表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第二章 継続する借金生活と霊薬騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/247

第九話 半魚人の魔物 サハギン

 このダンジョンは円形の形をした一つフロアだけしかないダンジョンだ。その半分ほどが陸地である砂場でもう半分が海みたいになっている。


 見る限りでは地平線や水平線が続いているように思えるが、途中で壁があってその先には進めないので注意が必要だ。


 そしてここにいるのはサハギン。半魚人の魔物である。

 

 G級の中では比較的強い魔物だ。

 しかも水中で戦う場合はF級の魔物に匹敵するとも言われている。その分なのか陸地の砂浜で戦うと弱体化するので安全を期すなら砂浜まで誘導して戦うのが吉だろう。


 もっとも俺はそんなことする必要はないのでガンガン海の方で戦うが。


(ん? 砂浜の方に他の探索者集団がいるのか)


 ここもあまり人気がないダンジョンのはずだったのだが、運が悪いことに先客がいたようだ。もっともここはワンフロアな代わりに非常にエリアが広いので離れたところでやればいいだろう。


 そうしてその集団と接触することはせずに場所を移す。


 陸地で、しかもすぐに逃げられるよう入口近くで戦っていた辺りから察するにそこまでの腕はない探索者だろう。だから離れた海辺に行けば遭遇することもあるまい。


「ギョギョ」


 海辺を歩くこと少し、ゴツゴツとした岩場周辺にいた半魚人の名の通り頭と肉体が魚でありながら人型でもあるサハギンが、生き生きとした様子で獲物である俺を待っていた。


 その鱗は水で濡れており元気満タンなのがよく分かる。


 こいつらは陸地でしばらく戦っていると鱗で覆われた肉体が段々と干上がっていき、その乾燥具合によって弱体化も進む。


 だが逆に水辺や湿地帯などでは潤いに溢れた肉体になることで強化されて並のG級よりも強くなる。


(通常のサハギンが二体か)


 無手のサハギンの攻撃方法は主に爪や牙での物理攻撃だ。

 仮に武器を持っているタイプでもそこに武器攻撃が加わるだけ。ただしそれはあくまで陸地の場合の話である。


「ギョ!」


 そんな鳴き声と同時に一体のサハギンの足元近くの水溜まりから水の弾丸がほとんど無音で発射された。

 それを反射的に首だけ傾けることで躱したら後ろの岩に命中してその岩肌をそれなりの深さで抉っている。


 これは水銃というスキル攻撃だ。


 この威力から分かる通り普通の人間がこれを受けたら最悪は体に穴が開く。運よく骨などの硬い部分にあたっても骨折などの重傷は免れないだろう。


 もっともこいつらの水を利用したスキル攻撃は強力な反面、水が周囲に存在しないと使用できない。また水があっても体が乾いていると力が出ないのか使用してこない。


 だからこいつらは常に水辺にいればいいものを何故か定期的に水辺を離れて砂浜の方に出向いてくるのだ。それで釣りだされてやられるのだから頭が悪過ぎる。


 やはりG級の魔物だからかINTは高くないらしい。


 とは言え今この場にいるサハギン達にそれは適用されない。


「ギョギョ!」

「ギョギョギョ!」


 周囲に弾となる水は大量にあるのだ。


 二体のサハギンはその潤沢な水を惜しげもなく使用して弾丸を連続で放ってくる。それでも海という水の貯蔵庫があるから弾切れしないのは奴らにとっての強みと言える。


(まあでも今の俺にはそもそも効かないけどな)


 先程は反射的に躱したがステータス的に当たってもダメージは皆無。もっともそれでも攻撃を受けようとは思わないが。だって服が濡れるし。


 高まったステータスで集中すると周囲の動きがスローモーションになったかのように遅くなることがある。その遅くなった世界で俺は弾丸の雨霰を全て視認した。


 錬金真眼の視力強化によってこれまでよりもさらに鮮明で正確に。それこそ発射された弾丸がどのような軌道を描いてどういう風に着弾するかが分かるくらいにはっきりと。


 その状態で当たる訳がない。弾くことすら不要。


 全てを掻い潜って接近すると一体は唐竹割りして即殺。血が噴き出る前に死体はすぐに収納して解体した。


 仲間を瞬殺されて動揺しているもう一体の方は足だけ斬って逃げられなくする。こうするのは試したいことがあるからだ。


「うーん、やっぱりダメか」


 試したい事とは空のスキルオーブのことだ。これまでにも倒した魔物の肉体や魔石を入れようとしてみたり、手に持ちながら魔物を倒してみたりと色々試してみたのだが相変わらず変化はなし。


 今は生きている魔物やその血液に接触させてみたりして反応を見ているのだがやはり何も起こらない。どうやらこれも違うようだ。

 俺はこれが空ということから何らかの方法で中身が入れられるのではないかと予想している。


 だが今のところはその切っ掛けすら掴めていないのが実情だ。


(レベルⅡになった錬金真眼でも詳細不明なままだからなあ)


 錬金真眼はダンジョン関連の鑑定能力を有しているがそれも万能という訳ではない。

 今回のようにレベルによって鑑定できない対象もあるのだ。


「ギョ!」


 生きている以上は抵抗もある。サハギンは足を失って動けないながらもその血を操作して至近距離の不意打ちによって俺を射殺そうと目論む。


 その攻撃が来ることを察知した俺は一つ思いついたことを試してみた。


「これもダメかー」


 そのスキルによる一撃を空のスキルオーブで受けてみたのだ。


 だが変化は表面に僅かに傷がついただけ。

 幸いなことに壊れてはいないので大丈夫ということにしておこう。


 あとは考えられるのはこれを持ってスキル習得条件を満たすとかだろうか。


 幸いなことにサハギンが持つ水銃のスキルは、サハギン系の魔物を百体討伐することで手に入る。というかそれも狙ってここに来たのだが。


「とりあえず残り98体か。これでもダメなら後は何があるのかねえ」

 

 もう生かしておく必要もないのでさっくりと止めを刺して次へと向かうとしよう。

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ