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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第三十九話 攻略の糸口

書籍第1巻が好評発売中です!

書き下ろしもあるのでweb版を読んだ方でも楽しめると思います。

是非、手に取ってください!!

 爆裂剣の威力は相当なものだ。

 多くの魔物をそれで屠ってきた俺がそのことを一番理解している。


 だからこそ何発分の威力をまとめて返されたとなれば、幾らステータスがカンストしている俺でも無事では済まないのは仕方がない。


 だから敵によって爆発が返される瞬間、咄嗟に身を固めて防御しても全身に大きなダメージを受けるのは避けられないのも当然のこと。


 発生した熱と炎によって大火傷を負っているのは間違いないし、爆発の衝撃で全身がボロボロとなっているは伝わってくる痛みだけで分かるくらいだ。


(それこそ試練の魔物やアーサーとの戦い以来かもしれないな。ここまで俺がしっかりとしたダメージを負うのは)


 命の危機を知らせる危険信号たる痛みを全身に感じながら、それでも俺は焦ることはない。


 何故なら敵の本拠地たるB級ダンジョンに突入すると決めた時から、多かれ少なかれこういった大きな、それこそ低位体力回復薬では回復しきれないダメージや肉体の損傷を受けるかもしれないと予想していたからだ。


(無傷で攻略できるならそれが最高ではあったが、流石にそこまで敵も甘くはないわな)


 そう思いながら俺は装着していたとある錬金術師の指輪の効果を発揮する。


 それはこれまで何度も利用していた低位体力回復薬(ローライフポーション)が込められた指輪ではない。


 そう、これは未だに量産には至っていない、数の限られている中位体力回復薬(ミドルライフポーション)が錬金された指輪だ。


 その回復効果は低位のものとは比べ物にならず、またある程度までの肉体の欠損も瞬時に治療してくれる。


 それこそとある人物が過去に魔物との戦いで失った腕が、これを使った瞬間に生えてくるくらいには。


 その結果、本来なら爆発の煙が晴れたら死にかけでおかしくないはずの俺は、服だけボロボロで肉体は全くの無傷の状態で敵の前に現れる形となっていた。


 それも平然と相手の言葉に返答しながら。


 それを見て完全にこちらを仕留めた気になっていたアソシアは動揺を隠せない様子。


 だが敵対している相手が落ち着くのを待ってやる義理などないというもの。


 だから俺は新たな爆裂剣を取り出すと、それを戦闘型ホムンクルスへと投擲する。


 ただしその狙いは敵そのものではなく、その足元へ向けて叩きつけるように。


 このまま誰も何もしなければ爆裂剣は地面に突き立ち、その衝撃で周囲へ爆炎をまき散らすこととなっただろう。


 だがそうはならなかった。


 何故なら戦闘型ホムンクルスが掌をかざすことで、地面にぶつかるはずだった爆裂剣を空中で停止させていたから。


 そうやってまたしても鉄壁の防御の前にこちらの攻撃が封殺されたのを見て、逆に俺は確信を得る。


「やっぱり吸収しなかったな」


 少し前にスカイドラゴンの牙が錬金された剣から放たれた光線のようなブレス。


 あの攻撃を吸収による無効化で防がれなかった時から違和感はあったのだ。


 錬金アイテムから発せられる攻撃など全て吸収できるのなら、あの攻撃だって吸収できたはずだ。


 だってその光線も錬金アイテムである錬金武器から放たれたものなのだから。


 だが実際にはそうはならず、何故か奴は特異な防御方法を用いて身を守った。


 仮にあの攻撃を吸収しておけば、こちらに対して有効な反撃手段をなったはずだろう。


 それを考えれば吸収しない選択肢があるは考えられず、だとしたらやりたくてもできなかったと見るのが妥当というもの。


(吸収を発動する条件に、錬金アイテムに直接触れる必要があるってところだろうな)


 そして触れる前に効果を発揮してしまったものに関しては、奴でも無効化ではできないのだろう。


 だからこそああして爆裂剣が地面に衝突して爆発する前に、能力を使ってまで止めたのだ。


「つまり肉体に触れて能力を発動するタイプの錬金アイテムでなければ、お前にも攻撃を通す方法はあるって訳だ」


 弱体化の剣系統の攻撃を当てた相手に効果を及ぼすタイプはこいつ相手に向いておらず、逆に爆裂剣などの範囲攻撃の余波に巻き込む形なら、やり方次第で攻撃を通せるということ。


 そしてそれが分かれば、やりようは幾らでもあるというもの。


 そうやって攻略の糸口を掴んだこちらに対して見向きもせず、アソシアは全く別のことをブツブツと呟きながら考え込んでいる。


「身代わりの指輪か? いや、あのタイミングでは絶対に間に合わなかったはずだ。それに身に着けていた服や装備にもダメージは確実に通っているし、出血した痕跡が肉体や周囲にも残っている。だとしたら何らかの手段で爆発を回避したのではなく、本当にあの攻撃を耐えきって、あまつさえ全快に至るまで回復したとでも言うのか? こんな僅かな間で? バカな、そんなのは低位回復薬で可能な範疇を遥かに超えているではないか……!」


 こちらが量産に成功している低位回復薬では治し切れない負傷とダメージを与えた確信があったのだろう。


 その考えは正しく、実際に当たっている。


 だが惜しむべくは、俺が低位回復薬を超える回復手段を用意していたことだろう。


「そうだ、あり得ない。我々黄金神派閥以外が、あろうことか低位よりも上の回復薬を手に入れているなど、そんなふざけたことがあり得るはずがないのだ!」


 そしてそんな手段を俺が保持していることを薄々は察していながらも、アソシアはそれを自身で否定して信じようとしない。


 いや、どうしても信じられないのだろう。


 今の衰退した黄金神一派では、中位以上の回復薬を作るのにもかなり苦労をしており、成功例はエルーシャが知る限りではないそうだから。


 つまりこいつらからすればその考えが事実だとした場合、こちらが黄金神一派よりもその分野で上を行っていることになってしまうのだ。


 それはかつて黄金神の元で、錬金の力を振るっていた者の誇りが認められることではないのだろう。


「ええい、もはや生き残った方法などどうでもいい! どんなに妙な力を隠し持っていたとしても、貴様がその戦闘型ホムンクルスに勝つことは不可能なのだからな!」


 仮に僅かな攻略の糸口を見つけたとしても、それを実現するのは至難の業なことに変わりはない。


 そもそも力を失った黄金真一派では錬金アイテムの作成は現在でも順調とは言えず、効果の高いほど数が少なく貴重となっている。


 それを考えれば俺が保持している錬金アイテムにも限りがあるはずという考えなのだろう。


「こっちの手札が尽きるまで、鉄壁の防御で凌ぐつもりか。ま、普通ならそれも可能だったかもな」


 数が限られている錬金アイテムの中から、この戦闘型ホムンクルスの吸収能力を潜り抜けられる物となれば、更にその数は絞られる。


 それらを存分に駆使できる時間はそう長くないと考えるのも自然の流れというもの。


 ただし、それはあくまで普通の錬金術師が相手だった場合の話だ。


 それを証明するように、俺はボスが出てくる前に倒していた魔物の死体の元へ向かうと、


(さて、ここからが錬金剣士(・・・・)の本領発揮だ)


 この戦いの最中にに見出した、己の新しい戦い方を実行に移すのだった。

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