42.レイス視点
僕はレイス=バーテクス。この国の第二王子だ。暗めの赤い髪に、碧眼だ。目は父に似たが髪色は母の髪に近い。
この国には差別がある。髪色が暗いと差別の対象だ。不気味だとか陰湿そうだとか。まあそんな理由だ。
今はそんなに気にしていない。僕がネガティブに育たなかったのは。ティアのおかげである。
昔は侍女や侍従でも、こそこそ言うようなひとが周りにいた。
子供だったから、どうしても気にしてしまうしダメな子なんだと思い込んでいた。だから、わがままも言わないようにしたしうまく甘えることもできなかった。
同じ兄弟なのに全く違う見た目。兄が羨ましくて仕方なかった。
そんな時だった。ティアを紹介されたのは。
ティアはとっても可愛い女の子だった。庭園で綺麗な花に囲まれると妖精のようで、そういうと「レイもかわいいよ」と返してきた。
可愛いはずがない。だってダメな子だから。美しくないから。
それでもティアはかわいいと言ってくれる。涙が止まらなくなった。
それから、髪も綺麗だってほめてくれた。母とは違う赤でも、ガーネットだと。その時母に見せてもらったガーネットは確かに綺麗だった。
その後、僕を悪く言っていた使用人はいなくなった。
ティアは髪色なんて気にするなと言い続けた。
あるときは、双子だといって2人で赤い長い髪のウィッグを被って色違いのドレスを着て城内を歩き回った。会う皆が皆可愛いと褒めてくれて、その時は今までで一番褒められたような気がする。
ティアといると楽しくて。つい領地までついていったこともあった。
王都ではしたこともないことばかりだったし、食べたこともないようなものばかりで新鮮な毎日だった。そうそう、ティアが不思議な生き物を拾ったことも忘れてはいけない。
もふもふの可愛い生き物。ティアによく懐きスノウと名付けられた。
そんなスノウとお揃いの服も作ったっけ?
そのころにはお揃いは可愛いもので、皆がほめてくれるものなんだと思えるようになっていた。
ティアは小さいころから護身術を習っていて、領地で見た僕もロイドから教わるようになった。
令嬢なのに鬼ごっこと言って騎士たちと遊んでいるし、皆には内緒だが体術や小さな武器なら扱えるようになっている。僕も一緒に練習しているので、一緒に上達している。
ティアはどこを目指しているのか。
5歳から始まるお茶会にティアも僕も参加するようになった。ティアはたまにしか出ないのであまり存在が知られていない。
8歳になった頃、兄と同じお茶会に参加するようになる。
ティアは相変わらず可愛くて、たくさんの子息たちから見られているしご令嬢たちからも見られている。
兄と僕と仲の良いティアを牽制している令嬢もいるがティアは全く気にしていないし。気付いていない。子息たちからの誘いも、気付かず躱している。
そんなティアだが、僕が貶されるときだけは怒る。令嬢たちを叩きのめす。舌戦で。それはもう見事だ。
僕は気にしてなくても、ティアは怒る。実際、不敬ではあるのだがそんなに気にしてない。ティアが怒ってくれるからそれだけで十分だ。
ティアは知らなかったみたいだが、僕の婚約者候補だと思われている。実際そんなことはないのだが、いつも一緒だし。
お茶会の時でも気にせず〝あーん"これが一番の理由だろう。3歳の時から変わらない。どうやらもう癖になっているらしく無意識だ。
指摘しても気にしない。
まあ僕はいいとして、ティアに変な虫がついても困るので勘違いさせたままでちょうどいい。ティアに本当に好きな人が現れるまでは。
男どもの牽制はこれでできるが、令嬢たちはそうはいかない。
ティアが僕を庇えば庇うほどティアが悪く言われていく。僕たちは家族であって恋人にはなりようがない。けど、周りはそれを知らないから好き勝手言う。
ティアは弱音は吐かないが。疲れている。見てわかるレベルだ。昔の生き生きしたティアがいなくなってしまいそうだ。




