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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第三章 終わら(せられ)ない借金生活とダンジョン氾濫編

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第五話 奥が深い探索者という職業と祝いの逸品

「まずダンジョンとそこに住む魔物の級分けの仕方については分かるよな?」

「えっと、大体なら。魔物にもステータスがあってそれで大まかに分けられているんですよね。そしてダンジョンは生息する魔物の級に応じて決められる」

「その通り。その詳細はこんな感じだな」


G級 1~15

F級 15~30

E級 30~60

D級 60~90

C級 90~150

B級 150~250

A級 250以上


 なおG級に生息する通常のゴブリンのステータスがこんな感じとされている。


グリーンゴブリン 

ステータス

HP  21

MP  5

STR 11

VIT 10

INT 2

MID 4

AGI 8

DEX 4

LUC 3


 HPMP以外のステータスがどれも15以下なのでゴブリンはG級とされて、そのゴブリンが主に生息するダンジョンもG級と判断される訳だ。


「あれ? でもこれだと上になればなるほど探索者側が辛くなりませんか? 今のトップクラスのA級がランク50くらいでしたよね?」


 その通りで単純に補正値込みのランクアップだけでは上になればなるほど魔物側の方が強くなってしまうのだ。


 ステータスやランクアップの仕様を考えれば今のA級の素のステータスが250を超えている訳がないので。


 そのどうしようもないステータス差をひっくり返す手段は勿論存在している。


 その代表格がスキルだ。


「ランク10以上になると手に入るスキルが一気に増えるんだ。有名なのはSTR強化とかのステータス強化系のスキルだな。これはレベルⅠ毎に該当のステータスが10上昇する」


 つまりレベルⅡなら20、レベルⅩになれば100も増加する訳だ。


 もっともステータス強化スキルのレベルは中々上がらないので、レベルⅩどころかⅤまでいっている奴はトップ層以外でもそうそういないだろうが。


「あとはランク10を超えるとダンジョン産の装備の真価を発揮できるようになる」

「真価ですか?」


 基本的にダンジョン産の装備は装着者の何らかのステータスを上昇させる。防具や盾であればVITが、剣などの物理武器であればSTRなどだ。


 あるいは杖などがINTを上昇させるなどそれは千差万別と言っていい。


 また物によっては特殊な効果を持っているのもある。

 例えば浄化の剣のようにアンデッドに対する特効などだ。


 だがその多くに共通するのはランク10になるまではその効果が発揮されなかったり半減されたりしてしまう点である。


「つまりランク10になったら装備で強化されるステータスが増えて、実質的にステータスが強化されるってことですね?」

「その通り。だからこそランク10になれればF級になれるって言われているんだ」


 勿論半減されても強力な補正を持つ装備を手に入れられればランク10以下でもF級になることは可能だろう。


 だがそんな高性能な装備はかなり値が張る上に装備するのに高いステータスが必要になることも多い。


 それならばそれなりの装備でもランク10になって真価を発揮できるようにする方が効率的だとされている。


 ちなみに俺が前に試練の魔物対策として使っていた浄化の剣は、STR上昇3のみの値段の割には残念な武器だ。


 もっとも特殊効果として付与されている浄化は対アンデッド特効であり、アンデッド相手になら二倍から最大で十倍のダメージを出せる代物なので使いようだが。


 なおその倍率がどうなるかはLUC依存だとされている。


「ああ、なるほど。この話を聞いた人の大半は早くランクを上げようとすることばかり考えるようになるんですね。だからこれまで先輩は私にあえて教えてこなかった」

「言わなくても理解してくれる出来の良い弟子で俺は幸せだよ。それを踏まえた上でこのご褒美を渡そう」


 今の愛華なら大丈夫だと判断したからこそ、この話をしている。


 そしてそんな愛華の見習い卒業祝いの品はこれだ。


「竜殺しの指輪。全ステータスを10上昇させる上に(ドラゴン)系の相手に対するダメージが二倍になるダンジョン産のアイテムだ。二つとない貴重な物だから失くすなよ。言っとくが錬金アイテムじゃないから俺でも同じ物は作れないからな」

「ステータス10上昇って相当な効果ですよね。これって幾らするんですか?」

「俺はドロップで手に入れたから詳細な額は分からないけど、これと同じステータス強化で竜特効の能力がないタイプの装備品がオークションで二、三千万だかで取引されたらしいぞ」


 ちなみにこれは最近の話で昔はもっと高かったらしい。


「二、三千万……しかも錬金アイテムじゃない……!?」


 何故言葉が後半になるにつれてそんなに恐れ慄いているのか。


 これも貴重な品ではあるが、さっきやった獲得ランク経験値倍増ポーションの方が圧倒的に貴重なものなのに。


「念のため言っとくけど売るなよ」

「売りませんよ! てか怖くて逆に売りに出せませんよ! 装備するのも怖いくらいです!」

「なんでだよ。こっちよりさっき経験値アップポーションの方が売りに出せば圧倒的に高くなるはずだぞ」


 それこそ桁が違うどころの話ではないだろう。

 あっちは稀少性から考えるに売りに出せば数億でも済まないレベルだぞ。


 だがその反論を聞いた愛華は遠い目をして語った。


「私、分かったんです。どこかの常識外れな先輩と行動を共にするためには回復薬とかの錬金アイテムを使うのを躊躇してなんていられないって。だって五百万する特別品をたかが親子喧嘩の仲裁のためだけに使い捨てにしようとする人なんですよ? 一々それを気にしてたら胃に穴が開きます」


 だから錬金アイテムの値段については必死に見ないように、そして意識しないようにしているらしい。


 したら何もできなくなるからと。


 錬金アイテムならどうせ常識なんて欠片も持たない先輩がすぐに量産に成功することになるだろう。


 そう思い込むことでどうにか見たくない現実――正確には金額――から目を逸らしているそうだ。


 なんか思った以上にあの思い付きの行動がトラウマになっているらしくて少しだけ申し訳なかった。


「それとなにより云十億とかそれ以上まで行くともはや雲の上過ぎて実感が湧きません」

「そんなもんかね?」


 俺にはよく分からない感覚だが、愛華がそうなんですと断言するからそういうことにしておこうか。


 とはいえこの竜殺しの指輪も実はもっとするのだろうが。


 B級やA級ダンジョンでは下ではボスであるドラゴンが雑魚敵として現れることも珍しくないそうだし、それに効果があるアイテムならトップの探索者も欲しがるだろう。


 そこで競り合いが過熱すれば五千万でも済まないかもしれない。


 これはそのくらいの逸品なのだ。

 まあ今は特別品十本分だと思うと途端にそんな感じしなくなってしまうけど。


「効果が半減する私なんかより先輩が使えばいいのに」

「今の俺はステータス10くらいならランクアップすればどうとでもなる。それに愛華にはそのくらい期待してるってことだ。もしそれが自分に相応しくないと思うなら努力して早く実力をつけてくれ。そのためにはまずは真価を発揮できるようにならないとだけどな」


 これもランク10になるまでステータス増加効果は半減している。


 それでも全部5ずつ上がるから役に立たない訳ではないが、その性能の全てを発揮できないのに変わりはない。


「……分かりました。その期待を裏切らないように頑張ります」


 遠慮しようとする愛華の手にその指輪を半ば強引に握らせることでようやく受け取ってくれた。


 これでよし。


「あれ? でも先輩って協会にこれまで集めたアイテムとか借金のカタとして差し押さえられてるんじゃなかったんですか?」

「ああ、それか。実はそれ、前の森本修二とその一派が襲撃してきた時に身に着けてたんだよ。だから戦利品としてこっそり返してもらった」


 勝手に持ち出したのはブースト薬以外だけではなかったと分かっていたが、まさかこんなブースト薬なんて比べ物にならない貴重品まで持ち出せてしまうとは。


 ここまでいくと協会の管理体制はどうなっているのかと心配になるほどである。


「ええ、それって協会の人にバレたらどうするつもりですか?」

「何を言ってるんだ。それは協会に預けていた物じゃなくて俺が新しくドロップさせたアイテムだぞ」

「ああ、そういうことにするんですね……」

「ちなみにその上で協会には後で預けている物も返してもらうつもりだからな、俺は」


 管理不足で盗まれたなんて言わせない。


 ないならないで弁償するか、代わりとなる逸品を用意するように隆さんには伝えてあるし。


 だから隆さんからは内密で借金返済を遅らせるように頼まれているくらいだ。


 下手に返済されると差し押さえていたアイテムも返さなければならなくなる。

 そうなればそれらのアイテムが盗まれたことも公になるので。


「いやいや、その前に未だにその盗まれたこと自体を隠蔽してるってヤバくないですか?」

「別にいいんじゃないか? 最終的に俺が得するなら」


 別に俺は正義の味方でもなんでもないので協会や日本政府が不祥事を隠蔽しようが、どんな悪事を働こうが興味はないのだし。


 こちらに関係ないのなら知ったこっちゃないのが本音である。


 こういう事情もあって俺は借金を返済するのを待ってくれと頼まれている始末だ。


 金を貸している方が窮地に陥って借りている俺の立場が強くなっているなんて、なんともおかしな話である。


「怖いって。もはやホラーだって、この人の敵を嵌めるのに特化した行動力」

「おいおい、そんなこと言ってると協会から詫びとしてこっそりせしめた金でこの後に行くつもりだった紹介制の高級料理店に連れてってやらないぞ。折角の愛華の祝いだったのに残念だなー」

「先輩カッコいい! その悪辣さと金を稼ぐセンスには脱帽です!」

「ははは、くるしゅうない。くるしゅうないぞ」


 話も一通り済んだので、そんなおふざけの後には愛華のボス周回の番である。


 ステータス上昇指輪も付けたのでこれまでよりも長くやれるはずだ。


 そうして俺がボスを瀕死に追い込んで愛華が止めを刺すという無限ループが、愛華がギブアップする半日ほど続くのだった。


 なおその後にいった高級料理屋は大変美味しかったし、ランク4になった愛華も満足してくれたのでよしとしよう。



五十里 愛華

ランク4

ステータス

HP  27(22)

MP  38(33)

STR 15(10)

VIT 16(11)

INT 26(21)

MID 20(15)

AGI 17(12)

DEX 25(20)

LUC 18(13)

スキル なし

ジョブ 薬師(MP2 INT2 DEX2 LUC2)

装備 竜殺し指輪(全ステータスプラス10)

*ランク不足のため装備の効果は半減

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― 新着の感想 ―
[一言] オール10にしては安いな、普通に数が多い? 竜殺しもたったの五千万予想だし。 愛華はマジで愛人枠だな、何故かそうなった。
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