第十三話 ダンジョンの種類と何故か順調に進む撮影
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やったー!!
今回やって来たのは前にも来た霊園ダンジョンだ。
ここなら浄化の短剣があれば魔物を倒すのは容易い。
それに襲撃があることを考えればこういった転移ダンジョンが望ましい。
ダンジョンには大きく分けて三つの種類がある。
最も多いのは転移陣などが入り口になっていて、現実世界とは別のどこかの空間にダンジョンが存在している転移型ダンジョンと呼ばれるタイプだ。
これは氾濫や崩壊が起こる心配はないので放置しても問題ない比較的安全なダンジョンだ。
その次に多いのが、前のゴブリンダンジョンのように現実の建物や空間が変化してダンジョン化する変異型ダンジョン。
こちらはダンジョンごとに決められた間隔で魔物が生成されるようで、放置し続けるとダンジョン内に魔物が溜まり続ける。
そしてそれが飽和した時、氾濫と呼ばれるダンジョン外に魔物が溢れ出る災害が発生する訳だ。
勘九郎の奥さんが被害を受けたのもこれ。
この現象が解明されていない時期のことだったので致し方ない面もあるのだろう。
実際ダンジョンが出現した初期はこの現象が世界各国で起こったと聞く。
この変異型ダンジョンの気を付けるべき点は、建物などがダンジョン化している場合はそれを外から破壊しようとしてはいけない点だ。
消し去るならダンジョンコアを破壊しなければならない。
でないと崩壊という氾濫とはまた少し違う現象が起きてしまうのだ。
仮にゴブリンダンジョンとなってしまったマンションを爆撃機でも使って爆破して強引に破壊した場合、そのダンジョンが崩壊して中に存在していた魔物が全て一気に外に出てくることになる。
単に余剰分が溢れ出るよりももっと多くの魔物が一度に出てくるのだから脅威度的にはこちらの方が上だろう。
もっともダンジョンやダンジョンコアなども崩壊した際に消え去るので出てきた魔物は倒せば終わりとなる。
それは言葉にするほど簡単ではないのだが最後のよりもずっとましなのだ。
最後が侵食型ダンジョンと呼ばれる現実世界がダンジョンに侵食される超絶最悪なケースだ。
氾濫や崩壊との大きな相違はダンジョン外でも魔物が弱体化しない点である。
氾濫などの場合はあくまでダンジョンの外に魔物が溢れ出した形になるので、そうなった時点で魔物達もステータスなどが半減する。勿論それは探索者も同じだ。
だが侵食型ダンジョンは現実世界を侵食という言葉が指し示すように、その一帯がダンジョンへと変化するようなもの。
だから侵食型ダンジョンの影響下にある空間内では魔物は一切の弱体化をしない。
逆に言えば探索者もその空間内では弱体化しないのだが、一般人からすれば魔物が強い方が脅威なのは明らかだろう。
しかも侵食ダンジョンは時間経過でその範囲を広げていく上に、範囲が広がれば広がるほど出現する魔物が強くなっていく。そしてダンジョンだから魔物は幾ら倒しても再出現するのだ。
つまりダンジョンを破壊しない限りは、延々と強化され続ける魔物の相手をしなければならなくなるのだ。
しかもそれだけではない。
侵食ダンジョンの最も厄介なところがダンジョンだからボスが存在するのに、その現実世界を侵食して広がり続ける性質上のせいなのかボス部屋が存在しない点である。
ボス部屋がないのでまず領域内に存在するどの魔物がボスなのか簡単には判別がつかない。強力な個体が複数いればそのどれがボスなのか判別するのは簡単ではないのだ。
勿論ボス自体は絶対に領域内に存在しているから適当に倒していればいつかはダンジョンコアが出現する。
ただしこれまたボス部屋がないせいなのかダンジョンコアが現れるのはボスの傍とは限らない。
侵食ダンジョンの領域内のどこかには必ず現れるのだが、それがどこなのかは現れてみないことには分からない上に何度か出現させた場合は別の場所に現れるケースがあることも確認されている。
だからボスが判明した上で倒しても、次はどこに現れるか分からないダンジョンコアを発見しなければ壊せないという事態に陥ることになる訳だ。
ここまででも侵食ダンジョンの質の悪さは嫌でも分かるだろう。
だが本当に厄介なのはここからだ。
他のダンジョンと同じようにそのどこかに現れたダンジョンコアを見つけて破壊することで侵食型ダンジョンは消滅させられる。
だったら面倒な考えは全て放棄して、しらみ潰しでボスと思われる魔物を退治していけばいい。そうしていればそれなりに時間は掛かるかもしれないが、いつかはどこかに現れるダンジョンコアを見つけられるだろう。
幸いなことに時間経過による魔物の強化は急激なものではないので一、二週間くらい経たない限りはそう脅威になる奴が現れることはない。だから大丈夫。
そう考えた奴も過去にはいた。
だがよく思い返してみて欲しい。ボス部屋とそこに現れるダンジョンコアがどういう仕組みだったのかを。
ボスを倒せばダンジョンコアが出現する。
そのダンジョンコアにボスの魔石を返還すればボスを作るエネルギーを充填できるのか即座に新たなボスが現れる。
ではそうしないでいた場合はどうなるのか?
その答えは、ダンジョンコアは出現から一時間ほど経過するとその場から姿を消してしまう、である。
新たなダンジョンボスを生み出すためのエネルギーを貯めるためだと言われているがその真偽は分からない。
重要なのはそれではダンジョンは破壊されないということだ。
しかもボスの再出現には最低でも丸一日は掛かるというのに。
ここまで来れば分かるだろう。
仮に早急にボスを倒せたとしても、そこから制限時間の一時間以内にダンジョンコアを発見して破壊できなければ逆に次のボスが自然に再出現するまでの間、どう足掻いても侵食ダンジョンを消滅させることはできなくなる訳だ。
その間にも領域はどんどん広がって魔物も強化される。領域が広がれば広がるほど、そのどこかに現れるボスもダンジョンコアも見つけるのが困難になっていく。
だからこそ侵食ダンジョンは発生初期の段階で適切な対応をしなければならないとされている。
過去にはそれが出来なかったせいでとある国が丸ごとその領域に呑みこまれたこともあるというのだからその脅威の大きさも分かるだろう。
唯一の救いはこの五年という期間でも侵食ダンジョンは数えるほどしか発生していないことだろう。
それほどに滅多にない現象ではあるのだ。
なお日本ではまだ一度も起きていない。
ちなみに国を一つ呑み込むほど広がった侵食ダンジョンを消滅させた、今では英雄と呼ばれる探索者は今でも現役で、勿論そいつはその功績もあってA級である。
まあ侵食ダンジョンなんて滅多に現れるものではないから気にし過ぎても仕方がないのかもしれないが。
(とにかくそういう訳もあって襲撃されるのは転移型ダンジョンじゃなきゃいけない。万が一、中で暴れ過ぎて崩壊するなんてことになったらヤバいからな)
変異型となったダンジョンは構造などが強化されてそう簡単に破壊できないようになるが中には特定の条件を満たすと崩壊してしまうこともあるのだとか。
その万が一を引かない為にも襲われる場はそういう意味では安全な転移型ダンジョンでなければならない。
だからこその霊園ダンジョンだ。
ここなら不人気なおかげで人目も少ないし。
「おお、これがステータスカードか!」
「へえ、本当に何もない空間から現れるんですね」
そんなこちらの考えなんて知ってか知らずかいい大人が騒いでいた。
その様子をしっかりと愛華が撮影している。
てかおい、常務も撮影する側じゃなかったのか。
どうして社長と同じようにはしゃいでいるんだ。
「おめでとうございます、社長! 流石ですね!」
愛華も愛華でちゃっかり社長相手にゴマを擦ろうとするな。
人が近付いてくるグールを徹底的に排除しているからいいものを。
本来ならレッサーゴーストだけじゃなくてそいつらの相手もしなきゃいけないんだからな。
「まあいいや。常務も早めに習得して貰えますか。どうやらそろそろ本命が来るようです」
幸いと言うべきか襲撃者が遂にやって来たようだ。
朱里達に頼んで居場所を漏らした甲斐があったというものだろう。
しかも配下の探索者でも連れているのか一人ではない。
どうやらあちらさんは本気で俺のことを殺る気のようだ。
無論、俺は襲われて黙っているようなタマではない。徹底的にやり返してやる。
(とは言えいきなり撃退する訳にもいかないんだよな)
襲撃されたという事実を残すためにももう一芝居打つ必要があるのだ。
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