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第二章 継続する借金生活と霊薬騒動

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幕間 とある幸運なF級探索者(22歳男性)の証言 前編

次は8時に更新します!

 湘南の海に存在しているG級のサハギンダンジョン。本来なら稼ぎにならないこんなダンジョンには来ないのだが今日は知り合いの頼みだったので特別に来ている。


「うわー、半魚人ってマジで見た目キモイね」

「うん、本当にグロい。まあ魚のくせにそんなに生臭くないのは助かるけど」

「えーウチは結構可愛いと思うけど」


 ダンジョン内だとは思えない呑気な会話をしているのは、少し前に講習を受けてG級になったばかりという新人探索者三人組だ。

 三人とも都内の大学に通う女子大生で本格的に探索者活動をしている訳ではない。


 世の中には小遣い稼ぎというかバイト感覚で探索者をやってみようとする奴も存在しているのだ。


 そう、目の前の彼女達のように。


「なあ。お前の彼女が探索者になったから手助けしてほしいって話だったよな? それなのにどうして彼女達は写真を撮るだけで一切戦おうとしないんだ?」


 三人組の内の一人が高校の同級生だった人物の彼女であり、今日は彼女達の初ダンジョン攻略のはずだったのだ。


 何故か今のところ実際に戦うのは俺とそのパーティメンバーの二人だけだが。


「いやー悪い。あいつとその友達がどうしても半魚人(サハギン)の写真を撮りたいって言うからさ」

「お前なあ……」


 こいつ、最初から俺達にサハギンの相手を押し付けるつもりだったらしい。


 まあF級のこいつ一人でG級三人のお守をするのは負担だったのは分かる。

 だから同じF級の俺達二人をこうして嘘ついてまで呼び出した訳だ。


「騙したことは謝るって。でも本当のこと言ったら来てくれなかっただろう?」

「……はあ、今回だけだぞ」


 昔の知り合いだから騙すような真似しないと確認を怠った俺も悪いとしておこう。それにこれまでの会話を聞く限りでは、彼女達は純粋に写真を撮るのを楽しみに来ているだけのように思える。


 つまり恐らくは目の前の奴が都合の良いように彼女達に説明していたに違いない。

 今日はあいつらがサハギンの相手をしてくれるから全部任せて大丈夫とかいう風に。


(くそ、LUCばっかり高くても全然幸運なことが起きないじゃないか)


 話が違う以上はここで帰っても問題はない。


 だけど楽しそうにはしゃいでいる彼女達が悪くないのにここで置いていくのは可哀そうだから仲間と相談して今回の不満は心に仕舞っておくことにした。


「だけど次からはもうお前の頼みは聞かないからな」

「まあ待てって。俺がどうしてお前達二人しか呼び出さなかったか分かるか?」

「どうせ騙せたのが俺達だけだったとかだろう?」

「違うって。よく考えろよ。この場にいるのは三対三の男女だぞ? そしてダンジョンの外には安全に遊べる海が広がっている。ここまで言えば分かるな」

「……詳しい話を聞こうか」


 前言撤回。


 三人ともかなり容姿のレベルが高いし、そんな彼女達と知り合って遊べるとなれば話は変わってくる。


 高位の探索者ならガッツリ稼いで女遊びもしているのかもしれないが、しがないF級ではそんなことはできやしない。むしろ男が多い探索者界隈では出会いも少ないくらいだ。


 そんな状況で可愛い女の子と知り合えるのなら多少の嘘など問題ではない。

 むしろ感謝してもいいくらいだ。


「ちなみに俺の彼女以外の二人はフリー。しかも自分で探索者をするくらいだ。差別意識なんてない。むしろ戦う姿を見せればカッコいいって評価してくるはずだぞ」

「よし、お前は休んで戦いは全部俺達に任せろ」


 良いように乗せられるのは分かるがそんなことはどうでもいい。こちとら彼女が欲しくて切実なのだ。それが無理でも時々でも遊べる女友達が欲しい。


 むさい男の友人には困っていないので。


 そこから俺は張り切ってサハギンの相手をしてみせた。


 G級なり立ての彼女達もいるから流石に海辺に行くのはリスクが大きいので砂浜の方に釣りだした上で安全に。


 陸地でのサハギンなどゴブリンとそう変わりない雑魚同然の相手。それなのに可愛い女子から倒す度に歓声と称賛を送ってもらえる。


(最高だ。こんな探索者人生を送りたかったんだ、俺は)


 パーティメンバーとは相談の上で狙う相手は決めてあるので、自然と俺は一人の女の子と会話する機会が多かった。


「ねえ、探索者になれば美人になれるって聞いたんだけど本当なの?」

「美人になれるかどうかは知らないけど肌とかは綺麗になる人が多いらしいぞ。VITとかHPのステータスがそういうのに影響をするらしい」

「そっか。じゃあもう少し探索者として頑張ってみよっかな。ガチでやるのは怖いし無理だけど」

「肌が綺麗になるのがそんなに魅力的なのか? 今でも十分に綺麗だと思うけど」


 これは決してお世辞ではない。だが彼女はそうは取らなかったようだ。


「えーそう? もうお世辞でも嬉しいこと言ってくれるじゃん」


 けど機嫌は良さげなのでいい感じではないだろうか。


 こんな青春みたいな会話ができるなんて騙して連れてきたあいつには感謝しかない。


「ねえ今度、別のダンジョンに潜ることがあったら誘ってもいい? 私達だけじゃやっぱり不安だからさ」

「ああ、勿論。俺なんかで良ければいつでも呼んでくれ。力になるよ」


 そんな約束も交わせて午前は非常に有意義な時間を過ごせた。


 ちなみに午後は彼女持ちの奴の計らいでダンジョンの外の海で遊ぶ予定となっている。やはりあいつは心の友と呼ぶに相応しい相手だったようだ。


 そうしてこれからの楽しい時間を期待して帰還の準備を進めている時だった。


「あ、スマホ忘れた!」


 転移陣の前で俺と仲良くしていた彼女がそんなことを言い出したのは。


「ちょっと取ってくる!」


 そう言って一人で駈け出そうとするので慌ててそれは止めた。


「いくらG級でもここはダンジョンだからな。何かあったら不味いし俺が付いてくよ」

「そっか。そうだね。ありがとう」


 そんなことを考えもしていなかった様子を見ると、本来は探索者として警戒心が足りないと注意しなければならないのだろう。


 だが素直な感謝の言葉と共にニッコリと微笑まれるとそんな無粋はことを口に出すのは憚られた。


 なにより可愛いし。


「えーと……あ! あったよ」


 元々何かあってもすぐに脱出できるように俺達が居た場所は転移陣からそこまで離れた場所ではないので時間は掛からない。少し探せばスマホも見つかったので後は戻るだけ。


 そのはずだったのに急に何かの影が俺達を覆う。


 何故か分からないがその瞬間に嫌な予感がして気付けば彼女を抱えてその場から飛び退っていた。それが正解だったことはすぐに証明される。 


 ドンっ! と俺達が居た場所にその巨体で降り立ったのは巨大なサハギン。


 いやこれは普通のサハギンではない。


「キングサハギンだって!?」


 そこにはサハギンダンジョンの(ボス)が憤怒に塗れた表情を浮かべて立っていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] てにをはの抜けが多いですね。
[良い点] サハギンの嫉妬は見苦しい
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