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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第三十七話 強すぎる力の扱い

 無数の水銃を放ちながら魔物に接近すると同時に斬撃を放つ。


 それだけで大半の魔物が一刀両断され、その命を刈り取られていった。


(C級どころかB級の魔物でも守りの弱い個体なら一撃でイケるな)


 B級のステータスの下限が大体150なので、弱い奴と素の俺だけでも100ほどの差が存在することになる。


 その上で急所に的確に斬撃を叩き込めば、耐え切れないのも無理のない話だろう。


 ただしそれは魔物だけに限定される話ではなく、俺が手にする武器にも適応されるのが困りものだった。


 かつて試練の魔物との戦いで、俺は長年愛用していた剣は復元不可能なまでに壊してしまった。


 しかもあの剣は愛華に与えた竜殺しの指輪と同じようにダンジョンの宝箱から入手した一点物である。


 後日に同じ物がオークションなどに出ていないかと色々と探したのだが、残念ながら今日に至るまで同じ物は見つからなかった。


 だから今の俺が持っている剣はその代用品であり、正直に言って今の俺に最適な武器とは言い難い。


 いや、仮に愛剣が無事だったとしてもそれは同じことだっただろう。


 なにせ今のステータス的に生半可な武器では俺の力に装備の方が耐え切れないからだ。


 ダンジョンからドロップする不思議な力を有した装備であっても、手入れを怠ったり乱暴に扱ったりすれば損耗してしまい、いずれは壊れてしまう。


 ステータスやスキルなどゲーム的な要素が含まれているダンジョンだが、その辺りは実に現実的なのである。


(本来なら自分が挑んでいるダンジョンでドロップする装備であれば問題ない。だけど今の俺のステータスだと、C級ダンジョンまでのドロップした品々でも不相応でしかないのが困ったところだな)


 かつて剣豪だった頃なら十分だったはずの装備であっても、今の250というステータスとは釣り合わないのだ。


 全力で振るえば、それこそ大半が数回で壊れてしまうくらいには。


 それもあってこれまでの俺は低位錬金武器を主に使っていた面もあるのだ。


 あれなら錬金スキルで幾らでも作れるし、攻撃力は低くてもバカみたいに高くなったステータスでどうとでもなったから。


(それに爆裂剣とかも思っていた以上に便利だったしな)


 またダンジョンで採取できる素材やドロップするアイテムなどは、基本的には級が上になればなるほど上質なものや強い力を秘めたものとなる。


 だからこそ上級のダンジョンで手に入る物は貴重となり、B級ダンジョンでドロップした貴重な装備ともなれば、そう簡単に世に出たりしない。


 それは魔物と戦う探索者なら装備が壊れるなんて日常茶飯事だからだ。


 最前線で攻略している上級の探索者なら特にそうだろう。


 そもそも探索者の数的に上級のダンジョンで手に入る装備は少ない。


 だってそこに挑める探索者の数がそもそも多くないのだから。


 そういう奴らが仮に貴重な装備を手に入れても、今使っているのとは別の予備の装備を確保しておきたいことを考えれば、探索者が手に入れた貴重な装備を売り出す数はそう多くはないのも自然の事と言える。


 実際に俺が手に入れた竜殺しの指輪などを売ることなく自身で使っていたように。


 だから仮にどれだけの大金持ちであったとしても、上級ダンジョンでドロップするような装備を金で手に入れることは難しいと言わざるを得ない訳で、


「やっぱりこうなったか」


 装備者のSTRとAGIを30ずつ高めてくれる上に、MPを消費すれば斬撃を飛ばすことが可能なC級ダンジョンでドロップした魔剣。


 それが周囲の魔物を五十体ほど切り刻んだところで限界がきたかのように刀身に亀裂が入ってしまう。


 これでもかなり気を使っていたのだが、それでも今の俺の力には耐え切れなかったようだ。


「ったく、これもそれなりに貴重な武器なんだがな」


 こうやって使えば使うほど壊れる可能性が高くなることを考えると、指輪などの身に着けるだけで損耗することのない竜殺しの指輪を始めとしたアクセサリー類が今の俺にはあっているのかもしれない。


 武器や防具と違ってあちらは複数同時に装備しても効果を発揮する物が多いし。


 一応予備の武器はアルケミーボックスの中にまだ用意しているが、この調子ではやっぱり低位錬金武器を使った方が良いだろうか。でないと無駄な出費を重ね続けることになってしまう。


 あるいは水銃などのスキルをならば、そういう心配はいらないか。


 こちらならスキルを使うのも、弾丸の素材となる錬金水も作るのも、MPを消費するだけで賄えるので。


 だが水銃だとスキルレベルが低いせいもあって、倒すためにはかなりの数を叩き込まないといけないのが些か面倒だった。


 なにせ爆裂剣なら一発で十分だろうし。


(だけど久しぶりに剣だけで戦うのを楽しめたな。相手も雑魚過ぎない丁度良い感じだったし)


 このダンジョンに出現する魔物それなりに手ごたえもあって良い相手だった。


 ゴブリン相手とかだと、それこそ何も考えずに剣を振るだけで簡単になます切りにできてしまうので練習にもならないのだ。


 そこで上空に逃れていたこちらの隙を窺っていたスカイドラゴンがブレスを放ってくる。


 だがそれらに視線を向けることなく回避して、更に反撃とばかりに水銃をその個体に向けて発射する。


 そうして無数に放たれた水の弾丸の幾つかがその翼を撃ち抜き、それで態勢を崩したスカイドラゴンが高度を落とす。


「バカな、単なる水銃のスキルだけでスカイドラゴンを落とすだと……!?」


 アソシアの驚愕した声を聞きながら俺はその個体の元まで飛び上がると、握りしめた拳を叩き込んで首の骨を折る。


 たとえ本当に錬金の力が封印されていたとしても、この程度の敵を仕留めることなど容易だと証明するように。


 それを見ていたアソシアの眼に、驚愕と恐怖感情の色が浮かんでいるのを見逃さない。


 恐らく俺がランク1に戻ったのにあり得ない活躍しているのは、どうやってか錬金の力を得たからだと思っていたのだろう。


 だからこそこのボス部屋に誘い込んでその力の要さえ封じれば、脅威ではないはずと思っていたに違いない。


 だが実際には力を封じることができなかった上に、その力を使うことなく圧倒されている。


 それも辛うじてとかではなく余裕で。


 それが示すところは俺のステータスがこいつらの予想していた数値よりも圧倒的に上であるということだ。


「おい、そろそろボスを登場させても良い頃じゃないか? でないと一方的に押されるだけだぜ」


 この調子なら周囲の魔物を殲滅するまでそう時間も掛からないし、爆裂剣などを使えばもっと早く済ませることが出来るだろう。


 それを相手も分かっているのかこの挑発を無視出来ずに、遂に切り札を使う決心を固めたようだ。


「……良いだろう。そこまで死にたいと言うのなら望み通りにしてやる!」


 その言葉と同時にこれまでとは明らかに違う魔物が召喚されようとする。


(遂にボスがきたか)


 歯ごたえのある敵と戦えるという意味でも、このダンジョンを攻略するという目的を果たすという意味でも待ち望んでいた相手であるダンジョンボス。


 B級ダンジョンのボスだからA級クラスの魔物だと思うが果たしてどうなるだろうか。


 そうして召喚されたのは三面六臂の特徴を持つオーガだった。


 今のところは立っているだけだが、それでも感じさせる力はこれまでのどの魔物よりも強いだろう。


 見たことも聞いたことのない魔物だったが、そいつを見た瞬間に俺の頭の中にとあるレシピが浮かんできたことで、その正体がおおよそ察する事ができてしまった。


「これが戦闘用ホムンクルスって奴か」

「……それが一目で分かる辺り、やはり貴様は我らの秘匿する力や知識を得ているようだな。だが甘い。こいつはこのダンジョンに出現する最強の魔物、阿修羅オーガをその身に取り込んだ戦闘型ホムンクルスだ! それによって強化された戦闘能力はA級の魔物にも引けを取らない!」


 どうやら貴重で数が限られている戦闘型ホムンクルスを投入するほど、俺はこいつらにとって厄介な存在と認定されているらしい。


 実に嬉しい限りである。


「貴様がどうやってこの部屋の封印を無効化したのかは分からなかったが、だとしても今度こそ終わりだ! この戦闘型ホムンクルスには、錬金の力を吸収する能力が付与されているのだから!」


 だから俺がどれだけ錬金アイテムで攻撃しようと無駄だとアソシアは高らかに宣言する。


(って言っているけど、さっきの二の舞になるってオチじゃねえの?)


 だから俺は爆裂剣を投擲する。


 本当に錬金アイテムが無効化されるのかを見るために。


 その結果、今度のアソシアの言葉は本当だったことが証明された。


 投擲した剣がボスの肉体に接触した瞬間、爆発することもなくその身体に呑み込まれてしまったことで。


「なるほど、これは戦い方を考えないといけないな」


 少なくとも遠くから爆裂剣を投げまくっていれば勝てる相手ではなさそうだ。


(まずは錬金アイテムの吸収がどこまでの適応されるのか。そして吸収の限界があるのかなどから確かめるとしようか)

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