曾子有疾 孟敬子問之。
・原文
曾子有疾。
孟敬子問之。
曾子言曰、鳥之將死、其鳴也哀。
人之將死、其言也善。君子所貴乎道者三。
動容貌、斯遠暴慢矣。
正顏色、斯近信矣。
出辭氣、斯遠鄙倍矣。
籩豆之事、則有司存。
・書き下し
曾子、疾有り。
孟敬子之を問う。
曾子言いて曰く
鳥の将に死なんとする、其の鳴くや哀し。
人の将に死なんとする、其の言や善し。
君子の道に貴ぶ所の者三あり。
容貌を動かしては、斯に暴慢に遠ざかる。
顔色を正しては、斯に信に近づく。
辞気を出しては、斯に鄙倍に遠ざかる。
籩豆の事は、則ち有司存す。
・解釈
曾さんが重い病を患ったので、孟敬子がお見舞いに参られた。
そこで曾さんが言われた。
『諺に【鳥がいよいよ死なんとしている。その最後の鳴き声は実に哀しげである。人がいよいよ死なんとしている。その最後の言葉は心からの言葉である】とあります。そのつもりでお聞きください』
『為政者たるもの、大事にせねばならぬことが三つあります』
『軽々しい行動は勝手気ままと捉えられます。慎重になされよ』
『表情一つで得られる信用もあります。気を配られよ』
『言葉使いに品が出ます。丁寧になされよ』
『その他の細々したことは、それぞれ担当の者に任されるがよいでしょう』
・私言
鳥の将に死なんとする、其の鳴くや哀し。
人の将に死なんとする、其の言や善し。
個人的に好きな言葉である。
・用語
孟敬子:魯の国の重臣
容貌:現代一般的には顔つきなんだが、ここでは体全体の動作らしい
辞気:言葉使い
籩豆:供物を盛る器
有司:係の役人
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