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第六話 補正とレシピ

 何十体ものゴブリンを倒したところで遂にランクが2に上がった。


 その途端に身体が軽くなって頭がスッキリする。

 流石に元通りとまではいかないが、たった一つの上昇にしてはあり得ないほどの違いだろう。


(まあ補正的にそうなって当然なんだけど)


 第六次職だからなのかそれとも固有職(ユニークジョブ)だからなのか錬金剣士の補正は非常に高く全てに9も付いている。


 つまりランクが一つ上がるたびに全てのステータスが10も上昇するのだ。

 しかもそれだけではない。


 こちらはスキルの錬金術の秘奥の効果だが、ランクが一つ上がる度にランダムで未所持のレシピが一つ手に入るようになっているようだ。


 だからこの瞬間に俺の頭の中でそのレシピが閃くように浮かび上がる。


 今回手に入ったレシピ名は低位の錬金武器。

 錬金術によって作成できる剣や槍のような武器全般で必要な素材も不思議と理解できてしまう。まるで頭の中に直接情報が流し込まれているかのような言葉にできない妙な感覚だ。


(まあそれはともかくこの上昇率は異常だな。LUCに至ってはあと三もランクを上げれば全盛期の時を追い抜くし)


八代 夜一

ランク2

ステータス

HP  34

MP  26

STR 22

VIT 17

INT 19

MID 35

AGI 20

DEX 21

LUC 12

スキル 錬金レベルⅠ 錬金素材作成レベルⅠ  錬金真眼レベルⅠ(固有) 霊薬作成レベルⅠ アルケミーボックス 錬金術の秘奥(マスターアルケミー) 剣技覚醒

ジョブ 錬金剣士レベルⅠ(固有)


 ランク10にもなれば完全に全てのステータスが前の時を大きく超えることになる。



 この成長率を考えれば最初からやり直すことなどどうってことない。

 むしろお釣りがデカすぎるというものだ。


 俺が使用したリセットポーションは一部の例外を除いてステータスカードに載っている全てをリセットする代物だった。


 それは特殊職も対象で折角手に入れた第四次特殊職の錬金術師も例外ではない。だが固有職(ユニークジョブ)固有(ユニーク)スキルはその対象外だった。


 その結果がこれだ。


 薬師ブーストなんて比較にもならない。言うなれば他の誰も真似できない錬金剣士ブーストを実行しているようなものだ。その差はランクが上になればなるほど如実に大きくなることだろう。


 そんな未来を思い浮かべながら思わず笑みがこぼれるのを止められない。


(おっと、いかんな。そうなる可能性が高いとは言え勝ち誇るのは実際になってからでいい。油断して低ランクの時に失敗して死亡なんてしたら目も当てられない)


 そう自分に言い聞かせて倒したゴブリンの死体はこれまで通り全てアルケミーボックスにしまう。アイテムボックスからアルケミーボックスになったことでこのスキルにも一部の機能が付け加えられていた。


 まず収納できるのがランク×千キログラムになっている。


 その上で特別枠として錬金素材や錬金術で作成されたアイテムなどの錬金術関係の物なら、無制限にボックス内に保存できる。

 しかもそれらは時間が停止した状態で保管されるため、時間による劣化や損耗などが起こることはなくなる優れた機能まで付いているのだ。


(ゴブリンの死体や魔石は錬金術で利用可能な素材だけどボックス的には通常枠扱いか。魔物の死体や魔石も錬金素材扱いなら狩りの獲物を貯蔵し放題だったんだけどな)


 それは素直に残念だった。ただしこの制限を限定的になくす方法も存在している。


 そのために俺は大して使い道のないゴブリンの死体をわざわざ全てアルケミーボックスに仕舞っているのだ。そして何度も同じことを繰り返していたら遂にその時が来た。


【グリーンゴブリン素材の解析率が100%になりました。今後はグリーンゴブリン素材が錬金素材によって作成可能になります。またグリーンゴブリン素材を錬金素材に解体することも可能になりました】

「よし来た!」


 錬金術の秘奥の効果は一つではなかった。


 必要な数の素材をアルケミーボックスに入れて分解と解析を実行するとこうして錬金素材でそれらの物を作れるようになるのだ。つまり今回のことで俺はグリーンゴブリンの骨や血肉、更には魔石すらも錬金スキルで作成可能になったということである。


 もっとも錬金素材作成のレベルⅠで作れるのは錬金水と錬成水だけで種類を増やすためにはスキルレベルを上げなければならないが。


 それでもグリーンゴブリンの血だけなら錬成水だけで作れるようなので実際にやってみることにする。


 まず錬金素材作成で錬成水を作り出す。その際にガラスのフラスコ容器みたいな物に入っているのが前々から不思議だったがどういう原理なのだろうか。


 作成するのにMPを1消費するがそれが材料となっているのだろうか。


「まあいいや。考えたって分からないし」


 その錬成水を一つ消費してグリーンゴブリンの血液を作成しようとする。が最初はうまくいかなかった。


 どうやら回復薬を作るときもそうだったが錬金するためにはアルケミーボックス内にある素材でなければいけないようだ。


 そのため作ったばかりの錬成水をアルケミーボックスに仕舞ってからもう一度作成を実行。するとこの際にもMPを1消費した。更に作成時に要求ステータスがあるらしい。


 だが今回はグリーンゴブリン素材という弱い魔物の素材だったこともあって問題なくクリアできた。


 そうして幾つかの条件を突破した俺のアルケミーボックス内でそれは一瞬の内に完成していた。試しに取り出してみると錬成水などと同じようにフラスコに緑色の液体が入っている。


 錬金真眼がそれをゴブリンの血液だと間違いなく表示していた。


 更にこれが解体できるか試してみたらやはりアルケミーボックスになければいけないようで、同じように実行すると同じく消費MPは1で錬成水一つに分解された。


(要求ステータスがあるとか条件はあるけどこの結果は最上に近い。これならやりようはいくらでもある)


 更に追求すべき点はまだまだ色々ある。


 錬金真眼ではアイテムの品質なども表示が可能で、その品質によってアイテムの効果や持続時間などに変化が生まれるようなのだ。


(ヤバイ、やり込み要素が半端じゃないぞこれは!)


 あまりにもできることが多いからこそやるべきことも山積みとなっている。だがそれは嬉しい悲鳴というものだ。


「あのー先輩。まだ狩りを続けるんですか? ずっとついていくのにも流石に飽きてきたんですけど」

「あ、悪い。すっかり夢中になってお前のこと忘れてた」

「そうじゃないかと思ってましたけどそれを言っちゃいますか。本音で話すようになった先輩って割と最低ですよね」

「悪かったって。その代わりと言ってはなんだがここまで引き延ばしてきた例の儲け話とやらを教えようじゃないか」


 そうして俺は先ほど検証した錬金素材などから特定の素材を作れることなどを愛華に教える。


「それって凄いことなんでしょうけど、それでどうやって儲けるんですか?」

「安いゴブリン素材じゃピンとこないかもしれないけど、これが貴重なドラゴン素材だと仮定したらどうなる?」

「えっと、錬金素材は先輩のMPから作れる。そしてドラゴン素材も条件を満たせば錬金素材から作れるようになるってことは……ええ!?」


 最初の内はよく分からないという顔をしていたが段々とこのヤバさに気付いていたようだ。


「これだけでも十分稼げるだろうが、更に言えば各種回復薬の素材も解析できれば錬金素材でそれらを作れるようになる。と言うか低位のはもうなっているから錬金素材を用意できるようになるだけだ」

「……つまり素材がなくても回復薬を量産できるようになると?」

「厳密に言えば材料は俺のMPってことになるかな。しかもだ」

「し、しかも?」

「錬金素材作成のスキルレベルが上がれば上がるほど作れる錬金素材の量はその度に増えていく。実際に錬成素材作成の時はレベルⅤだったこともあって、俺一人で会社の回復薬研究部門の素材をどうにかしていたくらいに」


 その上、MPに関してもランクが上がるごとに10も上昇していくのが確定しているときた。


 前衛職でMPの伸びが悪かった前とは比較にならないMPになるのもそう遠い話ではない。


「どうだ? 金の匂いがプンプンするだろう」

「最高です。私、先輩のことを誤解してました。先輩は頭のおかしい人だけど、そんなことどうでもよくなるくらいに金を生み出す人だったんですね」

「誉めてくれてるんだろうがその評価は素直に喜んでいいものなのか?」

「先輩は錬金術師。錬金術とは金を生み出す術のこと。先輩は金を生み出す術を使う人。つまり先輩は金そのもの」

(こいつ頭の中が金の一文字で支配されてやがる。)


 だが乗り気になってくれているのなら下手に邪魔はすまい。

 それにこの方が面白い気がするのでむしろ更に背中を押してみるか。


「ついでに補足しておくとスキルレベルが上がれば俺以外が錬金術を使えるようになる錬金アイテムを作れるみたいだ。もし愛華がもっと俺に協力してくれるのなら、その際には一番にその権利を与えると約束するがどうする?」

「……先輩、決めました。私は先輩に一生ついていきます」

「良く言った!」


 金に目が眩んだ愛華はいとも簡単にこちらの誘いに乗ってくれた。


 まあこれは決して嘘でも詐欺でもないし騙そうともしていないから、彼女を利用しようとしている点については目を瞑ってもらうとしよう。

 

 しっかりと稼がせてあげるのは本当のことなので。

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