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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第二章 伯爵家の養女

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80/80

80.エレノアの過去

 その日の夜、自室にエレノアの侍女を呼んだ。


「来てくださってありがとうございます」

「とんでもございません。何か伺いたいことがあると聞いたのですが……。もしかして、エレノア様の事でしょうか?」

「はい。お義母様の事で色々と疑問が出てきたので、周りの人の意見が聞きたかったのです」

「そうでしたか。私で良ければ、お力になりますよ」


 そう言って、侍女は穏やかに笑ってくれた。これなら、安心して話が聞けそうだ。


「お義母様はエルヴァーン家に来る前、どういった実家で暮していたのか聞きたいのです」

「なるほど、そこから知りたいと言う事ですか。私はエレノア様がエルヴァーン家に嫁いだ当初から傍に居りまして、それからのことなら詳しくお話出来るのですが、その前というとほんの少ししか分かりません」

「それでもいいです。お義母様がどのように実家で暮していたか、教えてくれませんか?」


 今のエレノアを形成する要因となったのは、嫁ぐ前の実家に大きな影響があると考えた。そこで、どのように暮していたかしれば、エレノアの本性が見えてくるような気がした。


「エレノア様のご実家はディアモント子爵家と申しまして。有名な大商会を傘下に置く、財政豊かな家となります。エレノア様はそこで長女として生まれ、家のために厳しく育てられたと言われております」


 子爵家の長女として生まれたのなら、貴族としての重責は大きかったことが伺える。だったら、その生活はさぞかし厳しいものだったのだろう。


「実はエレノア様のお母様が早くに亡くなられ、代わりにお祖母様に育てられたのです。お祖母様は亡くなられたエレノア様のお母様に代わり、貴族の子女として育て上げられたと聞いております」


 エレノアの母親が早くに亡くなっていたなんて知らなかった。代わりに祖母に育てられたようだけれど、もしかしてそこに問題があるんじゃ。


「お祖母様はどういった方でしたか?」

「貴族の淑女としてご立派な方でもあり、厳しい方でした。一時期、王族の教育係を務められていたほどの方でした」


 だったら、きっとエレノアにもそれに近い教育を行ったと言えるだろう。祖母による厳しい教育……。そこに人としての愛があれば、今のエレノアはもっと愛情深いはずだ。


「エレノア様はそんなお祖母様の下、立派な貴族の淑女に育てられました。ですが……」

「何かあったのですか?」

「私は思うのです。その厳しい環境に置かれたお陰で貴族としてのふるまいは完璧になりましたが、普通の人としての感情が欠落してしまっていると思います」


 やっぱり、そうか。今のエレノアを形成したのは、実家での厳しい教育のせいだった。


「きっと、エレノア様は普通の愛を知らずにここまで生きてきたんじゃないかと思います」

「……私もそう思います。今日、お義母様とお話して違和感を覚えました」

「……エレノア様の事を感じ取られていたのですね。やはり、普通の感覚で見るとエレノア様は感情が欠落しているように感じるんです」


 実家での扱いのせいで、エレノアは普通の愛を知らない。エレノアにとって愛とは貴族としてのふるまいをすることだと思っているところがある。


 だったら、エレノアにするべきことは一つ。愛し方を教えるだけだ。


「どうか、ルーク様のようにエレノア様もお救いください」

「出来る事はやってみます。このエルヴァーン家が温かい場所になるように」


 侍女が祈るように手を合わせると、私は頷いた。やるべき事が分かったのなら、実行するのみだ。


 ◇


「お姉様、おはようございます!」

「ルーク、おはようございます」


 朝早くに食堂に行くと、すでにルークが待っている状態だった。ルークは私を見ると、嬉しそうに駆け寄って抱き着いてくる。それを優しく抱きしめるとルークは嬉しそうに笑った。


「お姉様、聞いて! 昨日は魔力操作がもっと上手くいったんだ」

「そうなのですね。それは見たかったです」

「だったら、今日時間ある? 見ていて欲しいんだけど……」


 もじもじと恥ずかしそうにお願いをしてくるルーク。その可愛いお願いに心が動かされそうになるのをグッと堪える。


「もちろん、見させてください」

「本当!?」

「ですが、私だけじゃなくてお義母様も呼びましょう」

「お母様を?」


 不思議そうに頭を傾けたルーク。お義母様と交流をしないことが当たり前になっているから、いないほうが普通だと言っているようなものだ。


 だけど、それは健全じゃない。


「ルークもお義母様に見て貰えたら嬉しいですよね?」

「えっと……うん。でも、お姉様に見て貰いたい」

「えぇ、もちろん。私も見ます。二人でルークの活躍を見させてください」

「二人で? ……うん」


 すると、ルークはもじもじして照れだした。これは、お義母様も意識しているのだろう。二人を近づけるチャンスだ。


「ルークに一つお願いがあります」

「うん、何? 何でも言って!」

「ルークは気持ちを隠さずに、やりたいことや言いたいことがあったら実行してください」

「えっ、でも……。迷惑にならない?」

「なりません。ルークの素直な気持ちが知りたいんです。ダメですか?」

「……ううん、ダメじゃない」


 エレノアの下、ルークはどうやって交流を持ったらいいのか分からない。だから、ここは導いて上げて、二人を近づける。そうしなければ、関係が進まない。


 ルークも変わったから、きっとエレノアも変われるはずだ。私は希望を持って、次の行動に移っていった。

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― 新着の感想 ―
真っ当に愛された記憶が無い人は愛し方が解らなかったりするからね。
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