第十三話 霊園ダンジョン
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東京の多磨霊園にある墓地。その一角にその転移陣は存在していた。
「これがここのダンジョンの入口なんですか?」
「ああ、この陣に乗ればこのG級ダンジョン、通称霊園ダンジョンに入れるって寸法だ」
この名前で呼ばれる理由はダンジョンがある場所だけではない。中にいる魔物がレッサーゴーストなどの幽霊やグールなどのアンデッド系ばかりだからだ。
このことからダンジョンはその土地の影響を受けるのではないかという説もあるのだが、真偽のほどは未だにはっきりしていない。
まあ確かに火山近くにそういうダンジョンがあるケースもあるからあながち間違いではないだろうが。
「今回の主な目的は愛華の訓練の他には素材の登録とレッサーゴーストが落とすドロップアイテムだな」
そのドロップアイテムの名は魂石片。
名前がどこか御霊石に似ている未だに使い道の分からないダンジョンアイテムだ。
なおここの魔物は経験値的にはあまりおいしくないので、今回ランクアップは目的としていない。
「ゴースト系の実体を持たない魔物は、死体を残さずに魔石とそういう謎の石を残すんでしたっけ」
「あらかじめ言っとくとグールとレッサーゴーストの魔石は一つ百円くらいでしか取引されてないからな」
「じゃあ先輩が回収していいですよ」
だからたいして金にならないと分かった途端にこちらに押し付けると即断するなよ。
まあ実際にはそれは有難いので拒否はしないけど。
「貰った分は後で代金を支払うわ。と、ここで残念なお知らせだが試練の魔物戦で活躍した浄化効果付きの剣は協会に借金の担保として差し押さえられている」
「世知辛い話ですね」
「だから今回用意したのは、浄化魔法で一時的にその効果を付与された短剣だ。ちなみに購入品じゃなくてレンタル品なので失くさないように」
このダンジョンに居る程度のアンデッド相手ならこれで十分だし、なにより効果が一時的にしか続かないこともあってかなり安く済む。
なによりこの程度のアイテムも買い取れないほど資金繰りは苦しいと副本部長とかに思わせられたらいいなという狙いも僅かにあったりする。
「まあとりあえずやってみない事には始まらないからな。行くとしよう」
「はーい」
段々と俺の行いに慣れてきた後輩は素直にそう返事をすると、臆することなく共に霊園ダンジョンの入口に足を踏み入れた。
円の中心付近にくると魔法陣が光って移動する。そして気付いた時にはダンジョンの中に転移している形だ。
「見た目は現実の墓地そのものですね」
「ああ。だけどここはもうダンジョンの中だ。見てみろ」
そう言って指し示した方には動く死体とも呼ばれるグールがノロノロと歩いていた。日本の墓のような見た目の場所でその存在はどこか場違いな感じさえ覚える。
「それにしても相変わらず魔物ばっかりで他の探索者がいませんね」
「ここも不人気ダンジョンの一つだからな。こういう陣を使って転移するタイプのダンジョンでは氾濫が起こることはないらしい。だから定期的に魔物を狩る必要もない」
だからそのための探索者が来ることも皆無。
それでも出現する魔物やダンジョン内で手に入るアイテムが美味いと人が集まるが、まあここはそのどちらでもないのであしからず。
それに探索者になり立ての初心者がアンデッドを相手にするのは少々難しいという点も過疎化を助長していた。
グールなどの実体を持つ敵なら物理攻撃でその身体を破壊すればいいが、ゴーストなどの実体を持たない相手だと物理攻撃が効かない。
そんな理由もあってわざわざこんなダンジョンに潜る物好きは俺達くらいのもの。
つまり他人の眼を気にすることも無く狩り放題だ。
「まずはグール相手だけど、映画とかと違って、噛まれても同じグールになるとかはその点はないから安心していい。もっとも人間っぽい見た目の割には噛む力が強いから肉を食い千切られることはあるし、攻撃を受けると毒の状態異常を受けることがあるからあまり攻撃を受けない方がいいのは変わらないけどな」
まあ対グール用の解毒剤はここに来る前に買ってきているので別に毒を受けたとしても問題はない。だからこそ今回は愛華に身を以って経験してもらおうと思っているがそれは言わないでおこう。
どうせここでの戦闘を繰り返していたらどう頑張ってもいずれは毒を受けることになるのだし。
とここまでのんびりしていればグール達もいい加減に侵入者に気が付く。近くにいた三体ほどがこちらに向かってきていた。
「遅いですね」
「まあ最弱(G級)の魔物だからな」
初心者には厄介な状態異常攻撃を持っているが、その動きはゴブリンやビッグラットなどよりも更に遅い。そいつらの相手をしてきた愛華なら十分に対処できる速度と言えるだろう。
実際三体相手でも特に苦労することなく敵の鈍い攻撃を回避してメイスでその頭を順番にかち割って初戦は終了。
案の定楽勝だった。
「歩く死体みたいな見た目なのにそこまで臭くはないんですね。まあいい匂いではない独特な感じはしますけど」
「F級のゾンビだともっと匂うぞ。あっちは腐乱した歩く死体だからな」
「うわーそっちの相手はしたくないですね。……ちなみにゾンビの方は金になります?」
「残念ながら行動パターンも素材の売却額もグールとたいして変わりません」
なのでグールで戦闘経験を積めばゾンビと戦う必要性はあまりない。
違いと言っても多少力が強いくらいだし。
「じゃあ尚更相手はしない方向でお願いします」
「分かったって。もし素材確保する時は俺だけで行くよ」
そんなことを呑気に話しながら仕留めたグールの死体は収納して解体しながら俺達は先に進んでいった。
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