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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第五十一話 初期スキルの宿る条件と新たな懸念事項

 黄金神一派への説明はウスリスクが上手い事やってくれることとなった。


 ウスリスクとしても俺が力を付けて、アマデウスやそれ以外の御霊石として保管されている面々が復活できるようになってくれるに越したことはないからだ。


「先程も述べましたが、私は全身全霊を持ってあなた方に協力させていただきます。エルーシャを始めとした黄金神一派の大半の者も同じでしょう」


 その命令に従わない奴も中には現れるかもしれないが、それに関して今はどうしようもない。


 やれることは警戒を緩めないで、そういう奴に不意を打たれないようにするしかないだろう。


「ただその点以外でも幾つか懸念事項が存在しています」

「懸念事項?」

「現状で最も問題だと考えられるのが、あなたの協力者の毒島 薫という人間のことです。控えめに言って彼女の才能は危険と言わざるを得ない。場合によってはあなたの害となる可能性も否定できぬほどに」


 挙げられたその名前は意外だった。


 確かに薫の才能は確かなものだし、その上これまで隠していた初期スキルの事も考えれば、ここからどれだけ力が伸びるか分からない面はあるだろう。


 だけどそれでも俺に害となる第一候補として選ばれるほどだとは思えなかった。


 それを言うのなら他の派閥の使徒、具体的にはアメリカのデイビスのような別のユニークスキルを持っていると思われる奴の方が敵対する上で危険に思えるからだ。


 だが話の続きを聞くと、どうやら薫が危険という言葉の意味合いは俺の思っているものとは若干違っていた。


「私が言う危険性とは、彼女があなたと敵対するという意味ではありません。彼女を狙う存在がこれから増えて、あなたがそれに巻き込まれる可能性があるかもしれないという意味です」

「薫が狙われる? いったい何で?」

「そのためにはあなた方が初期スキルと呼んでいる、探索者となった人間が始めから保有しているスキルについて説明しなければならないでしょう。何故ならこれはアマデウス様も知らぬことでしょうから」


 大戦で死亡しているアマデウスはその時から復活する間の記憶はほとんどないと言っていた。


 つまりウスリスク達がこの世界にやって来た当初の出来事などは何も知らないに等しい。


「我々がホムンクルスと御霊石を利用してアマデウス様を復活させようとしたように、他の陣営でも同じようなことが計画されていました。その一つに、適性のある人間を依り代として利用するというものがあるようなのです」

「……ホムンクルスではなく生きている人間という器に、御使いや神族の魂を入れるってのか」


 ウスリスクの口ぶりからして、器とされた人間がどうなるかは聞くまでもないだろう。


 どう考えても無事で済むとは思えないし、恐らくは元の人格を乗っ取られるに違いない。


「この方法は人格のないホムンクルスを利用するよりも難易度は非常に高い上に、器とする人間に組み込む魂と高い適性や親和性があることが求められる。ですがその反面、成功すれば復活した存在は、ホムンクルスを利用するよりも高い力を取り戻すことでしょう」


 ましてやそれが探索者として高いステータスを持っていた場合、親和性の高さによってはそれこそかつての力を完全に再現して復活させられるかもしれないのだとか。


「その親和性の高さにですが、これについて分かり易い指標が存在します。それがスキルの数であり、その中でも初期スキルは特に適性の高さを示すとされているのです」


 アマデウスの錬金真眼のように、幾つかのスキルにはかつての所有者の魂と深く結びついているものが存在している。


 だから仮に探索者が何らかのスキルに適性がある場合、そいつはそのスキルの元の持ち主とも高い親和性があると考えられるのだとか。


「しかも初期スキルの多くは、かつての大戦で亡くなられた力ある方々のものだとされています。どうやらこの計画の為なのか、それらのスキルの種を意図的に人間へ配っている陣営があるようなのです」

「そういやどうしてスキルとかを簡単に手に入るようにしてるのか分からないって話はアマデウスからも聞いた事があったな」


 自分達を害する可能性があるスキルなどの力を人間に与える理由の一つが、そうすることで依り代となる器を見極めるためということか。


 でもそれなら初期スキルを持っている奴が強者となり易いのも理解できる。


 力ある御使いや神族が持っていた特別なスキルだからこそ、一つでも同じ物を得られたのなら探索者が強い力を得やすいということで。


 実際に有栖などはまさにそれだ。氷姫というスキルがあったからこそ、有栖は戦いに向かない小柄で脆弱な身体でもC級探索者にまで昇りつめたのだから。


「だとすると初期スキルを四つも持っている薫は、その計画を実行しようとしている陣営にとっては格好の獲物になる訳か」

「あるいはそれどころでは済まないかもしれません。何故なら現状で確認されている一人の初期スキルの最多保有数は三つであり、その人物はA級探索者だからです」


 A級探索者。それはかつて俺を圧倒したアーサーと肩を並べる猛者ということになる。


 だとしたら薫は才能や適性という意味では、その猛者をも超えるというのか。


「正直に申しますと、四つの初期スキルを持つ彼女は我らが保有する高性能ホムンクルス以上に依り代として完成されていると言わざるを得ない。それこそかつて失敗した復活計画も、彼女でなら成功するだろうと思われるほどに」

「だとすると人間を依り代にしようとする陣営だけでなく、場合によっては黄金神陣営からも薫を狙う奴が出てくる可能性も否定できないと」


 あるいはどの陣営からしても薫は垂涎の的となるのかもしれない。


 ウスリスクの言葉からは、それだけ高い適性があるのなら利用の仕方など幾らでもあるのが分かるし。


「今の私としては、こうしてアマデウス様が復活しており、その主となったあなた様がいるのです。無理に彼女を狙う必要はない」

「俺に協力すればそっちも目的を達せられる目途が立っている訳だからな。だけどそうじゃない他の陣営は違うし、薫を狙う過程でその傍にいる俺の事も目に付く可能性が高まるってことか」


 ウスリスクからすれば、薫のせいで俺まで他陣営に目を付けられるのが最も恐れることなのだろう。


 それで復活したアマデウスにまで気付かれたら全てが台無しになりかねないという意味で。


「……私としては早急に彼女を排除することを提案致します。なによりもあなた様の安全を確保するために」


 依り代として最高だとしても死んでしまえばそれまで。


 だから危険の芽を摘み取るためにもウスリスクは俺に薫を殺すべきだという提案をしてくる。


 確かに自分の身の安全を考えるのならそれが最善なのだろう。


 薫という最高の依り代の件とアマデウスが不完全でも復活したことが知られれば、他の陣営が総出で俺達を仕留めに来るかもしれないのだから。


 それはつまりアーサーのような絶対強者が一人ではなく、複数で協力して攻めてくるということ。


 しかもその時には周りへの被害なんて考慮しない可能性が高い。


(何も知らない相手視点からすれば、薫を依り代にしてアマデウスが完全な形で復活するように見えるだろうからな)


 憎き仇敵が完全な力を取り戻して復活するかもしれない。


 そうなった時になりふり構わず強硬手段に出るのは何らおかしい話ではないだろう。


「仲間を手に掛けるという、非情な決断を求めていることは重々承知で申し上げます。ですがどうか御身の安全のためにも、この提案を聞き入れてくれないでしょうか……!」


 それに対して俺が出した答えは。


「悪いが、お断りだな」


 一切迷いのないそれだった。

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― 新着の感想 ―
これは手っ取り早く他の派閥連中やA級B級の実力者相手にある程度は自衛できるよう薫に使途としての力を与えて強化するべきか。
なんでそれで了承すると思ったし。
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