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第二章 継続する借金生活と霊薬騒動

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第四話 変わり者の来訪

 着実に副本部長達を追い詰める準備を進めていたある日のことだった。


 そいつが急に俺のことを呼び出したのは。


「悪いね、忙しいだろうに急に呼び出したりして」

「別にそれは構わないけど、急用とは何なんだ?」


 待ち合わせの喫茶店に相手がやってきた。


 呼び出してきたのは毒島 薫。

 かつてのパーティメンバーの一人だ。


「いやね、これまでは私は英悟や勘九郎たちと違って最低限の協力しかしてこなかっただろう?」

「まあ別に昔馴染みだからって全面的に協力しなきゃいけない訳でもないからな」


 確かに薫は勘九郎とは違ってこちらに恩がある訳でもないから、協力も積極的というわけではなかった。


 ただ最低限とは言っても俺の借金の保証人になるなどしてくれている。


 それだけでも十分助かったし、だからこそその分の見返りは与えるつもりだった。


「けどこれからは私に出来ることは何でもしようと思ってね。やっぱりかつての仲間に協力するのは大事だと思いなおしてさ」

「いや、胡散臭すぎるんだが」


 こいつは自分の興味のないことには本当に無関心な奴だ。


 それこそ中位高位の回復薬という世界を揺るがす物の存在を知っても、作成できるようになったら私にも売ってしてほしいと言ってあっさり終わりにするくらいに。


「おいおい、かつての仲間をそんな風に疑うなんて心が痛まないのかい?」

「いや全く」

「むう……」


 そこで膨れっ面になって可愛い子ぶるな。


 本性を知らない相手からすればその美貌とのギャップに心動かされるかもしれないが、付き合いの長い俺からすれば狙ってやっているのが丸わかりで意味ないぞ。


「分かった。私の身体を夜一にあげよう。具体的には恋人になってあげる」

「いらんわ。てかお前の恋人ってもう既に何人もいるだろ」

「今は男性が二人、女性が五人だね。夜一が加われば男性が三人になる」


 言葉だけ聞くと実に爛れた不健全な関係に思えるが、別にこいつは騙して関係を作っている訳ではない。まあだからこそある意味ではより一層質が悪いと言えるかもしれないが。


「くっ仕方ない。そこまで言うのなら夜一の子供を産んであげようじゃないか。大丈夫、一人でも産み育てる資産はあるから夜一は子種だけくれればいい」

「種とか言うな。この色情魔が」

「別に性欲とかで言っている訳じゃないのだけどな。だって美しいものは誰だって好きだろう? 私はその傾向が人よりもほんの少しだけ強いだけさ」


 さも譲歩しているかのように言っているが、この子供を産んであげる発言は大分前から言われているので別に譲歩でもなんでもない。


 むしろ迷惑かけないからどうだとしつこいくらいに誘われているからあっちの望みを叶えるだけだ。


 こいつは自分が美しいと感じた存在は人でも物でも手に入れたがる変人だ。


 しかも人の場合はその相手との子供は更に美しくなるはずだからとこうして外面など気にすることなく種を寄こせと言ってのける変態でもある。


「子供が欲しければその男の恋人である二人とやらと作ればいいだろうが」

「うーん、彼らも私が欲するくらいに美しくはあるんだけど、子供を作る対象までは色々と足りないかな。今後の成長次第ではなくもないけどね」

「相変わらず理解できないな」

「君達だって結婚する前に恋人としては付き合って性格とか身体の相性を確かめたりするだろう。それと同じことさ。ましてや子供を産む相手として認めるとなれば恋人よりも基準は厳しくなるのも当然のことに決まっている」


 そいつらは付き合う相手としては合格でも子供を産む対象としては見られないということか。


 相手側がそのことをどう思っているのか知らないで口を挟む気はないが、それを公然と語るこいつはやはり俺とは別ベクトルで頭がおかしい。


「で、その魂胆は? 急にそう言いだしたのには理由があるんだろ」

「そうだね。まあ夜一なら正直に話しても問題はないから言うけど、私は性転換ポーションが欲しいのさ」

「……ああ、そういうことか」

「そう、女性側の恋人の中には私が男なら是非とも子供を孕ませたい対象が一人だけいるのさ。でも残念ながら私は生物学的には女で彼女との子供は作れない。これまでは、ね」


 だが性転換ポーションがあればその不可能も可能になるかもしれない。


 それはこいつからしてみれば俺に全面的協力する価値があることなのだろう。


「残念だけど性転換ポーションはまだ作れないぞ」

「椎平から聞いてそれは知っているよ。素材が足りないのだろう? 大丈夫、今の夜一が入れないダンジョンでも私が行って取ってくるから」


 性転換ポーションを作るために必要な素材はユニコーンの角と魔石、バイコーンの角と魔石、錬金水、錬金肉だ。錬金水以外は俺の手元には存在していない。


「それは正直助かるけど、性転換ポーションがどこまで有効なのかはまだ判明していないぞ。実物もないせいか錬金真眼でも鑑定できる範囲も限られているからな」


 呑んだ際に男性を女性、女性を男性に変貌させることは分かっているがその状態で子供を作れるかどうか、またそれ以外でもどんな問題があるかは全く分からない。


 それに錬金肉はまだ俺のスキルで作れないのでスキルレベルが上がるまでどうしようもないこともあり得る。


 つまり普通に手に入れるのにはまだまだ時間が掛かる訳だ。


 まあ錬金魂の例もあるから素材を解体した際に手に入ることもあるかもしれないが、今のところ魔物の肉を解体しても錬金肉は手に入らないので入手方法は分からないに等しい。


 そういった反論をしても薫は別に気にしなかった。


「駄目で元々さ。とりあえず近い内にユニコーンとバイコーンの素材は確保してくるから後のことはよろしく頼むよ」

「まあ、こっちにメリットがある取引だから構わないけどよ」


 薫は生粋の変わり者だがその実力も能力のスペックも非常に高い。


 それこそ俺が元仲間の八人の中で最も敵に回したくない相手を選ぶとしたら真っ先にこいつだと即決するくらいには。


 その相手がこの程度のことで全面的な協力を約束してくれるのはお買い得というレベルの話ではないので頷く以外に選択肢などありはしない。


「よし、それじゃあ契約は成立だね。折角だからお祝いに近くにある良いホテルに二人で行かないかい?」

「それは断る」

「じゃあ子種だけでもいいから」

「帰れ、変態が」

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[良い点] キチガイに刃物、薫るに性転換ポーション
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