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第二章 継続する借金生活と霊薬騒動

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幕間 薫の行動原理

 私のことを変人や変態などと呼ぶ人は多くいる。それは非常に正しいと思うので反論のしようもない。


 だから言って今の自分を変えるつもりは更々ないのだが。


「うーん、ユニコーンもバイコーンも日本のダンジョンにはいないのか」


 だとすると自分で手に入れるのなら海外まで遠征しなければならなくなる。


 普段なら恋人たちを連れて海外旅行(バカンス)のついでに手に入れることも考えただろうが今はあまり乗り気になれない。


(今の日本には面白い事が起こりそうだからね)


 あの夜一がこれから巻き起こそうとしている騒動は絶対に面白いに決まっている。

 それを見逃すなんてもったいないことは何があろうと避けなければ。


(仕方ない、オークションで競り落とすか)


 費用は嵩むがそれは必要経費と割り切るとしよう。

 そのくらいでどうにかなるような資産ではないのだから。


(あとは夜一から種を貰えれば最高なのだけれど)


 何度もアタックしているのだが今のところその返答は芳しくない。


 これは冗談で言っているのではなく本気も本気。

 何度か酔わせて既成事実を作ろうと画策したこともあるのだが、彼は酒にも滅法強いから失敗ばかりだ。


(あそこまで美しい存在は中々ないから是非とも手に入れたいけど、彼はそう簡単に私の物にはなってくれないだろうからね)


 私にとっての美しさとは顔などの外見だけで決まるのではない。その鍛え抜かれた肉体や何者にも屈せず揺るがぬ精神などもその対象となる。


 というか私としてはそういう表に出ない部分こそ重要なのだ。


 無論のこと顔が私好みのイケメンや美女であることに越したことはない。

 だがそれだけの奴など面白くもなんともないのもまた事実。


(本当に美しいものは総じて何らかの形で興味深い。見ているだけで心がワクワクとさせられる。私が真に求めるものはそれだ)


 そういう意味で八代夜一という相手は肉体的にも精神的にも申し分ない。

 そして面白さとしてもこれまで出会ってきたどの人物よりも彼は群を抜いていると言えるだろう。


 いつまで見ていても飽きないああいった存在は滅多に現れるものではない。


 だから本音を言えば彼を手に入れて独占したい。

 椎平や朱里のような恋愛という感情とはまた違うかもしれないが、私も彼に執着しているという点では似たようなものだろう。


(類は友を呼ぶとはまさにこのこと。至言だね)


 私も椎平も朱里も生まれであったり境遇であったり性分であったりと色々な面で普通とはとても言えない。


 もっとはっきり言ってしまえば異常者だ。社会不適合者と言っても何ら差し支えないだろう。


 唯一人優里亜は一般人と比較すれば普通ではないが、良くも悪くも常識人としての部分が残っている。


 だからこそ彼女は夜一のことを本能的に恐れ、人としてまともな上で頼りがいのある哲太に惹かれたのだろう。


「ねえ、何してるの?」

「ああ、ごめんね。起こしてしまったみたいだね」

「それはいいけど、何だかいつもより楽しそうな顔してるのね」

「そうかい? 君が誠心誠意真心を込めて慰めてくれたおかげかな」


 スマホでユニコーン素材などが出品されるオークションがないか調べていたら横で眠る恋人が起きてしまったようだ。


 その服を一切纏わない肢体は相変わらず実に美しい。


 彼女はモデルをしており、その外見もスタイルも群を抜いている私の自慢の恋人の一人だ。


 そんな自慢の彼女と今日もこうして愛を深めていた訳で実に良い時間を過ごせたと我ながら満足している。


(本当はあのまま夜一を連れ込むために予約したホテルだったのだけどね)


 それは目の前の恋人も知っている。その上でまた失敗したと落ち込んでいたら慰めにきてくれたのだ。


 そんな優しさも寛容さも兼ね備えた素晴らしい恋人のおかげで元気は十分に取り戻せた。


「それにしても薫が本気で仕掛けてもここまで手に入れられない人がいるのね。どんな人なのか私も一度会ってみたいかも」

「それは止めてほしいな。君が彼に惹かれたら困る」

「あら嫉妬? 珍しい」

「それもあるにあるけど、それよりも物理的に排除してきそうな人物に何人か心当たりがあるからね。寝取られるのは興奮する面もあるからまだいいとしても流石に恋人に死なれたら寝覚めが悪い」

「まあ怖い」


 この発言を聞いてもそれだけで笑ってすませてしまえる彼女は大物だろう。

 もっともそうでなければ私のような奇人変人の類との恋愛なんて続かないだろうが。


「さてと、優しい君のおかげで私の傷ついたメンタルも回復したことだ。そろそろ動くとしようかな」

「今度は何をするの? また例の彼にアプローチ?」

「いや、それはまた次の機会にするよ。それよりも協力すると約束したのだから多少は仕事をしないとね」


 そう言いながら私はある人物にメールを送った。


 その人物はこれまでに何度も是非会って食事をしないかなど私にアプローチを仕掛けてきた。


 残念ながら美しいとも面白いとも思えなかったのでこれまでは適当にあしらっていたのだが、今はこうしてその誘いに乗ってあげることにした。


「森本修二。顔は多少好みの部類だけど今のところ評価できる点はそれだけ。権力者の父親の威を借るだけが取り柄の典型的な小物。それなのに自分は何でも出来る特別な存在だと勘違いしている分を弁えない愚か者だね」


 はっきり言って会う価値は皆無。

 普段ならどれだけ金を積まれても会うことはなかっただろう。


「あなたがそんな人と食事までするなんて一体何をするつもりなの?」

「もし万が一直接会って評価が変わったのならそれはそれで私の物にする。だけどそれはないだろうからやることは実質的には一つだけさ」


 そう言って私は愛しい恋人に口づけをした後にこう述べた。


「道化は愚かに踊っているところを見て楽しむものだろう?」

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