伯牛有疾
・原文
伯牛有疾。
子問之。
自牖執其手
曰、亡之。
命矣夫、斯人也而有斯疾也、斯人也而有斯疾也。
・書き下し文
伯牛、疾有り。
子、之を問う。
牖より其の手を執りて、曰く、之亡からん。
命なるかな、斯の人にして斯の疾有るや、斯の人にして斯の疾有るや。
・解釈
伯牛さんが病に罹った。
孔子さんが見舞いに参られ、灯り取りの窓から手を取って言われた。
『亡くなってしまうのか』
『これもまた天命なのか、この人がこのような病に罹るとは、この人がこのような病に罹るとは』
・私言
伯牛さんは癩病、現代呼称でハンセン病に罹ってしまったようである。
当然当時不治の病である。
当時の中国で癩病患者が如何なる扱いをされたのかは不明ではあるが、対面でなく灯取りの窓から手を取ったとの記述から、差別的な扱いがあったと見てよかろう。
もっとも、癩病でなくとも重篤な病なら感染を恐れ、近寄らない・隔離するなどは自然な対応である。
それでも、灯取りの窓からといえども、病人の手を取った孔子さんには慈しみの心が有ったと言えよう。
きっと皆に止められたけど、無理言って見舞いに来たのだろう。
しかし、病人に向かって『亡くなってしまうのか』というのは直截的に過ぎやしませんかね?
・用語
伯牛:姓は冉。名は耕。字は伯牛、孔子さんのお弟子さん
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