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第八十九話:天下静謐への道筋(ロードマップ)

二条城の一室。そこには、浪紫と軍師・天羽源鉄斎が、巨大な日の本の地図を挟んで向かい合っていた。

「源鉄斎殿。足利の看板を下ろさせ、『天下総代』の御旗を掲げた今、我々が取るべき進路は明確です。……西へ向かいます」

浪紫は、地図上の京から西へ、一筋の線をなぞった。

「まずは中国路の毛利。そして、その背後を突かれぬよう四国の長宗我部を抑える。この両家を小田の傘下、あるいは協力関係に置くことが第一です。その後、力を蓄えた上で九州へと渡ります」

源鉄斎が、白髭を撫でながら地図を鋭く見つめる。

「ふむ、まずは中国と四国か。順当な一手だが、相手は一筋縄ではいかぬ手練てだればかりよ。いかにして彼らと対峙するつもりか?」

「戦術については、その時の状況、相手の出方次第です。今の段階で細部を詰めすぎるのは、無意味な空想に過ぎません」


(……戦況はナマモノだ。現場のリアルタイム・データを無視した計画ほど脆いものはない。だが、目指すべきゴールへの道筋だけは、明確に示しておく必要がある)


浪紫は、地図上の九州に視線を落とした。

「九州は今、島津、大友、龍造寺らが激しく領地を削り合っていると聞き及んでおります。我らがそこへ至る頃には、勢力図も変わっているでしょう。小田は侵略者としてではなく、天子様の名のもとに、その泥沼の争いを力ずくで止める『仲介人』として現れます。激しく衝突する両軍の間に割って入り、いくさを強制的に終わらせるのです」


「なるほど。敵を滅ぼすための武ではなく、戦を止めるための武か。……それは氏治様が最も喜ばれる形よな」

源鉄斎の言葉に、浪紫は深く頷いた。

「左様です。氏治様は、民が泣くことを何より嫌われます。ならば、我々が作るべきは、小田に従うことが最も安泰であるという道理です。そのための具体的な手立ては、対峙したその瞬間に私が最適解を出しましょう」

「……相変わらず、自信満々よな。よかろう、まずは羽柴秀吉、そして真田の親子を呼び戻そう。彼らには西国平定の先陣として、まずは我らが威を示してもらう」


浪紫は地図を静かに閉じ、窓の外の西の空を見据えた。

(……まずは毛利だ。三本の矢という結束に、小田の掲げる『新秩序』がどこまで通用するか。……さて、市場マーケットの反応を見せてもらおうか)

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