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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第五十話 魂の回廊と見抜かれた秘密

小説第1巻、好評発売中です!

コミカライズも始まってますので、そちらと一緒にどうぞよろしくお願いいたします!

 一先ず無事に俺とウスリスクの間で協力関係が結ばれた。


 それを見てこれまでウスリスクの傍にいたエルーシャは安堵の息を吐いている。


「一部には蛇蝎の如く嫌われてるって話だけど、エル―シャはそうでもないみたいだな」

「……私とて最初の頃は憎き仇敵であるトルテインに仕えていたウスリスク様が派閥の長となることについて完全に納得していなかったし、正直に言えば不満もあった。ただそれでもこの五年、ウスリスク様は我々が生き残れる道を作ろうと懸命に動かれていたのだ。それこそ己の身を削ることも厭わずに」


 確かに実際にやらかしたのはアソシア達なのに、ウスリスクは責任を取ると言って自分の首を差し出そうとしていた。


 アソシア達はウスリスクの命令を無視して勝手に動いた、ウスリスクしたら余計な事をしてくれた奴らだというのに。


 そんなウスリスクだからこそ、認識を改めて代表だと認める者も中にはいる訳か。


 この分ならある程度の黄金神一派の面々は、俺達に協力的になると思っても良いかもしれない。


 そんなウスリスクだが、ここで思わぬ言葉を放ってくる。


「エル―シャ、有人達を連れて先に戻っていてくれ。ここから先は私一人で対応する」

「ウスリスク様、いったい何を?」

「私は彼とまだ話さなければならないことがあるのだ。それも他の者には聞かれてはならない類いの」

「……畏まりました」


 疑問を返したエルーシャだったが、有無を言わさぬウスリスクの言葉に逆らうことはしなかった。


「さて、それではまず内緒話をする準備を終えようか。君は何らかのホムンクルスを所持しているかな?」


 そうして一人となったウスリスクはそんな事を俺に聞いてくる。


「一応、原型(アーキタイプ)ホムンクルスなら持ってるぞ」


 他にも支援型と戦闘型のホムンクルスのレシピは入手しているが、それらはまだ作ったことがないので手持ちにはないのである。


「まだ未使用のホムンクルスか。ふむ、これは都合が良いな。そこに私のこれ(・・)を錬金してほしい。他ならぬ君自身の手で」


 俺がアルケミーボックスから取り出した原型ホムンクルスを見たウスリスクは、自分の胸にその手を突き立てる。


 そんな突然の行動にも驚いたが、それ以上に引き抜いたその手に握られているものに俺は目を奪われた。


「御霊石か」

「そう、これは御霊石、私の魂そのものと言ってよいものだ。だからこの御霊石をそのホムンクルスに錬金すれば、私は君の使役するホムンクルスと一体化する。分かり易く言えば、君に絶対服従となる訳だ」


 仮にここから先の話で何か問題が発生した時、創造主である俺の意思一つでそのホムンクルスを破棄することができる。


 つまり俺がこの御霊石をホムンクルスに錬金することは、目の前のウスリスクという存在の生殺与奪の権利を握ることを意味していた。


「ここから先の話は誰にも漏らすことは出来ないだろうし、何よりそちらの信頼を得なければ話してもらえないと私は考えている」


 だからその信頼を得るためにホムンクルスに自らを組み込ませると。


 命を懸けるのも辞さないとは、こいつにはそれほどまでして話さなければならないならない何かがあるというのか。


(こっちが隠していることに気付かれたか?)


 それを確認する意味でも、この提案は受け入れておくべきだろう。


 そうしておけば仮に最悪の場合であったとしても、俺がウスリスクに命令して秘匿が可能かもしれないし。


 そう考えた上で俺は受け取ったウスリスクの御霊石を、アマデウスの時と同じように原型ホムンクルスに錬金する。


 すると錬金した瞬間に、御霊石を抜き取ったウスリスクの肉体が砂の様になって崩れ解いていくではないか。


『心配は要らないよ。その肉体は役目を終えたに過ぎないし、なにより元々限界が近かったからね。君が何もしなくても遠からず機能不全で停止していたのだろう』


 頭の中にウスリスクの声が響いてくる。


 どうやらアマデウスと同じように、アルケミーボックスの中からこちらに語りかけてきているようだ。


「それで俺のホムンクルスとなってまで話したい事ってのは何なんだ?」


 警戒する陽明達に問題ないと視線で答えながら、俺は核心部分を質問する。


『それについては然るべき場所に君を招いてからするとしよう。なにせこればかりは君の仲間にも聞かせて良いのか私には分からないからね』


 その言葉と同時に俺は先程いた場所とは全く別の場所にいた。


 ただしその場所は初見の場所ではなく、以前の時にアマデウスによって招かれた空間と同じだった。


 だとすると俺が転移したのではなく、精神だけが呼び出された感じだろうか。


「ここは魂の回廊と呼ばれる場所。我ら御使いや神族が何らかの形で魂を繋げた相手だけが訪れることが可能な、内緒話をするのにはこれ以上ない秘密の空間さ」


 その何もない白い空間で待っていたウスリスクは、先程までの歩くのも辛そうな様子がどこにいったのか、実に元気そうな様子で語りかけてくるではないか。


「随分と元気そうだな」

「それは君のおかげだよ。先程も述べたが実は私の肉体は色々と問題だらけだったんだ。その詳細については、君の背後に隠れているだろう御方(・・)に尋ねていただければ分かると思うよ。先代黄金神の右腕だったあの御方なら、私がどんな状態だったのかなんてすぐに把握できるだろうからね」

「……そうか、お前は分かってるんだな」


 その口ぶりから俺はこいつが何に気付いているのか理解するしかなかった。


 どうやらエルーシャは騙せても、ウスリスクには何か気付かれる点があったらしい。


「ああ、だが安心して欲しい。私はこの事実を外に漏らすつもりなど毛頭ない。仮にそのつもりなら何も気付いていないふりをしていたさ」

「確かにそれもそうだな」


 だとすると生殺与奪の権をこちらに与えたのも、こちらに敵対する意思がないことを証明するためか。


 こちらとしては余計な奴にその事を知られたのなら消すしかないと判断していただろうし。


「あの御方……アマデウス様は生きている。いや、正確に言うのなら何らかの形で生き返ったのだろう? そして何か目的があって今もその事実を隠している」

「……ウスリスクと言ったか。どうやら黄金神一派の生き残りの中にも少しは頭の回る奴が生き残っているようだね」


 そこでこれまで姿を隠していたアマデウスもこの場に現れた。

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