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第八十三話:エンド・オブ・コンサルティング

石山本願寺の最奥、九条の書院。

そこは戦国時代とは思えぬほど整理整頓され、壁には九条が顕如を操るために書き殴った「天下布武へのロードマップ」が貼られていた。


浪紫が向ける懐鉄砲ふところでっぽうの銃口を、九条は冷ややかな笑みで見つめ返した。

「……相変わらずだな、零也。君の選ぶ『小田氏治』という駒には合理性ロジックがない。あんな低スペックな主君を担ぎ上げて、一体何を目指している?」

九条の声は、かつて会議室で浪紫を論破した時と同じ、傲慢ごうまんなまでの自信に満ちていた。

「ロジック、か。お前がこの世界でやったことは、信仰という名の巨大なリソースを食いつぶすだけの『資産の切り売り』に過ぎない。九条、お前はこの世界の真実を何も理解していない」

「真実だと? 笑わせるな。この世界は巨大なシミュレーターだ。そして、私はそのコードを書き換える特権チートを持っている。顕如を神格化し、民衆を狂信へと誘導すれば、兵站へいたんも士気も無限に供給される。これがこの世界の『最適解』だ」

九条は、自らが顕如の背後で操っていた糸の正体を語り始めた。彼はこの戦国時代を、ただの「データ上のゲーム」と断じ、そこに住む人間たちの感情を徹底的に排除していたのだ。

「……お前の言う最適解は、ただの『バブル』だ。実体経済も民の心も無視した急成長は、必ず内部から崩壊する。現に、今お前の足元(石山)で起きていることがその証拠だ」

「黙れッ! それは君が余計なノイズを混ぜたからだ!」


九条が激昂した。同時に、彼の背後から異形いぎょうの武装を施した護衛・黒鉄くろがねが飛び出す。対して、浪紫の傍らに控えていた横谷左近が、影から這い出るように抜刀した。

「左近、頼む。……九条、これで『最終プレゼン』は終わりだ」

「死ね、零也! 私の描いた未来に、君というエラーは不要だ!」

静寂だった書院が、一転して鉄火場と化す。左近の神速の剣が黒鉄の重厚な鎧を切り裂き、九条が隠し持っていた短銃を抜こうとした瞬間、浪紫の指が引き金に力を込めた。


乾いた銃声が響き、九条の胸に紅い花が咲く。

「……馬鹿な、私が……こんな、バグだらけの男に……」

九条は自らの「計画書」を掴もうとして、そのまま力なく崩れ落ちた。

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