのめしていたらしい」
「叩きのめすとは」
「ティアはあの3歳の時から護身術だけじゃなく、武芸を習っていたらしい。騎士になれるほどの腕だそうだ」
「どういうこと?ティアには護身術しか許してないじゃない」
「だからだ。許さなかったからこっそり訓練していた」
「誰がティアに教えたんです?」
「父上とエリック、ロイドだ。レイス殿下も一緒に習っていたらしい」
「お祖父様が…」
「父上は3歳のティアの説明を聞いて、身を守るすべを教えてやっていた。なのに私達は信じてやらなかった。謝った私にティアはこういったんだ。絶対こうなると思ってたって。だから自分の身を守りたかったって。襲われても怖くなかったって」
「どうして、相談してくれなかったのかな」
「皆が反対するからだとレイス殿下が言っていた。反対して訓練をやめさせたら、ティアは自分で身を守れなくなるからだと」
「どうして、ティアが襲われるの?護衛も付けているじゃない!」
「どうやら今回は人数が多くてエリックだけじゃどうにもならなかったようだ。だから流石にレイス殿下も無かったことにはできなかったみたいだ。これ以上エスカレートしたら困るから」
「何でティアが狙われるんです?」
「ご令嬢の中でティアの悪い噂が回ってるんだそうだ。レイス殿下をだしにして、王太子殿下を狙っていると。レイス殿下を庇えば庇うほどティアが悪く言われているらしい」
「そんなことがあるはずがないじゃないか!」
「王太子殿下も婚約者を決めないだろう?だから余計に言われるんだと思う。ティアはあの容姿だろ?それに優しいし、子息達の目を引いているだろう?王子たちとも仲がよすぎる」
「やっかみじゃないか!」
「それから、ティアはレイス殿下の学友をやめた」
「何で?!」
「王宮に通うだけでも噂が立つ。もうそれ程までに噂が回っているということだ。前からレイス殿下と王妃殿下は知らされていたらしい。それから王妃殿下には、学友をやめてデビュタントまで表にも出るのをやめると言ったそうだ。王宮主催のものも療養中と言うことにしておいてほしいと。それで今回襲われた」
「そんな…」
リアーナが泣き崩れている。
「ティアは貴族令嬢としての人生が終わるということだ。それをティアもわかっていて、王妃殿下にお伝えしていた」
「ティアの今までは何だったんだ!今までの苦労は?何のためにレイス殿下のご学友をしたんだ」
「ティアはまだ14なのよ?」
「僕達がもっとちゃんと見張ってるべきだったんだ!お茶会も付いていくべきだった」
「王子たちに近い時点で令嬢達のやっかみの対象なのは考えなくてもわかることだったのに!」
「私達にできることは噂がこれ以上広がらないように食い止めることと、ティアの心を守ることだ」
「僕、ティアと話してくる」
お父様…




