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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第二章 伯爵家の養女

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78/80

78.仲良し

 朝、食堂に行くためにファリスと歩いていると――。


「お姉様!」


 ルークの声が後ろから聞こえてきて、立ち止まって振り向いた。すると、ルークが胸に飛び込んできた。ビックリしたけれど、なんとか受け止められた。


 ギュッとルークが私の体に抱き着くと、明るい声が聞こえてくる。


「おはようございます!」

「ルーク、おはようございます。朝から元気ですね」

「お姉様が見えたから、元気になったよ!」


 なんとも嬉しい事を言ってくれる。思わず頭を撫でると、ルークは気持ちよく目を閉じてくれた。


「えへへ。お姉様に頭を撫でられるの好き」

「そうですか? なら、いっぱい撫でて上げますね」


 そう言って優しく頭を撫でると、ルークはさらに嬉しい顔になった。その顔を見ると、心が癒される。思わず私も笑顔になって、二人で笑い合ってしまった。


「じゃあ、ルーク。食堂に一緒に行きましょう」

「はい!」


 手を握ってそう言うと、ルークから弾ける笑顔が咲いた。僅かな時間、二人で手を繋いで食堂に向かう。それだけなのに、心が温かくなって嬉しい気持ちになる。


 二人で一緒に食堂に入り、隣同士に座る。


「お姉様! 今日も時間、ある?」

「もちろん、ありますよ。でも、魔力の練習は良いんですか?」

「昨日の成果を見て欲しくて。ダメ、かな?」

「そう言う事でしたら、大歓迎です。ルークの成果を楽しみに待っていますね」

「うん!」


 ここのところ、ルークは魔力操作に力を入れている。先生を招いて、本格的に魔法の勉強を始めたのだ。


 とにかく、ルークは毎日が楽しいみたい。空き時間では魔力操作の練習をして、ずっと自分を鍛えているようだ。


 それでも、ずっと一人で鍛えているとやっぱり寂しくなるのか、今のように誘われることがある。そういう時は快く受け入れて、一緒に時間を過ごすことにしている。


 その日常のお陰のせいか、ルークとの距離は縮まってとても仲良しになった。私達は本当の姉と弟になれたみたいだ。


 私達が仲良くなると、両親にも少しだけ変化があった。食事中に話を振ってくれるようになったのだ。


 その事にはルークと一緒に驚きつつも、喜んで会話を重ねた。まだ、普通の家族とは言えないけれど、その一歩を踏み出せた気がした。


 ◇


「お姉様、僕の魔力操作を見て!」


 そう言って、ルークが自分の魔力を操作する。まだまだ覚束ないけれど、しっかりと魔力操作が出来ているようだ。


「どうだった?」

「前よりも上手になってますよ。沢山練習したんですね」

「うん、うん! 僕、沢山練習したんだよ!」


 笑顔で褒めると、笑顔が返って来る。なんてことないやり取りなのに、それだけで心が癒される。懐かれると、以前よりも可愛く感じるから不思議だ。


「もっと、沢山練習して、お姉様にもっと褒めてもらいたい!」

「ふふっ、そんなに褒めてもらいたいんですか? そうしなくても、沢山褒めて上げますよ」

「ううん。ちゃんと努力を褒めてもらいたい! 頑張ったねって頭を撫でて欲しい!」


 どうやら、ルークは認めて欲しい欲求があるみたいだ。お義父様とお義母様があの調子だから、今まで我慢してきた感情が溢れ出てきたらしい。


 本当なら二人に褒めてもらいたいのに……。そう思うと、切なくなる。やっぱり、このままの状態は健全ではない。早急になんとかしなければ。


「ルーク、今度はお義父様とお義母様にも褒めてもらいましょう」

「えっ、で、でも……。お姉様みたいに褒めてくれないし……」

「今の状態では難しいでしょうが、私がなんとかしてみせます」

「お姉様が?」


 真剣な表情で伝えると、ルークは戸惑った様子を見せた。


「私が二人を変えてみせます。そしたら、きっと仲良しな家族になれると思うんです」

「お姉様が二人を変える? そんな事が可能なの?」

「ルークがこんなに変わったんですから、二人だって変われる可能性はありますよ」

「……そっか。もし、二人がお姉様みたいに変わったら、僕は嬉しい」


 ルークは二人が私のように変わった様子を想像して、はにかむように微笑んだ。ルークだって、両親の愛が欲しいはずだ。だったら、それを求めていい。


 ルークはもう我慢する必要なんてないんだ。


「僕も協力したい。どうすればいい?」

「自分の気持ちをちゃんと伝える事です。楽しい事、嬉しい事、悲しい事。色んな事を伝える練習をしてください。できますか?」

「自分の気持ちを伝える……。難しいけど、やってみる。ちゃんと、自分の気持ちを伝えられるようになるよ」

「その意気です。私はそんなルークの気持ちを聞いてくれるように、二人を変えてみせます」


 ルークもこうして頑張ってくれる。それを聞くと、やる気が漲ってくる。あとは、私が二人を変えるだけだ。

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― 新着の感想 ―
う、涙が。。(´Д⊂ヽ報われるのは素晴らしいことですね
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