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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第二章 伯爵家の養女

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76.解決策

 ルークに魔力を感じさせるにはどうしたらいいか。解決策を求めて、私は魔力に関する書物を集めた。古い物から新しい物まで、幅広い知識を求めた。


 おかげで私の机には何十冊もの書物が集められ、準備が整った。この書物を読んで、ルークが魔力を感じるために手がかりを見つけなければいけない。


 書物が読める時間が取れるのは夜だけ。その短い時間を使って、私は書物を読み漁った。だけど、文字を覚えたての私はスラスラと書物が読めない。


 辞書で単語を一つずつ確認しながら、ゆっくりと確実に書物の中を確認していった。


「……この書物でもないか。よし、次の書物に」


 一冊の書物を読み終わり、次に手を伸ばした時――。


「ルア様、もうそろそろ就寝の時間ですが」


 ファリスが困った声が聞こえてきた。


「これはルークのために必要なことです。もう少し、書物を読みたいと思います」

「……ですが、ルア様の体が心配です」

「大丈夫です。以前なら、この時間は働いていましたし、体力には自信があります。だから、もう少し読ませてくれませんか?」

「……分かりました。ですが、無理そうだと判断したら寝て頂きますからね」


 なんとかファリスの了承を得られた。これならば、次の書物も読める。すぐに次の書物を手に取り、文字を読み始めた。


 しばらく書物を読み進めていくと、気になった文章を見つけた。


「本来、魔力は体の中心に眠っていて、それを呼び起こすと魔力が目覚めるのが普通。だが、その中には魔力を目覚めさせられない人もいる。それは先天的な障害とされている。……もしかして、ルークが魔力を目覚めさせられないってこの事じゃないかな」


 この文献が本当なら、ルークは先天的な理由で魔力を目覚めさせられないということだ。この書物に解決策が載っていないか、文章を読み続けた。


「先天性の障害の場合、自分の力だけでは魔力を目覚めさせられない。よって、他者の力を借りることが必要だ。他者の魔力を使い、先天性の障害を魔力を引っ張ることが、魔力の目覚めのきっかけとなる。……これだ!」


 きっと、この方法を使えばルークの魔力を目覚めさせることが可能だ。問題があるとすれば、私の力でそれが可能かどうかということだ。


 私はまだ魔力に目覚めたばかり。魔力操作が覚束ない中で、ルークの魔力を引っ張り上げられることが出来るのか……それが不安だ。


 試しに自分の体にある魔力を操作する。意識を集中して動かすが、ぐるぐると回る感じはあるものの、そこから伸びてひっぱりあげる動作なんて今は無理だ。


 いや、こんなところで諦められない。もっと、もっと意識を集中して、魔力を動かしていく。すると、体の中心で回っていた魔力が外へと伸びてきた。


 これなら、もっといける。もっと、意識を集中して、魔力を自由自在に操れるようにする。すると、魔力が自分の思った通りに動いてくれるようになった。


 だけど、まだ足りない。もっと、動かさなきゃ。そう思っていると、肩を叩かれた。


「ルア様、就寝の時間です」

「ですが、まだ……」

「いけません。明日も授業があるのですから、早く寝ないとお体に毒ですよ」

「……分かりました」


 とうとう、ファリスに咎められてしまった。仕方がないと私は席から立ち上がり、ベッドに移動する。


「では、おやすみなさいませ」

「おやすみなさい」


 言葉を交わすと、ファリスは静かに部屋を出て行った。離れていく足音を聞きながら、私はベッドの中で目を開ける。


「まだ、もう少し……」


 私はベッドの中で自分の魔力を操作をする。思い通りに動かせるように意識を集中して、魔力操作をしていった。


 集中力を高めてやっていくと、面白いように魔力が動いているのが分かる。意識の使い方で魔力がどんどん形を変えていくみたいだ。


 書物に書かれていた文章を思い出して、ルークの体に魔力を入れるイメージで魔力を操作する。すると、自分の指先から魔力が溢れて、自由自在に動き回る。


 うん、良い調子だ。このまま、動きを鮮明にして、ルークの中に魔力を通せば……。希望が見えてきて、私はベッドの中でずっと魔力操作をしていった。


 ◇


 それから数日間、私は魔力操作に時間を費やした。書物を読んで、魔力の目覚めさせ方を学び、必要な魔力操作を学んでいく。


 始めは動きが鈍かった魔力も練習を積んでいけば思い通りに動かせるようになってきた。魔力操作はどんどん上達し、細かい動きまで再現出来るようになる。


 私は徹底的に魔力操作を鍛えた。もし、これが失敗するとルークにまた悲しい思いをさせてしまう。あんないい子をまた辛い思いにさせるのは絶対に嫌。


 必ず笑顔にしてみせる。その思いで、魔力操作を極めていった。


 そして、満足のいく魔力操作を手に入れた。完璧でいて、失敗なんかしない。そう確信できるほどの魔力操作だ。


 とうとう、実行する時が来た。私は絶対の自信を持って、ルークに会いに行った。

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