39. 8歳
王室主催のお茶会の日。私はブルーのお母様好みのドレスを身にまとっている。フリフリの代わり子供があまり着ない色にしてもらったのである。
髪は何だか複雑なハーフアップである。うん。髪と目の色に合っていてドレスが良く似合ってる。文句なしに可愛い。
今日の付き添いはお父様だ。
「ティア、今日も可愛い。天使のようだ」
抱き上げられる。
「お父さまも、かっこいい」
きゃっきゃうふふ
「父上だけずるいです!!」
兄たちだ。順番に愛でられる。
髪型を崩さないように。可愛い可愛いされている。
そして先ほどの会話だ。
シスコン兄と親ばかお父様が変なことを言っているけど
まあ何か言われるだろうね~。王子と仲良しだしね~。
今日のお茶会の目的は、王太子殿下のお友達(側近候補)を見繕うことと婚約者候補を見繕うこと。
第二王子殿下のお友達を作ろうの会である。
やってきましたお茶会会場。
皆着飾っているので色彩豊かである。やっぱりこの世界って美形しかいないのでは?ってぐらい皆可愛いし、綺麗だし、見目麗しい令息令嬢ばかりだ。
うちの家族親ばかだけど、私普通なのでは?あんまり目立たなくて済みそうだ。
招かれた令嬢令息4歳~15歳までの子供なのでほぼすべての貴族の子供が集まっている。
これだけ集まるとまあ色々ある。
傲慢な令息令嬢がいれば、がちがちに緊張して動けなくなっている人もいる。
そこへ王子の登場だ。
見目麗しい王太子殿下と可愛い第二王子。レイは8歳になっても可愛い。
私たち臣下はまず、ご挨拶だ。高位貴族からなので侯爵家の私たちは始めの方である。
さっさと挨拶を済ませ。席に着く。兄とはここで別れる。ちなみに保護者は保護者でお茶会だ。
ふぅ。もう疲れた。人多すぎ。
しばらく近くの令嬢と喋っていると、どこかで喧嘩勃発のようだ。どうやら王太子殿下の婚約者を狙っている令嬢の牽制のし合いだ。
「わたくしこそふさわしいのよ!貴方なんか爵位も低いし釣り合いませんわ」
「私の方が容姿が釣り合いますわ」
おお!!中々のcatfightである!私は巻き込まれるのは嫌いだが、自分以外のところで繰り広げられるやりとりは割と楽しく見ていられる方である。
ただし、やり合いに限る。一方的に叩いているのは見てられないから嫌いだ。
子供なのに凄いね~。
と思っているとレイがやってきた。
「すごいよねー。兄上大変だ」
他人事である。
「もうすぐしたらレイもああなるんじゃない?」
「ぼくは大丈夫でしょ。髪これだし、ティアがいるからね」
「髪は気にしなくていいのに。それとティアがいるからって?」
「あれ。知らないの?ティアはぼくの婚約者候補だって言われてるんだよ」
「え?そうなの?何で?仲良しだから?まあいいけど」
「そりゃずっと一緒にいるじゃない。それにこれ」
「何?」
「ぼくに食べさせてる」
あー!!!うっかり。
「いま気づいたの?」
「うん。習慣になってるから気にしてなかった」
「まあいいけど。こっちもおいしいよ?」
と食べさせてくる。
「ありがとう」
食べる。周りが騒いでいるけど気にしない。だって3歳からずっとこれだったんだよ?いいじゃない。
それに私とレイの中に男女のあれこれは存在しない。家族のそれである。
レイとほのぼのしていたら、
聞こえるぐらいの音量で
「あの髪色、不気味ですわよね」
「王太子殿下とは気品が全く違いますわ」
「あのご令嬢にはお似合いなんではなくて?」
等々
悪口が聞こえてくる。また髪色。髪色が何?
「まあまあ。ぼくは大丈夫。慣れてるからね」
「慣れちゃダメよ」
「あんな美しくない方、婚約者もできないでしょうから。早くにお相手が見つかってよかったですわね」
もう我慢できない。
「まあ!あなた方そこまで美しくなくてよ?」
と怒りは顔に出さず、小首を傾げておく。
「何ですって?」
「それにあなた爵位は?マナーも知らないような方が美しいはずないではありませんか。
ふふ。レイは可愛いわ。髪色ぐらいで何。あなた方レイの何を知ってますの?髪色だけで判断するようなご令嬢より素敵な令嬢はたくさんいますわ。残念でしたわね」
にっこり。
子供でも王室主催のお茶会での失敗は許されない。
王族の批判をするような人間はここにいてはいけない。不敬だ。家での教育がそれだから、そこの家もしかるべくである。
陛下と王妃殿下の溺愛を知らないのかしら?




