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お稲荷様ののんびりVRMMO日和  作者: 野良野兎
WAVE-II 出会い
28/103

お稲荷様と白兎

今日も無事に投稿できました。

サブタイはしろうさぎと読みます。


誤字、脱字などございましたら、お気軽にご指摘ください。




 手早く昼食を済ませ、再びログインしたボクがまた始まりの草原へと向かうと、戦場は相変わらず凄まじい熱気に包まれていた。

 どうやらあれからずっと戦っているようだが、悲しいことにボスの体力はまだ二割も削れていない。

 トッププレイヤーたちが勇ましく戦い、散って行く様を見届けながら、ボクは腰に提げた細身の剣(・・・・)を引き抜き、ちょうど近くにうろついていたプチメカムートへとスキルを使用した。


 【シールドキャスト】という、敵に盾を投げつけて攻撃する剣士(・・)専用スキルだ。

 左手に装備していた小型の盾が、放物線を描きながら敵へ命中した。


 与えられるダメージは微々たるものだが、突然攻撃されて怒り狂ったプチメカムートが唸り声をあげながらこちらへと飛びかかってくる。

 その鋭い牙をいつの間にか左手へと戻ってきていた盾で防ぎ、続けざまに攻撃スキルである【三連突き】を発動。レイピアの先端が煌めき、高速の三連突きが敵の腹部に命中する。


 悲鳴をあげ、プチメカムートが光の粒子となって消滅した。


「はあ、近接戦闘は初めてだけど、何とかなったね」


 レイピアを鞘に納めつつ、安堵の息を吐く。

 まあ、種族レベルがカンストしているおかげで職業レベルが一でもステータスにかなりのプラス補正がかかっているので、この程度の敵に苦戦することはまずないのだが、やはり初めて前衛で戦ってみると緊張するのも仕方のない事だと思うのだ。


 そう、今のボクはいつもの陰陽師ではなく、先程職業ギルドで登録して変更可能になった【剣士】へと転職していた。

 予定が少し前倒しになってしまったが、その分レベリングに時間が回せるし、まあ良しとしよう。


 何故今更前衛の、しかもタンク職に手を付けているのか不思議に思われるかもしれないが、こうして全く違う役割の職業に触れることで、後衛職をしていると見えてこない事が色々と見つかるのだ。

 ここで回復してほしい。このスキルはリキャストが長いから、使用した後は補助魔法は厚めで。

 

 そういったタンクの気持ちを理解するには、実際に触れて、その立場に立ってみるのが一番手っ取り早い。慣れてないからしんどいけどね。


 まあボクの場合、パーティを組む相手はほとんどモミジたち三人だけであり、タンク専門のハヤトがいるのでそれほど重要度は高くなかったりするのだけど。


「さて、それじゃあどんどん行こうか」


 先程と同じ手順で、範囲内に入っているプチメカムートへ【シールドキャスト】を発動。

 きーきー叫びながら襲い掛かってきた敵の攻撃を盾で受け止める。

 

 さすがは剣士というべきか、正面から攻撃を受け止めても、それほど体力が減ることはない。

 妖狐族という、魔法攻撃にステータスが偏っている種族であるので防御力は低いし、体力も多い方ではないのだが、これならタンク職として役に立たないという事はないだろう。

 尤も、前衛向きである他の種族と比べるとその差は歴然ではあるのだが。


「でもやっぱり、こういった装備の方が動きやすいな」


 剣士へと転職し、職業レベルが一になった事でボクの装備もまた一新された。

 現在は黒のノースリーブに皮の胸当て、ハーフパンツというシンプルなもので、これは剣士ギルド内に併設されていた防具屋で購入した物だ。


 ちなみに陰陽師への変更はメインメニューからいつでも可能であり、レベルや装備も保持されるので、転職したからといってまたレベル一から育てなおし、なんて羽目にはならないので安心である。


 しかし、やはりイベントで用意されたモンスターである為か、通常よりも少し入手できる経験値が多く設定されているようだ。 数匹倒すだけで、もうレベル三まで上がってしまった。


「さて、これで【挑発】も使えるようになったな、と」


 さて、それじゃあ引き続きレベル上げに勤しむとしようかな。

 そう思い新たな獲物を探していると、何やら必死にモンスターから逃げるプレイヤーを見つけた。

 

 どうやら勝ち目がないと思い町へと逃げ込もうとしているようだが、あの場所でそれは悪手だなあ。


 平時ならともかく、今はイベントの真っ最中。例の変態が巻き散らしたプチメカムートがそこいらを徘徊している。そしてそれは、町への門近くであっても例外ではない。


 案の定、そのプレイヤーは周囲のモンスターにまで次々と襲われ、まるで電車ごっこのような行列になってしまっていた。トレイン、と呼ばれる状態である。

 こうなってしまうと、最悪の場合は待ちの出入り口にモンスターの集団が陣取ってしまい、町から出てくるプレイヤーたちに問答無用で襲い掛かるようになってしまう。 


 ううむ、まあプチメカムートなら一撃で落とせるし、あれ以上増えて被害が拡大する前に処理しておこうか。

 高レベルプレイヤーはほとんどがメカムートの方へ行っているし、周りの初心者たちにまでモンスターのヘイトが向くと厄介だしね。

 件のプレイヤーを追いかけているプチメカムートは全部で四体、まあやれないことはない。


 剣士の練習にも丁度いいとボクはレイピアを引き抜くと、遁走するプレイヤーの正面へと回り込み、先頭の一体に【挑発】、後続の敵に【シールドキャスト】と立て続けにスキルを使用し、敵の標的をこちらへと切り替える。

 

「あ、ありがとうございますぅー!」


「三体まではすぐタゲ奪えるけど、残り一体はそっちでなんとかしてね」


「は、はいいー!」


 種族スキルが使えればいいんだけど、残念ながらMPが足りない。まあ、本来は魔法を使わない職業であるし、この辺りは仕方ないだろう。

 追われていたのはワーラビットの女性プレイヤーだった。目尻に涙を浮かべ、まさしく脱兎の如くこちらへと走ってくる。

 標的をこちらへと変更した二体の間を縫い、それ違いざま三体目に【三連突き】を放つ。ぐぐっと敵の体力が減少し、断末魔の悲鳴と共に光へと変わった。

 【挑発】のリキャストまではあと少し、先程のプレイヤーは無事に敵を倒せているだろうか。

 しかし、やはり二体同時に相手をすると、少なからず盾での防御が間に合わない場面が出てきてしまうな。一体の噛みつきを盾で防いだとしても、横からもう一体の攻撃が通ってしまう。

 種族レベルのステータス補正がなかったら危なかったかもしれない。


「これで、最後っと」


 攻撃をかわし、無防備となった敵の横っ面へ一突き。僅かに残っていたHPバーが全損し、レベルアップを知らせるファンファーレが鳴り響いた。


 さて、と先程のプレイヤーを探すと、少し離れたところで座り込んでいるのが見えた。肩で息をして随分と疲れているようだが、なんとか無事のようだ。というか、まだモンスターはいるのだから、そんなに気を抜いているとまた絡まれるよ。


「お疲れ様。何とかなったみたいだね」


「あっ、先程はありがとうございました! 次から次へと敵に襲われて、もうダメかと思いました」


「次からはトレインしそうだと思ったら周囲に助けを求めるか、潔く死に戻ったほうが楽だよ」


「トレイン?」


 ああ、もしかしてこの手のゲーム(MMO)自体初めてのパターンなのかな。


「さっき、逃げながらどんどん敵を呼び寄せてたでしょ、ああいうのをトレインって言って、君がもしあのまま町に逃げ込んでたら、標的を失ったモンスターがその場で野放しになって近くのプレイヤーに襲い掛かる恐れがあったんだ」


 本来は設定されている場所に戻るまで無害化したり、途中で敵の行動範囲外に出られるのであそこまで追いかけてはこないのだけど、今回はイベントで町の近くに沸いている敵だったからか、危うく大名行列の様になるところだった。


「う、そうだったんですね……ごめんなさい」


「いや、叱っている訳ではないんだけど。その感じだと、ネトゲはそれほど?」


「実はこれが初めてなんです。興味本位で申し込んだ抽選で当たっちゃって……」


 それは随分と運がいい。 

 話題作なだけあって、倍率もそれなりに高かった気がするのだけれど。


「ふむ、袖振り合うも他生の縁というし、よかったらパーティを組んでやってみるかい?」


「え、いいんですか!? ぜ、是非宜しくお願いします!」


 杖にローブと、見たところ魔法使いのようだし、相性は悪くないだろう。

 メインメニューを操作し、目の前の女性にパーティ勧誘を送信する。そういえば、ボクから誰かをパーティに誘うって、これが初めてではないだろうか。いつもモミジの方から勧誘メッセージを飛ばしてくるからなあ。

 やがて視界の隅に表示されたパーティメンバーの名前を見て、ボクは思わず首をひねった。


「イナバさんか。なんだか毛皮を剥がされそうな名前だね」


 というか、よく登録できたねその名前。このゲーム、重複する名前は使用できないようになっているのだけど。


「あはは、ダメ元で打ち込んだら通っちゃいました」


「まあ、毛皮どころではすまなさそうな組み合わせだけどね」


 なんていっても、狐と兎である。

 家を乗っ取られるか、食べられてしまうか、この組み合わせが登場する物語にはろくなオチがつかない。


「ともあれ、とりあえずは手頃な敵を狩ってレベルを上げておこうか。 ああ、パーティメンバーの項目にも表示されていると思うけれど、ボクはタマモ、改めて宜しくね」


 いまだに座り込んだままの彼女の前に膝をつくと、イナバは何故か目をぱちくりとさせたあと、何故だか急に身体ごと百八十度反転してしまった。えっと、ボクが何かしただろうか? 


「はえー、近くで見るとスッゴイイケメンかも……いや、ゲームのアバターなんだからイケメンなのは当たり前なんだろうけど。違和感ないなあ、凄いなあ……」


「えっと、大丈夫?」


 何やらぶつぶつと呟いていたようだが、もしかして現実世界の方から何か呼び出しでもあったのだろうか。

 

「だ、大丈夫です! ふ、不束者ですが、宜しくお願いします!」

 

 嫁ぐのかな? いや、そうじゃなくって。

 何やら凄まじく緊張しているみたいだけど、ううむ、やはり先程トレインの説明をした際の言い方が悪かったのだろうか。 

 リアルの方でも何故か高圧的だと怖がられる事が多いし、なるべくそうならないように意識していたのだけれど……。まあ、気にしても仕方がないか。


「それじゃあ適当な敵を釣ってくるから、ここで待っててね」


「つ、釣り? それ剣ですけど……」


「ああ、釣りっていうのは――」


 いや、この分だと心配いらないかな。


 こてんと首を傾げるイナバを見て苦笑しつつ、ボクはまた授業を再開するのであった。

付けててよかったガールズラブ(タグ)

次回も少し趣向が変わる可能性が高いので、苦手な方はご注意を。


イベントが終了後、タマモはちゃんと陰陽師に戻ります。

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