表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/107

第五十二話:要塞の牙、熱き忠義

「鬼柴田」の異名に違わぬ勝家の突撃は、小田軍が後退した第二陣地の柵を、馬ごと踏み破らんとする勢いであった。

「小田の軍師! 理屈を並べる口を閉ざしてやるわッ!」

 勝家の叫びに応じるように、周囲の織田兵が怒涛の勢いで陣内に雪崩れ込む。だが、その瞬間、浪紫はしのゴーグルが冷徹な光を放った。

源鉄斎げんてっさい殿、計算通りです。(トラップ)罠を起動!」

 源鉄斎が采配を振り下ろすと、地面に隠されていた鋼鉄の鎖が一斉に跳ね上がり、織田騎馬隊の脚を絡めとった。同時に、後退したはずの小田兵たちが、左右に展開していた「防盾シールド」を連結させ、勝家の精鋭をすっぽりと包み込む円陣を形成する。

「な、何っ!? 囲まれただと!?」

 勝家が周囲を見渡したときには、すでにそこは「知略のおり」――要塞陣形の内側であった。連結された盾の隙間から、小田の槍兵が整然と突きを繰り出し、織田の武力という「暴力エネルギー」を構造的に削ぎ落としていく。

 一方、右翼で翻弄を続けていた秀吉も、異変に気づき足を止めた。

「……おやおや。権六ごんろく殿を釣り餌に、こちらを引きずり込む算段でしたか。浪紫殿、あなた様は(ロジカル)冷徹すぎますな」

 秀吉は、自分の軍勢を無理に突入させず、あえて一歩引いて戦況を俯瞰した。浪紫の「計算」を、秀吉の「野性的勘」が察知したのである。

「秀吉殿、引きますか。ですが、そちらの退路も(バグ)計算外の事象で塞がせてもらいましたよ」

 秀吉の背後、先ほどまで「一揆勢」として小田を囲んでいた民衆たちが、浪紫の配下の手引きにより、織田の補給路を塞ぐように座り込みを始めたのだ。武器を持たぬ民による、静かなる「封鎖」。

安土城から前線の本陣へと移った信長は、戦場を支配する「音」が変わったのを聞き逃さなかった。

「……勝家が足を取られ、猿(秀吉)が立ち往生か」

 信長は、自身の傍らに並ぶ「新型斉射砲」の砲身を愛おしそうに撫でた。それは、浪紫の持つ連射大筒の機構を模しつつも、銃身を限界まで長く引き伸ばし、火薬の爆発力を一点に凝縮させることで、**通常の鉄砲の三倍を超える「超長距離射程」**を実現した魔改造品であった。

「浪紫。貴様は余の家臣たちの『情熱』までも、自らの(リソース)資源として利用するか。面白い。ならば、その熱さごと、この一撃で蒸発させてくれよう」

 信長自らが砲門の角度を調整した。その照準は、前線で小田軍と揉み合う柴田勝家さえも巻き込みかねない、冷徹極まる「面制圧」の弾道を描いている。

「この射程、この威力……まさに理の外側よ。浪紫、貴様の計算に『余の狂気』は入っておるか?」

 信長の合図と共に、本陣から前線の最深部までを貫く、閃光フラッシュが放たれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ