第十話 キングサハギン出現の裏事情
次の更新は17時です。
水銃のスキルを手に入れた後も俺はサハギンを狩りまくっていた。
残念なことに相変わらず魔物の血肉を解体して手に入るのは錬成砂や水ばかりだったので新しい素材を手に入れることは出来なかったが、今回は経験値稼ぎが主目的なので問題ない。
粗方の波打ち際にいる奴らを狩った後は海の中に潜ってみたりもした。
水中戦用の装備は用意してこなかったから長時間は戦えないが、それでもステータスで強化された肉体なら十分や二十分くらい息をしないことはどうということはない。
水中戦なんて久しくやっていなかったことから、意外と楽しかった俺は調子に乗ってサハギンを狩り続けた。水中でも今のステータスならサハギンなど相手ではない。
だからそれ自体は何も問題ないはずだった。
だがまさかその行為がボスの特殊行動を引き起こす条件だったとは。
(恐らくは手下のサハギンを一定数狩るとボスであるキングサハギンがボス部屋から出てくるって仕様か?)
ダンジョンの中には様々な仕掛けが施されており、時にこうした条件を満たすことでボスが通常とは異なる挙動を取ったり、あるいは強化や弱体化が入ったりすることがあるのだ。
とは言えここのサハギンダンジョンでそんな条件があるなんて全く知られてなかったから、俺もボスが外に飛び出たことに気付くのが遅れてしまった。
気付いた時には転移陣近くのパーティに襲い掛かった後である。
(やべえ、俺のせいで死人が出るのは不味すぎる)
受付に顔を見られているから彼らが戻ってこなかった場合、俺が殺した可能性があるとして調査される可能性がある。
そうじゃなくても心情的にこっちがやらかしたことに巻き込んで見殺しにするのは寝覚めが悪過ぎだ。
そういう訳で俺は全力でそれを阻止した。
その最中にカップルの彼氏らしき人物が恋人を命懸けで逃がそうとするなど男気がある行動を取る瞬間を目撃した訳である。
そして怪我をしたのも元を辿れば雑魚狩りをしていた俺の責任なので回復薬で手を打っておいた。まあ素直にそれを言って反感を持たれたら黙ってもらえなくなると思ってそれは言わなかったけど。
(現状ではそれなりの値がする回復薬を無償で提供したし、スカウトしたことと合わせてノーカウントってことで)
装備や動きからしてあれは恐らくGかF級探索者。
会社としては今すぐスカウトするほど優秀な人材とは言えないかもしれないが、根性はあるみたいだし鍛えれば使い物になりそうではある。
縁があれば彼と共に仕事する日が来るかもしれないが、まあそれは彼がどう決めるかに掛かっている。
どうせ気になってこの後に俺のことを調べたらどういう評判なのかはおのずと知るだろうし。その上で評判を信じて俺を信頼できないとして名刺を捨てればそれまでの話となる。
(それにしてもボスの魔石でもダメとなると空のスキルオーブに中身を込めるためには何が必要なんだ?)
大きな期待はしていなかったがボス個体であるキングサハギンの魔石でもスキルオーブはうんともすんとも言わない。これでもダメとなると他に何があるだろうか。
(……まあ錬金真眼のレベルが上がればいずれ分かるか)
思い付かなかったので棚上げすることにした。
そしてサハギン狩りを再開する。
あの程度では疲れたりしない上にまだランクは上がっていない。
この程度で帰れるわけがないだろう。
(それにもう一回、雑魚サハギンを狩った場合はどうなるのかも気になるしな)
経緯は特殊だったがボスを討伐したから多分ボス部屋ではダンジョンコアが出現しているはず。だがボスの魔石は俺が保持しているし、時間もほとんど経過していないからまだボスは再出現していないだろう。
この状態で特殊条件を満たせばどうなるのか。それが気になった俺はこれまで以上の早さで雑魚を狩っていく。途中で警告しにきた監視員とは知らないふりと適当に話を合わせて誤魔化して。
残念なことに先ほど以上に雑魚を狩ってもキングサハギンやその他のボスとかが現れることはなかった。
(あーあ、ちょっとだけ更に強いボスが出るとか期待したのにな)
やはりダンジョンコアにボス魔石をダンジョンコアに返却しないと新しいボスはすぐには現れてくれないようである。
こんなことなら海の底にあるサハギン城に行くための装備を用意してくるのだった。借金して金がないという設定なのであえてそういうのは買わなかったのだが失敗である。
「まあ、それはまた今度試せばいいか」
元々雑魚サハギン狩りで経験値を稼ぐつもりだったので別に予定が狂ったとかではないのだ。むしろボスを倒せた分だけお得だったとここは納得しておこう。
そうして丸一日ほどサハギン狩りをした結果また一つランクが上昇した。
その際に手に入れたレシピはなんとサハギンの仮面である。素材は幾らでも手に入れられたのですぐに作ってみた。
(これって倒した魔物が手に入るレシピにも影響するってことなのか?)
それとも単なる偶然なのか。
また一つ調べるべきことが増えた俺は面倒と言いながらも興味津々なのを隠せない笑みを浮かべながら帰還するのだった。
八代 夜一
ランク9
ステータス
HP 104
MP 96
STR 92
VIT 87
INT 89
MID 105
AGI 90
DEX 91
LUC 82
スキル 錬金レベルⅢ 錬金素材作成レベルⅢ 錬金真眼レベルⅡ 霊薬作成レベルⅠ アルケミーボックス 錬金術の秘奥 剣技覚醒 水銃レベルⅠ
ジョブ 錬金剣士レベルⅢ
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