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第二話 集まったかつての八人

 とある料亭の一室。そこに懐かしい面々が集まっていた。


 別に諜報対策が施されているような特別な店ではないので一見すると盗み聞きも簡単に思えるだろう。だがそこはご安心あれ。


朱里(しゅり)、防諜は万全だな?」

「ああ? 誰にものを言ってんだ。それともアタシが得意分野でヘマする間抜けに見えるとでも言いてえのか。ぶっ殺すぞ、おい」

「万全ならいいさ。これから話すことは絶対に誰にも聞かれる訳にはいかないからな」


 相変わらずの金に染めた長髪や喧嘩っ早い性分に乱暴な口調といい、ひと昔前のヤンキーみたいな奴である。まあこいつの口が悪いのはデフォルトなので気にしても仕方がないのだ。スルーするに限る。


「んだよ言い返さないなんてビビってんのか? おいおい、なんだ。あの切れ過ぎる刃物みたいだった夜一さんがダンジョンに潜らなくなって随分と日和っちまったみてえだな。あー情けねえ」

「あ? んだとてめえ」


 前言撤回。人が大人の態度を取ってれば舐め腐りやがって、このクソガキが。


「ああもう、姉さんも夜一さんもやめろって! いくら人払いしてるからってそんな殺気立ってたら意味なくなるぞ!」

「「ちっ!」」


 俺と朱里が同時に舌打ちして殺気を抑える。


 呼び名から分かる通り俺達を止めたこの若い二十歳になったばかりの好青年、希典(きてん) (えい)()はヤンキー女の希典(きてん) 朱里の双子の弟だ。


 目の前のガサツなヤンキー女とは血が繋がっているとは思えないほど温和そうで見た目はまともに見える青年である。


「先生も見てないで止めてくださいよ」

「私がですか? 嫌ですよ。子供同士が仲良くジャレついているのを止めるのは気が引けますからね」

「おい! 誰が子供でジャレついてるって?」

「だから止めろって姉さん! 久しぶりに皆に会えて嬉しいからって誰彼構わず突っかかるなよ!」

「う、うるせえ! 誰が嬉しがってるだ!?」

「いて!? だからそうやって照れて暴力振るうのもやめろって! そんなんだから友達少ないんだぞ!」

「てめえこそ、そうやって余計なことばっかり言う口を閉じてろ!」

「いたたた! 暴力反対!」


 双子が仲良く姉弟喧嘩を始めているのを先ほど先生と呼ばれた三十代後半であろう男が我関せずの態度でスルーしている。この人が先生と呼ばれているのはその特殊な経歴が原因だ。


 ある目的のために五年前、それまで医者として勤めていた病院を辞めて探索者になった変わり者。それが俺達の中で最年長の中川原(なかがわら) 勘九郎(かんくろう)という男である。


 今回の件で最も協力してほしい人物が彼だ。そのための手札は用意してあるので大丈夫だと思うが油断は禁物。俺達はいくら元パーティだからってなんでも無条件で頼みを聞くなんて甘い関係ではないのだから。


「やあ、元気だったかい?……ってこれは退院したばかりの人に言う言葉じゃなかったかな」


 そして最後の一人がこちらに手を振っている美少年に見まがうような端正な顔をした性別は女の毒島(ぶすじま) (かおる)だ。 


「まあそれなりに元気だよ。ドーピングのし過ぎであと三週間は回復薬の服用を禁止させられてることを除けば」

「それ聞いたよ。三重強化ってとんだ無茶をしたものだね。どれ、大丈夫かどうかお姉さんが体をじっくりと見て確かめてあげよう」

「医者でもないお前になんで見せる必要がある。ってそう言いながらシャツを捲り上げようとするな、変態が」


 こんな絶世の美少女や美少年にしか見えない顔しておいてこいつは変態だ。

 バイセクシャルという点なんてどうでもよくなるほど特殊な性癖を持ち過ぎている。


「いやいや、別に他意はないよ。ただその鍛え上げられた肉体を見たいだけで」

「だからそう言いながらズボンに手を掛けるな。ったく、どいつもこいつも相変わらず変人ばかりで安心したよ」


 そう皮肉ったらその場にいた全員がこちらを見てきてこう言った。


「「「「「「「お前が言うな、お前が」」」」」」」

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